研究課題/領域番号 |
23K22674
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補助金の研究課題番号 |
22H01403 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 宏充 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (60317336)
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研究分担者 |
横田 理央 東京工業大学, 学術国際情報センター, 教授 (20760573)
湯井 悟志 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (70965102)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 量子乱流 / 数値流体力学 / 超流動ヘリウム / 2相乱流 / 混相流 |
研究開始時の研究の概要 |
超流動ヘリウム冷却機器や分散相である微粒子・噴霧を含む流体機器の性能向上には、分散相による流体の乱流化や分散相自体も乱流となる2相乱流現象のより厳密な解明が不可欠である。最近の超流動ヘリウムダクト流実験では、分散相に相当する粘性ゼロの量子渦と粘性をもつ常流体の2相流乱流強度が通常の20倍になるなど、工学的応用価値を秘めた全く新たな知見が報告されているが、それらの物理現象は未解明である。本研究では、超流体・常流体間の相互摩擦力を介して2相を結合する独自手法により、2相乱流のエネルギー輸送など普遍統計法則を明確にし、2相乱流を有する流体機器の革新的な混合促進機能の向上に資するものとする。
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研究実績の概要 |
本研究では、量子乱流・常流体乱流の2相乱流と通常の2相乱流は何がどう異なるのか、その際の普遍統計法則はどのようなものかを解明する。そこで、今年度の目的を、これまでの実験から得られた常流体と超流体の間の相互摩擦力のモデル係数を利用する場合と最近提案された実験結果を必要としない理論的なモデルの検証を実施することとした。本目的を達成するために、量子渦輪が収縮しながら進行する様を可視化した実験の再現を行った。実験では、量子渦輪の可視化のために重水素の固体粒子を渦輪に10個程度を付着させている。その付着粒子による相互摩擦力も加味した数値計算を実施した。 その結果、収縮する渦輪の半径の時間変化は、理論的なモデルのほうが、実験結果をよく説明することがわかった。本結果は、実験結果に寄らない自己完結型のモデルの進展という観点で、大変重要な結果である。本結果は、Nature Communicationsに掲載され、注目を集めている。 また、周期的な外力を与えた常流体の一様等方性乱流中で、量子乱流を発現させた場合、量子渦がバンドル状になり、-5/3乗を示すエネルギースペクトルが低波数で得られることがわかった。一方、熱対向流のように常流体と超流体の平均相対速度が存在する場合は、相互摩擦力による常流体への巻き付きよりも相対速度による移流効果が上回り、バンドルを形成しないことが分かった。このとき、先の-5/3乗則を示す準古典乱流に対して、-1乗則のエネルギースペクトルとなる。これはVinenによって提唱される超量子乱流状態であると考えられる。これらの違いが古典乱流と量子乱流の統計則の違いの一つであると考えられ、重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
量子渦による誘導速度を、ビオサバール則から直接計算する代わりに、高速多重極展開法(Fast Multipole Method:FMM)を利用することで、渦点数Nに対してNの二乗から一乗のオーダーの計算量となり、高密度の量子渦乱流計算が可能となったものの、壁境界条件への適用が遅れているから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、相互摩擦力のモデルとして、従来から用いられている実験結果に基づく係数を利用したモデルと最近提案された実験結果に依存しない理論的なモデルを渦輪の進展以外の状況、例えば再結合や熱対向流の状況で、どのような違いを与えるのか、それぞれのモデルの適用範囲についても検討を深める。また壁境界へのFMMの適応を検討し、壁近くでの2相乱流の振る舞いについて検討を行う。
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