研究課題/領域番号 |
23K22650
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補助金の研究課題番号 |
22H01379 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
松浦 寛 東北学院大学, 工学部, 教授 (30612767)
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研究分担者 |
相澤 崇史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (90356329)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
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キーワード | 研削加工 / 不織布 / 二酸化炭素 / 砥石 |
研究開始時の研究の概要 |
2年度目で当初目標としていた二酸化炭素による可塑化で不織布砥石の製作と基礎的な加工実験は終了した.また,2年目に購入した大型のラップ盤に高速回転スピンドルと高速ステージを取り付ける改造が終わったことで,4インチ以上のウエハが研削できるようになった.現在,不織布を巻き取る方法と二酸化炭素加圧装置にセットする治具の設計とそれで製作する砥石の最適条件を調査している.現在の課題は,研削研磨基盤に砥石を数十個貼り付ける際に,均等な高さにすることとドレッシング方法になる.最終的にワークをSiC4インチウエハに絞り不織布にダイヤモンドとフェリシアン化カリウムの混練する技術を確立して,研削実験に臨む.
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研究実績の概要 |
本研究では,申請者が研究を行ってきた研削中の熱による砥粒再設定(Reconfiguration),研削後に加熱して砥粒再投入(Restoration),使用済み砥石の再生(Recycle)ができる機能を持つ熱可塑性樹脂砥石で脆性材料をCMPと同等の表面性状にする基盤技術を築くことを目的としている. 申請者は,これまでに石英・水晶を乾式研削で工作物の表面を鏡面にする研削条件,及び砥石再生条件を見出してきた.さらに,産総研と共同し二酸化炭素(CO2)による熱可塑性樹脂の可塑化技術を応用して砥石成型が可能であるという知見を得た.そこで本研究では,CO2による砥石成型の確立を端緒として,化学的な表面活性反応が付加した砥石を開発し,その研削研磨メカニズムの解明を目指している.また,本技術を用いて,パワー半導体ウエハを用いて熱と化学反応による効果と超平坦化を実証する予定である. 共同研究者はメルトブローン法で作成した不織布に対して,ガラス転移点近傍で時間をかけて熱処理することで結晶化度を上昇させ、結晶化度だけを変化させた原料不織布を作成、結晶化度の影響のみを考察することに成功した.二酸化炭素存在下でのヤング率を評価したところ,結晶化度0.4%の不織布に対して,結晶化度6.4%の不織布は,二酸化炭素存在下で気孔のない固体の状態でヤング率が1.55倍であり,気孔率が0.4の多孔の圧着体の時は更に差が開いて約4倍になることが分かった.このことから,二酸化炭素による可塑化は樹脂の結晶化度に大きく依存し,樹脂砥石のベースとなる圧着体の作成には,結晶化度が極めて低い繊維で構成された不織布を原料に圧着体を作成することが重要であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施した研究成果として,2023年度は大学移転に伴い2023年3月にCO2による砥石成型装置およびこれを操作するに必要となる周辺機器を新キャンパスに設置して4月に運用開始した.実験によって得られた知見としては,従来砥石より表面性状が優れていることがわかった.表面の粗さのばらつきが大きいその制御因子は部分的に砥粒密度のばらつきがあることがわかってきた.不織布表面の砥粒量のムラの制御をする課題は,不織布を粉砕して綿状にすることで解決できる道筋が見えてきた. 二酸化炭素による可塑化は樹脂の結晶化度に大きく依存し,樹脂砥石のベースとなる圧着体の作成には,結晶化度が極めて低い繊維で構成された不織布を原料に圧着体を作成することが重要であることが示された.細孔の異方性を評価したところ,樹脂密度が上昇すると上下の繊維間での結合点が増加し結果として上下のネットワークが形成されることで繊維方向の異方性が解消するため,この異方性解消は,樹脂多孔体の接着強度に関係する因子で樹脂砥石の強度にも関係することがわかってきた.また,CAPC圧着体の製造プロセスでは圧着状態で二酸化炭素の排気流路が連続孔として生成され,この割合が非常に高いという性質は,研磨液と組み合わせた際に,研磨パッドに研磨液が内部にまで浸透する可能性を示唆しており,研磨液併用の研磨パッドに有用な性質であることがわかってきた. 2022年度は基礎研究内容を砥粒加工学会で口頭発表2件・機械学会で口頭発表1件の発表を行った.この中で「結合材に不織布を用いた砥石開発と研削性能の評価」が工作機械技術振興財団 奨励賞(2022年度 第44次)を受賞した.2023年度は,砥粒加工学会で1件,精密工学会で解説論文を1件発表した.共同研究者が査読付き論文を2022年に1件,2023年に2件発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
SiC研磨専用パッドの基礎実験で金型を用いると厚みが均一にできることがわかったので金型製作を行なっている.また,不織布を粉砕して綿状にしたのちに砥粒を混ぜる方法も確立しつつある.この方法にすることで,基材である積層した不織布との接合強度が上がることも基礎実験でわかったので,実証実験を行う.この方法の副次的効果として,基材に砥粒を入れなくても良くなり砥粒の無駄がなくなったことと,成型性も向上する.さらに,3次元的に砥粒が不織布の繊維に絡まり配置されることで,研削研磨性能の向上が期待できるため,実験により実証していく.これに合わせて,研磨機を200Vの出力に変更し,スピンドルを1万回転に上昇される電源の改装を6月末までに終わらせる.スピンドルは最高3万回転まであげることができるようになっている.これにより,CMG(ケミカルメカニカルグラインディング)加工を乾式で行う実験系を7月末までに完成させ,研磨実験をおこなう. 当初計画の化学薬品含浸型砥石は9月以降に着手する予定である.これにより,従来SiC研磨は数インチで荷重50kg以上のウエイトを乗せて低速回転で研磨していたが,荷重をかけずに高速回転させて同等の加工性能を得ることができるか検証を進めていく.また,綿状にすることができたため,砥粒をダイヤモンドだけでなく,CBNおよびセリウムなども充填することができるため,試作して新しい知見を得る予定である.
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