研究課題/領域番号 |
23K22629
|
補助金の研究課題番号 |
22H01358 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
宮下 幸雄 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (00303181)
|
研究分担者 |
栗田 勝実 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (90282871)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
|
キーワード | 金属積層造形 / インプロセス / 残留応力 / レーザーアブレーション / 疲労強度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、金属材料の積層造形で問題となっている残留応力の完全インプロセスでの低減法を開発する。積層造形プロセスでは、時間的・空間的なマイクロ・スケールで溶融・凝固が繰り返される。ナノ秒パルスレーザ照射により励起した振動を溶融・凝固部に加えることで残留応力の低減が可能であることを実証するとともに、残留応力の発生・低減メカニズムを解明する。また、残留応力低減による効果を疲労強度特性の向上として示す。
|
研究実績の概要 |
金属材料の三次元積層造形で問題となっている残留応力の完全インプロセスでの低減法を開発する。残留応力の発生・ 低減メカニズムを解明し、残留応力低減による効果を疲労強度特性の向上として示す。そのため、「1. ツインレーザビーム積層造形装置の設計・試作と金属積層造形実験」、「2. 振動付与による残留応力低減法の検討」、「 3. 振動付与した造形物の疲労強度特性評価」を行う。今年度に得られた主な結果を以下にまとめる。 1. ツインレーザビーム積層造形装置の設計・試作と金属積層造形実験;ワイヤー供給レーザーDED式金属積層造形機にナノ秒パルスレーザを取り付けるための装置の設計・試作を行った。レーザーアブレーションを発生させるためのナノ秒パルスレーザ発信器を選定し、金属積層造形機のレーザ加工ヘッドに取り付けるための光学系や装置を設計・製作した。ナノ秒パルスレーザ照射による振動の発生を確認できたため、次年度はナノ秒パルスレーザ照射による残留応力低減効果を実験により検証する。 2. 振動付与による残留応力低減法の検討;ビデオカメラにより金属積層造形中の造形物を撮影し、その画像にDICを適用することで、プロセス中のひずみ分布の変化を捉えることに成功した。カメラの位置や倍率、照明、シールド等を調整し、ひずみ測定のために適切な撮影条件・方法を明らかにした。ベースプレートの影響や積層造形物自体の体積・剛性変化などにより、ひずみ分布が変化することがわかった。次年度は異なるプロセス条件での積層造形実験とともにX線残留応力測定や有限要素解析等もあわせて行い、残留応力発生メカニズムを明らかにする。 3. 振動付与した造形物の疲労強度特性評価;疲労試験片を設計し、金属積層造形機により試作した。試験片を作製するためのプロセス条件の検討結果に基づき作製した試験片を用いて、次年度は疲労試験を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「1. ツインレーザビーム積層造形装置の設計・試作と金属積層造形実験」に関しては、レーザーアブレーションを発生するためのナノ秒パルスレーザを金属積層造形装置のレーザ加工ヘッドに取り付け、ツインビーム照射により積層造形が可能な装置を開発することができた。この装置を用いて、ナノ秒パルスレーザ照射による振動励起を実験的に確認できた。適切な振動を付与するためのパルス照射条件については引き続き検討する必要があるが、次年度以降の実験のために必要な準備を整えることができた。 「2. 振動付与による残留応力低減法の検討」に関しては、ビデオカメラにより金属積層造形中の造形物を撮影し、材料表面の凹凸をランダムパターンとして用いることで、プロセス中のひずみ分布をDICにより測定することに成功し、ひずみ分布の測定方法を確立することができた。確立した手法によるひずみ分布測定や、造形中の温度測定結果などから、ベースプレートや積層造形物自体の体積・剛性変化などが影響を及ぼしていることを明らかにできたことは、当初計画以上の成果であり、残留応力発生メカニズムの解明が期待される。 「 3. 振動付与した造形物の疲労強度特性評価」は、当初計画では3年目に行うこととなっているが、積層造形プロセス条件を検討し、疲労試験片を設計・試作することができた。上記2に示したように、積層造形材料表面の凹凸を利用したDICによるひずみ分布測定が可能となったことから、疲労試験中のひずみ分布の変化を観察することも可能となり、積層造形材料の疲労メカニズムや疲労強度特性に及ぼす残留応力の影響を解明することが期待される。 以上をまとめ、全体として「当初計画以上に進展している」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
「1. ツインレーザビーム積層造形装置の設計・試作と金属積層造形実験」に関しては、実験装置を完成させ、ナノ秒パルスレーザ照射による振動励起を実験的に確認できた。適切な振動を付与するためのパルス照射条件については引き続き検討する必要がある。今後は、パルスレーザの適切な照射条件の詳細を検討し、その結果に基づき実験を行い、ナノ秒パルスレーザ照射の有無による違いを明らかにするとともに、積層造形中のレーザ照射部の観察や造形物の温度分布測定もあわせて行い、残留応力低減法の開発を進める。 「2. 振動付与による残留応力低減法の検討」に関しては、材料表面の凹凸をランダムパターンとして利用するDICによるひずみ分布測定法の確立に成功した。すでに、温度測定結果と合わせて考察し、ベースプレートや積層造形物自体の体積・剛性変化などが影響を及ぼしていることが明らかとなっているが、引き続き、プロセス条件の影響やナノパルスレーザ照射の影響について検討し、またX線残留応力測定や有限要素応力解析などもあわせて行い、力学モデルの構築へとつなげる。 「 3. 振動付与した造形物の疲労強度特性評価」は、すでに疲労試験片の作製、疲労試験中のひずみ分布の測定が可能となったことから、疲労試験を開始し、疲労メカニズムや疲労強度特性に及ぼす残留応力の影響の解明を進める。
|