研究課題/領域番号 |
23K22679
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補助金の研究課題番号 |
22H01408 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤田 修 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10183930)
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研究分担者 |
橋本 望 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70392751)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 燃焼振動 / 予混合火炎 / Parametric Instability / アンモニア / ガスタービン / アンモニア燃焼 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近年のカーボンフリーへの強い社会的要請を背景として、ガスタービン燃焼器へNH3を導入した際の燃焼振動現象の基礎過程解明に取り組む。具体的手法として、内径50mm程度の直管内に封入したNH3と空気の予混合気の火炎伝播現象を観察し、そこで生じる音響振動の増幅過程や音響振動と火炎構造の相互関係を明らかにする。その際、火炎に生じる熱音響振動現象の基本的機構である圧力カップリングと速度カップリングがそれぞれどの程度生じているかを明らかにしたうえで、NH3を燃料としたときの燃焼振動の発生限界条件の定量的な予測を試みる。さらに、その発現条件の炭化水素燃料との違いを明らかにする。
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研究実績の概要 |
NH3平面火炎の圧力変動に対する伝播速度および燃焼発光強度の応答の実験的検討:前年度構築したNH3を燃料とする実験システムを用いて、火炎伝播面に現れる火炎構造の時々刻々の変化を圧力変動と対応させて観察した。3台の高速度カメラを用いて、火炎正面からの詳細撮影、火炎側面からの全体撮影と詳細撮影を同時に行い、火炎に現れる不安定構造を3次元的に捉える実験を実施した。また、NH3火炎の燃焼振動発現の限界条件の取得については、より広範な当量比条件において実験を行った。また、圧力変動データからその増幅率と当量比や燃焼速度の関連性を明らかにした。さらにNH3火炎と炭化水素火炎の違いを議論するために、当量比条件等を対応させた条件を設定したうえで数種類の炭化水素(CH4, C3H8等)でも同様の実験を行った。この結果、火炎がParametric不安定性 が生じる際に現れるセル寸法(波数)の当量比依存性や燃焼速度依存性を明確に捉えることができたほか、NH3とCH4を比較した場合はルイスによらずNH3の方が不安定性は常に大きくなることがわかった。さらに、着火直後の火炎の変形が存在する条件での圧力変動の増幅率は火炎変形の状況により増幅率に違いが生じるが、一定の期間が経過したのちに変形が抑制され増幅率が低下する現象を確認した。 化学反応解析による化学種濃度分布と燃焼振動の関連性考察:NH3の詳細反応機構を取り込んだ平面火炎の数値解析を行うことで、燃焼の発熱反応に及ぼす圧力変動の影響を検討した。NH3火炎ではその反応性の低さと対応して活性化エネルギーが大きく、これが発熱変動の圧力変動に対する感度を高めることが示唆された。 NH3火炎の燃焼振動発現機構に関する理論検討:既存の理論に基づく不安定ダイアグラムを求め、実験で取得したセル構造の波数や不安定限界との比較を行うことでNH3火炎の不安定性に関する考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NH3を燃料とした際の燃焼振動現象の実験的観察および理論的検討のいずれについても順調に進展している。前年度構築した実験システムを用いて燃料当量比、燃焼速度、等について異なる条件のデータを幅広く取得できており、研究はほぼ計画どおりに進捗している。得られた成果については国内外の燃焼関連学会で数多く発表したほか、2024年度に開催される国際会議(国際燃焼シンポジウム)でも発表予定である。また、NH3を燃料として撮影した映像は、日本燃焼学会「美しい炎」の写真展において最優秀作品賞に選ばれたことから、2023年の1年間日本燃焼学会誌裏表紙に継続して掲載された。これらの成果は、日本燃焼学会誌(Vol.65 (2023.11), pp.211-215)に公表したほか、有力な国際ジャーナルへ2件の論文を投稿した。ただ、投稿中の論文に関してはまだ最終的な採択に至っておらず、本年は“おおむね順調に推移している”の評価区分とする。初期変形形状と不安定性の関連、反応機構と燃焼振動の関連、理論的研究については、平面火炎が形成される前あるいは平面火炎が形成された後の圧力変動の増幅率の取得、反応機構に基づく燃料種による活性化エネルギーの違いの検討、さらに、活性化エネルギーの違いから求められるゼルドビッチ数(無次元活性化エネルギー)の取得などができており順調に進展している。さらに、理論的検討においては今年度の重要な進展として火炎がParametric不安定を示す瞬間に現れるセル状構造の波数を特定することが、燃焼不安定性の支配パラメータであるマークシュタイン数(Ma)を求めるための新たな手法になりうる、という成果も得られており、次年度研究を進展させることでNH3火炎のMaを既存の文献で示されている値と比較できるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
NH3平面火炎の圧力変動に対する伝播速度および燃焼発光強度の応答の実験的検討:今後はより理論との対応に重点を置いた実験を実施する。昨年度の研究から、NH3火炎は活性化エネルギーの大きいことが不安定性を高くしていることが示唆された。この影響は、(1)反応速度の圧力依存性を高くすること、(2)同一の燃焼速度を与えるためにNH3は断熱火炎温度を大きくしなければならないこと、の2点を通して生じる。これに対応して活性化エネルギーの異なる燃料間での燃焼不安定性の比較、希釈ガスの種類を調整することによる断熱火炎温度の異なる条件の比較、等をこれまで構築した装置により実験的に検討する。また、一般的には燃焼不安定性は燃焼速度が大きくなるほど現れやすくなるが、活性化エネルギーの燃焼速度依存性によっては燃焼速度が大きくなるほど不安定性が抑制される場合のあることが理論的に示唆されている。この点に注目した実験も行う。さらに、昨年度提案された火炎のセル構造(波数)から実効的なMa数を求める試みを行うため、種々の燃焼条件でセルの波数を系統的に取得する実験を行う。これらの一連の研究のなかで、火炎の初期変形がNH3火炎の圧力変動の増幅率に及ぼす影響も継続的に観察する。 化学反応解析による化学種濃度分布と燃焼振動の関連性考察:発熱変動の圧力依存性に関する検討を継続する。とくに、燃料種、不活性ガス組成、燃焼速度、等を変えた時の総括反応に対する活性化エネルギーを系統的に取得する。 NH3火炎の燃焼振動発現機構に関する理論検討:炭化水素火炎と比較しながら、NH3火炎の1次不安定および2次不安定発現に関する限界条件の違いを理論的に示す。また、実験結果をもとに、種々の燃料の実効的Maをもとめ、既存の文献値との比較を行う。 成果の公表:これらの研究成果を、国内外の関連学会あるいは国際ジャーナル等で可能な限り公表していく。
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