研究課題/領域番号 |
23K22593
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補助金の研究課題番号 |
22H01322 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西 真之 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10584120)
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研究分担者 |
近藤 忠 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (20252223)
桑原 秀治 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 助教 (50505394)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 地球・惑星内部構造 / 水循環 / マントル / 相転移カイネティクス / 中心核 / 高圧実験 / 含水鉱物 |
研究開始時の研究の概要 |
マントル対流により駆動される地球内部の大規模な水循環と、その地球ダイナミクスへの影響を議論するために必要な鉱物学的データを実験により取得する。具体的には、水のホストとなり得るマントル鉱物を高温高圧相平衡実験により探る。また、水が存在する系での鉱物と金属鉄の反応実験を行い、水循環により中心核に到達した水が地球内部構造へ与える影響を、地震学的観測結果と照らし合わせて考察する。
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研究実績の概要 |
近年、地球内部の高温高圧状態において含水化する鉱物が相次いで発見されたことから、マントル対流により駆動される地球内部の大規模な水循環と、その地球ダイナミクスへの影響が盛んに議論されている。我々の研究グループは、中心核―マントル境界の化学反応を促進する成分としてマントルに少量含まれる「水」に着目している。これまでに、高温高圧かつ水を含んだ環境下での鉱物と金属鉄間の反応実験を行い、いくつかの新たな知見を得ている。特に重要な発見として、水を含んだ環境下では、鉱物と金属鉄間の化学反応により酸化鉄に富む反応帯が生成されること確認した。この反応帯は無水環境下では形成されないことも確認しており、水成分が核とマントルの化学反応を推進することを見出した。本研究は複数の学会で発表し、国際誌へ学術論文として投稿中である。さらに、金属鉄の組成をFeSiとした実験から、上記反応による鉄ー鉱物間のSiの分配を観察した。この結果がマントルと中心核の地震学的観測結果に与える影響を数値計算を含めて考察中である。 関連実験として上記実験の出発物質用に高圧合成した含水ブリッジマナイトと無水ブリッジマナイトについて、大型放射光施設SPring8にて高温下XRD測定を行った。ブリッジマナイトの非晶質化時に高い応力が発生し、これが相変化のメカニズムに影響することが明らかとなった。この結果は隕石の相変化カイネティクスの理解に応用できる可能性があり、国際誌に出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、愛媛大学設置のマルチアンビル型装置を用い、25万気圧かつ1500Kから2500Kの温度条件下において、水を含むブリッジマナイトと金属鉄間の反応実験を行った。金属鉄の状態は高温側では固相から液相へと変化するが、いずれの場合でも反応帯の形成が確認されている。無水条件下ではこの反応帯は形成されておらず、水が反応帯形成に重要な役割を果たすことが確認された。FE-EPMAを用いた回収試料の化学組成マッピングから、反応帯形成のメカニズムを考察したところ、水成分が存在することにより金属鉄の浸透と原子の高速拡散が起こることが示唆された。本結果は国際誌に学術論文として投稿・審査中である。一方で当初の目的の一つである、水成分の拡散係数の定量化については実験が進んでいないが、上記の化学反応のメカニズムに基づき、先行研究による既知の鉱物の拡散係数から独自の計算を行っている。 上記実験は、当初想定していなかった研究へも発展した。出発物質として合成したブリッジマナイトやスティショバイトについて、水に関連する相変化反応のカイネティクスの知見を得るために高温非晶質化実験を実施したところ、非晶質化のカイネティクスが非晶質化起因の応力の発生により著しく変化することを見出した。この結果は衝撃を受けた隕石に残る高圧鉱物からその残留温度を見積もるための新たな指標となりうるとして、国際誌に発表している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、核マントル境界の化学反応を促進する成分としてマントルに少量含まれる「水」に着目しており、既に(1)高温高圧かつ水を含んだ環境下では鉱物と金属鉄間の水素と酸素の分配反応により酸化鉄に富む反応帯が生成されること確認し、国際誌へ投稿した。また、(2)下部マントル条件において水輸送を担う含水鉱物AlOOHと無水鉱物スティショバイトSiO2の部分的な固溶を実験により観察した。本年度はこれらの実験をそれぞれ発展させる。 (1)については、水を含む環境下で鉱物と Fe-Si 合金を反応させ、核―マントル間の相互作用を、より現実的な系において解明する。下部マントルの構成候補物質である含水ブリッジマナイトとFeSi 合金をペアとして張り合わせた反応実験を、マルチアンビル型装置を用いて行う。目標圧力条件は 25 GPa,2000 °Cとする。回収試料の相同定はX線回折法により行い、出現相の化学組成はEDS機能を搭載した電子顕微鏡により分析する。得られた実験結果から、鉄中のSiの移動に着目し、水が中心核とマントルに及ぼす影響を考察する。 (2)については様々な温度圧力条件下でAlOOH-SiO2系の相平衡実験を行う。焼結ダイヤモンド製アンビルを用いることで、最大50万気圧, 2000℃の条件を達成する。得られた回収試料の化学組成から、下部マントルのホスト鉱物について無水鉱物および含水鉱物の両面からの知見を得る。
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