研究課題/領域番号 |
23K22665
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補助金の研究課題番号 |
22H01394 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊地 謙次 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00553801)
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研究分担者 |
石川 拓司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20313728)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 生体流体力学 / バイオイメージング / 生体流動計測 / 生体流体工学 / 生体医工学 / バイオメカニクス / バイオエンジニアリング / ゼブラフィッシュ稚魚 / X線マイクロCT / 生体流動イメージング / 非侵襲濃度場計測 / 生理的免疫系干渉 / 線虫 / クラミドモナス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ミリ秒・マイクロメートルスケールでの生体流動および生体物質同時計測実験系構築し、ヒトにおける疾患や病態、また治療方法の向上に関連する病原菌の感染、呼吸・消化器での自浄作用、皮膚伸展時の経皮吸収の課題について、生体内での輸送現象について統合的解明を推進する各課題の流動物質の輸送過程についてin vivoマルチモーダルイメージング技術を用いて実験的に可視化を行い、得られた実験結果より物質流動の数理モデル化を行い、最終的に生体内における物質輸送理論の構築へと拡張する。
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研究実績の概要 |
本年度は、共焦点レーザー顕微鏡による高時空間生体流動および生体物質同時分解能計測手法をマイルストーンとして設定し、以下2点に重点を置き研究を予定していた。
① 超高速共焦点顕微鏡とラマン散乱顕微鏡を用いて、ヒト慢性腸疾患モデル生物の腸内における蛍光標識させた病原菌を経口マイクロインジェクションさせ腸内における時空間分布計測し、病原菌モデルの拡散について直接計測を行ってきた。本手法を用いた成果として、腸壁近傍における腸内細菌の溝構造における集積効果について、生体内計測およびマイク流体デバイスを用いた流動構造可視化と数理モデルを用いた物理化学的特性の解析を行い、BMC Biologyに投稿し、掲載された。また、モデル生物である線虫の腸における糖質吸収過程の可視化計測を実施し、腸壁の微細構造によるグルコース分子の集積を実計測し、同時に蛍光退色回復法を用いて、腸壁近傍における蛍光グルコース分子の拡散係数の計測に成功し、Biochemical and Biophysical Research Communicationsに投稿し、掲載許可を得ている。
② マイクロX線顕微鏡を用いた蚊腹部の消化管運動の経時変化計測不可視である生体内観察のためマイクロX線CTを応用し、高時空間分解能マイクロX線顕微鏡へと拡張し、ゼブラ フィッシュ成魚における流動および運動の計測を想定し、実験環境や条件の整備を行ってきた。本学青葉山新キャンパスに設置される時勢大放射光施設における研究拡張を見据え、ミリ秒・細胞スケールでの生体流動および生体物質同時計測実験系構築を大型放射光施設SPring-8における予備実験を実施し、高時間分解法によるX線ライブイメージング法の開発を進めてきた。世界初のミリ秒・マイクロメートルスケールでの生体流動および生体物質同時計測実験系構築し、不可視生体材料に特化した計測手法の開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュ稚魚の腸内のおける腸内細菌である大腸菌の遊泳のリアルタイム計測を共焦点レーザー光学系で実現し、大腸菌の運動計測を行い、腸壁の窪み形状における局在分布を計測し、またその分布形成について数理モデルを用いた解析を行った。このモデル構築は、本研究推進における基礎的な物理化学的モデルを包含し、次年度に推進する生体流動と吸収過程の数理モデル化について十分な基礎的知見が得られた。また、生体内における糖質吸収には細胞膜に分布するグルコーストランスポーターによる能動的なグルコース輸送が広く知られているが、その細胞膜近傍の腸壁特有のひだ構造におけるグルコースの捕縛現象の計測に成功し、能動輸送に必須なグルコース濃度の定常的・恒常的維持につながる傾向グルコース分子を用いたリアルタイム計測に成功している。生体流動によって助長される撹拌の定量化とともに、生体への吸収されうる分子の局所的捕縛の実計測を実施することにより、既存の生体分子の輸送・吸収現象の物理的理解に、更なる物理化学的モデルを導入する必要性を本研究より明らかにし、今後の研究遂行に有益な結果を得ている。 次年度以降に計測を予定しているマイクロX線CTによる細胞懸濁液の内部流動の可視化計測実験に成功し、国内大型放射光施設SPring-8における基礎実験を実施し、既存計測法をはるかに上回る高時空分解能の懸濁液内部の非破壊計測の可能性につながる基礎的知見を得ている。空間分解能が数10μmで、かつ時間分解能が数10ミリ秒の計測結果を得ており、次年度の実験計画の準備も順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、生体内における流動場の計測と生体内における輸送および吸収を対象とした分子のマルチモーダル計測の実現を目指し、生体内リアルタイム計測とその対象物質の輸送及び吸収に関する数理モデルを構築するための、実データ取得のための実験計測系の実現を目指している。これまでに、共焦点レーザー顕微鏡をベースとして、流れ計測手法の開発と、蛍光分子が標識されたグルコース、および生体内における腸内細菌叢の個体標識として健康たんぱく質発現のための遺伝子導入法の開発に成功してきている。今後の生体内流動計測においては、これまでに開発してきた計測実験系を活用するとともに、得られた実験結果に基づく数理解析モデルとして、輸送および吸収を基盤とする生化学的モデルを導入した生体流動・吸収過程の解析モデルを構築し、これまで未解明であった生体内における代謝・分解・吸収過程における生体流動の貢献度について定量化を行っていく。 可視光を持ちいた生体内計測手法には、不透過性が主な原因となって、内部の不可視が基本的な問題となっている。問題解決には、多光子光学系や生体透明化など数多くの実験系の開発が進めれれているが、本来計測対象となる生体生理現象への影響は未知である。X線による生体内計測は、電離放射線の被爆が懸念されるが、細胞や生体分子への極力侵襲性を低減させた計測系を実現し、これまで不可視であった不透過物質内の構造計測の計測手法へと拡張し、また流動計測および時系列計測へとつながる基礎データの収集を進めていく。
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