研究課題/領域番号 |
23K22627
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補助金の研究課題番号 |
22H01356 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高橋 宏治 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (90334630)
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研究分担者 |
古谷 佳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究センター, グループリーダー (60354255)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 3D積層造形 / 超高サイクル疲労強度 / ピーニング / 超音波疲労試験 / 圧縮残留応力 / 高強度鋼 / 超高サイクル疲労 / 残留応力 |
研究開始時の研究の概要 |
3D積層造形は革新的製造技術として注目されているが,造形時に生じる欠陥が疲労強度を著しく低下させる.高強度鋼では,内部欠陥が疲労強度に及ぼす影響が顕著となるが,3D積層造形した高強度鋼の超高サイクル疲労強度特性は未解明である.そこで本研究では,3D積層造形した高強度鋼の超高サイクル疲労強度特性を明らかにする.さらに,レーザピーニングで導入される深い圧縮残留応力の効果により表面欠陥を無害化することにより,超高サイクル領域における疲労強度を向上する技術を確立する.さらに,超高サイクル疲労強度を高精度に予測できる新たな方法を確立する.これらの成果により,3D積層造形材の長期信頼性の向上に貢献する.
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研究実績の概要 |
近年、金属製品における製造の時間短縮、軽量化などの観点から、3D積層造形技術が注目されている。しかし、3D積層造形材は、その積層過程で生成される欠陥の影響を受け、従来材よりも疲労強度が低いことが知られている。特に超高サイクル領域における疲労特性には材料内部の欠陥が影響する。しかし、3D積層造形材の超高サイクル疲労特性は未解明である。そこで、本研究では,3D積層造形した高強度鋼の超高サイクル疲労強度特性を明らかにするとともに,10^9回までの超高サイクル疲労強度を向上させる後処理工程を確立すること目的とした。これまでに以下の成果が得られた。 (1)3D積層造形後にLP施工を行い、最大で1200MPaの圧縮残留応力が導入された。圧縮残留応力の導入深さは0.2 mm程度であった。それ以降の深さでは、引張残留応力が生じた。 (2)LP施工前は表面破壊が主体であったが、LP施工後は平滑材および切欠き材ともに疲労破壊起点は内部に遷移した。平滑材では、LP施工により疲労寿命が50倍程度まで増加したが、超高サイクル域では疲労寿命の顕著な増加が見られなかった。この理由は内部の引張残留応力の影響による。切欠き材では、LP施工により超高サイクル域においても100倍程度まで疲労寿命が増加した。したがって、LP施工は応力集中部を有する部材により効果的である。 (3)破壊起点の欠陥寸法は極値分布にしたがっていた。したがって、超音波疲労試験により材料内部の欠陥寸法から、材料の信頼性評価を行うことができる。 (4)圧縮残留応力と負荷応力の和である正味応力に着目することにより、LP施工が疲労寿命に及ぼす影響を評価することができた。共同研究者の古谷が提案した疲労寿命評価式を用いて疲労寿命予測を行った結果、3D積層マルエージング鋼の疲労寿命を誤差20%の範囲で予測ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、以下の①~③の研究課題を遂行する。①3D造形材の最適な後処理工程の確立、②超高サイクル疲労強度に及ぼす後処理工程の効果の解明、③3D造形材の超高サイクル疲労強度評価法の確立 これまでは、課題①と課題②を中心に実施した。特に、4連式回転曲げ疲労試験と超音波疲労試験を併用することにより、想定以上の速さで研究成果を得ることができた。【研究実績の概要】の(1)および(2)に述べたように、LPで導入された圧縮残留応力の効果により、表面近傍におけるき裂の進展が抑制されたことで疲労寿命が増加した。しかし、一部の条件において、顕著な疲労寿命増加が生じなかった。この理由として、内部の引張残留応力により疲労き裂進展が促進されたこと、欠陥寸法が予想以上に大きかったことがあげられる。最終年度にはこれらを改善する必要があるが、見通しは立っている。 研究課題③に関して、【研究実績の概要】の(3)で述べたように、3D積層造形したマルエージング鋼の疲労寿命を高精度に予測できた。最終年度は、LP施工やHIP処理を行った場合について、疲労寿命の予測を行い、予測式の高精度化を行う。 以上のように、課題①~③を達成する目途がたったため、当初の予定通りにおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】の (2)に述べたように、多くの条件では、疲労寿命は増加したが、一部の条件において、顕著な疲労寿命増加が生じなかった。内部の引張残留応力により、内部欠陥からの疲労き裂進展が促進されたことがその原因として考えられる。そこで、本年度は、新たにHIP処理を行うことにより、内部欠陥を縮小させる。さらにLP施工の最適化を行い、内部の引張残留応力を低減させる。これらの効果により、疲労寿命の大幅な向上を図る。 さらに、HIP処理による欠陥寸法の縮小や,LPによる圧縮残留応力導入の効果を考慮して、超高サイクル疲労寿命を評価できるように疲労寿命予測式を高精度化する。
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