研究課題/領域番号 |
23K22648
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補助金の研究課題番号 |
22H01377 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
金子 新 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (30347273)
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研究分担者 |
河野 貴裕 東京都立大学, システムデザイン研究科, 助教 (30801790)
角田 陽 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (60224359)
武田 伊織 法政大学, 理工学部, 助手 (70792266)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | トランスファプリント / 光触媒 / 常温接合 / 接着力 / 薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
安全安心な社会システムを構築するため,様々な機器へ多種多様なセンサの搭載が進んでおり,多品種小量生産かつ低環境負荷なMEMS作製技術の開発が求められている.トランスファプリントは有力な候補技術の1つで,薄膜(蒸着・スパッタ膜,粒子膜)をスタンプで転写してナノ・マイクロスケールの構造を作製する.トランスファプリントの実用化・応用範囲拡大には形状精度と歩留まりの向上が課題だが,その主因子であるスタンプ-薄膜および薄膜-基板の接着性の制御技術が未確立である.そこで本研究では,光触媒と常温接合をトランスファプリントに応用し,薄膜の接着力減少または増加を発現させて上記課題の解決を目指す.
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研究実績の概要 |
2023年度の主な研究実績の概要は以下のとおり. (1)離型性の発現条件の解明とモデル化:主に真空蒸着/スパッタ膜を対象として,SAMを離型層とした光触媒援用トランスファプリントを実証した.SAMの分解はUVによる光切断よりも光触媒効果が優位であり,トランスファプリントにおける離型性向上に効果があることを確認した.また,離型性の発現はUVドーズ量とともに,SAM被覆率が支配的となることを明らかにした.SAM被覆率が十分でないと,光触媒膜とAu薄膜が直接接触する部分が多いため,離型性向上の効果があまり見られない.一方で,SAM成膜時間が長すぎると重合体を形成して表面を粗面化するため,適切な被覆率を実現するプロセスウィンドウが重要であることがわかった. (2)表面清浄度の影響調査:UV洗浄後の大気暴露時間によるAu薄膜の表面清浄度をFT-IRと濡れ性で評価し,かつ同清浄度が常温接合による接着力発現させたトランスファプリント(主に転写率)に及ぼす影響を調査した.Au成膜後のスタンプおよび基板を湿度の異なる密閉容器で保管し,保管時間すなわち曝露時間を変えてトランスファプリントを行った.その結果,成膜後のAu薄膜の大気暴露時間が長いほど有機物付着により表面汚染が進行し,結果として転写率は減少する.しかし,保管環境の湿度が低いほど高い転写率を維持できる暴露時間が長くでき,かつプロセスに影響のない曝露時間はウェハ接合に比べてトランスファプリントでは長くなることを明らかにした. (3)接着力変化の評価:nNオーダの吸着力が測定できる表面力測定装置を用い,UV照射にともなう光触媒効果で吸着力が低下することを定量的に評価できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね申請書の当初計画に沿って研究が進んでおり,ほぼ期待どおりの成果が得られている.物品費については昨今の価格高騰により当初予算より増額せざるを得なかったが,一方でオンライン開催の学会もまだ多かったために旅費を減額させることができ,かつ今年度から研究分担者が1名増員できたことで人件費も減額させることができた.その結果,2023年度の全体にわたって概ね研究計画に沿って運用できたことが,順調な研究進捗の背景となっている.なお,当初計画のSAM作製プロセスでは再現性が乏しくなることがわかったため,一部のプロセスを変更し,それにともなう調査内容などの一部変更したが,これらは研究全体としては軽微な計画変更である.対面式およびオンラインの学会や国際会議に参加して成果発表を行い,関連する研究者と質の高い議論ができ,研究の遂行および発展に寄与する重要な知見や助言を得ることができた.それらの討議は本研究を遂行・発展する大きな原動力になった.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度より光学分析を専門とする研究分担者に加入して本研究組織が拡充し,前年度以上に効率的かつ効果的な研究実施が可能となった.同研究分担者は引き続き2024年度も研究分担者となるため,2024年度も同等の研究成果が期待できると考えられる.研究分組織の拡大により組織マネージメントの重要性が高まったため,2023年度と同様にオンラインツールを利用した情報交換と対面式ミーティングを継続して実施し,研究組織内の連携強化を図る.また,申請者所属機関に機器共用センターが立ち上がったため,有償ではあるが申請者が保有しない測定装置などの利用が可能となった.必要に応じて同センターの機器を活用して,より効果的かつ効率的に本研究を推進できるようにする.さらに,対面式の学会や国際会議への参加数を増やし,関連分野の最先端の研究情報を収集をより拡充し,同研究情報を本研究のさらなる発展に活用する.
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