研究課題/領域番号 |
23K22610
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補助金の研究課題番号 |
22H01339 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
沢田 健 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20333594)
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研究分担者 |
桑田 晃 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(塩釜), 主幹研究員 (40371794)
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
入野 智久 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70332476)
加藤 悠爾 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (80863406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 生物地球化学的連鎖 / バイオマーカー / 珪藻 / 海洋基礎生産 / 新第三紀 / 北太平洋 / アルケノン / 長鎖アルキルジオール |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、深海掘削および陸上調査によって得られた新第三紀堆積物から、藻類および陸上植物の分子化石(バイオマーカー)、藻類微化石、生物源オパールを分析し、新生代の北太平洋におけるグローバルな海洋-陸域間の生物地球化学的循環と生態系の連鎖(リンケージ)、環境気候システムとの関連性を解明する。海洋・陸域生態系が駆動する長時間スケールの物質循環システムの解明という観点から、海洋基礎生産と陸源有機物の海洋への輸送量の変動の体系的で定量性の高い復元を目指す。さらに、新しい古環境復元法を確立するため、新規の藻類バイオマーカーの探索とその解析法、陸上植物バイオマーカーの分子内同位体比解析法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、深海掘削および陸上調査によって得られた新第三紀堆積物から、藻類および陸上植物の分子化石(バイオマーカー)、藻類微化石、生物源シリカを分析し、新生代の北太平洋におけるグローバルな海洋ー陸域間の生物地球化学的循環と生態系の連鎖(リンケージ)、環境気候システムとの関連性を解明する。海洋・陸域生態系が駆動する長時間スケールの物質循環システムの解明という観点から、海洋基礎生産と陸源有機物の海洋への輸送量の変動の体系的で定量性の高い復元を目指す。さらに、新しい古環境復元法を確立するため、新規の藻類バイオマーカーの探索とその解析法、陸上植物バイオマーカーの分子内同位体比解析法を開発する。2022年度における主な研究成果は次のとおりである。 1. 北部北太平洋アラスカ湾掘削コア(U1417)のバイオマーカー分析を行い、珪藻、ハプト藻、渦鞭毛藻、真正眼点藻などに由来するバイオマーカーを検出し、低分解能で大まかではあるが過去1000万年間の海洋基礎生産変動を復元した。また、ハプト藻由来の長鎖アルケノンおよび真正眼点藻由来の長鎖アルキルジオールを用いた古水温計によって海洋表層水温の変動を復元した。これらの水温の変動パターンは概ねよく一致し、全体的には中新世以降の全球的な寒冷化傾向を示すことがわかった。 2. 北海道中南部の日高町などに分布する中新統荷菜層における泥質堆積岩から、陸上セクションからは極稀な長鎖アルケノンが検出されることを発見した。そのアルケノン古水温計を用いて中期~後期中新世における体系的な海洋表層水温と海洋基礎生産の変動を復元した。 3. 陸源有機物において陸上植物だけでなく菌類のような生物のバイオマーカーにも着目し、特に地衣類の生体試料を用いて、新規のバイオマーカーを検討した。その結果、ファルネンなどのテルペノイドがそのバイオマーカーになり得ることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に本科研費で紫外可視分光光度計の設置を行い、堆積物試料における生物源シリカの効率的な定量分析方法を開発・検討する予定であった。しかし、2022年度においてバイオマーカー分析を行うためのGC-MSが故障し大幅な修理が必要となり、本科研費での交付金の約6割を修理費用に負担することになった。そのため、生物源シリカの分析は開始できなかった。一方、アラスカ湾U1417掘削コアの藻類バイオマーカー分析については、研究協力した大学院学生のおかげで順調に結果が得られている。また、北海道日高町などに分布する中新統荷菜層において、陸上セクションからは極めて稀な長鎖アルケノンが検出されるという思いがけない発見があった。これも研究協力した大学院博士学生の精力的な研究のおかげである。
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今後の研究の推進方策 |
1)2023年度は、引き続きアラスカ湾U1417コアの分析を行い、さらに日本海北海道留萌沖のU1423コアの約450万年前付近の年代の試料のバイオマーカー分析を重点的に行う。また、両掘削コアの陸上植物バイオマーカーを同時に分析し、海洋藻類データと直接比較して、海洋基礎生産に対する陸源物質輸送の関連性を検討する。 2)研究分担者の桑田博士と協力し、珪藻など海生藻類の培養試料の分析を開始し、化石を探索し、新規の藻類バイオマーカーの探索とバイオマーカー古水温計の高精度化のための実験を行う。 3)研究分担者の加藤助教により、アラスカ湾U1417コアの珪藻化石層序からより詳細な年代モデルを構築する。また、珪藻化石カウントのよる定量的な珪藻堆積フラックスの見積り方法を検討する。 4)昨年度に本科研費で紫外可視分光光度計を設置する計画を見直し、共同分担者の入野准教授の協力を得て蛍光X線分析(XRF)などによる生物源シリカの分析に変更して、珪質藻類のバイオマーカーデータと比較しながら両面からの珪質藻類の海洋基礎生産変動の復元を目指す。 5)共同分担者の力石教授を中心に、植物起源化合物の陸域から海域への運搬過程で生じる変化(分解・変質など)を定量的に評価するための分子内同位体比解析法の開発を開始し、おもに植物テルぺノイドの既知標準試料を使った基礎実験を行う。
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