研究課題/領域番号 |
23K22682
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補助金の研究課題番号 |
22H01411 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大塚 慶吾 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20823636)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 単層カーボンナノチューブ / 結晶成長 / その場観察 / 電界効果トランジスタ / イメージング分光 / 成長速度論 / 解離吸着 / 配列制御 |
研究開始時の研究の概要 |
カーボンナノチューブはシリコンに代わる次世代の半導体として期待され、その潜在能力を生かすべく、原子レベルの構造と集合体としての配列の両面から制御が進められている。応用に要求されるレベルに到達させるには、従来の試行錯誤から脱却し、構造ごとに異なる成長過程を数理モデルに落とし込むことが有効となる。本研究では、個々のナノチューブの成長過程を効率的にその場観察する技術を活用してモデルを構築し、モデルに従い実際に使えるナノチューブの合成を行うという新たな制御戦略を提案する。
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研究実績の概要 |
本研究では、電子物性や幾何構造の観点から次世代の半導体材料として期待されるカーボンナノチューブの合成制御に関して新たな戦略を提示することを目指している。特にナノチューブを構成する炭素原子の経路に着目すると、前駆体分子の熱分解、触媒微粒子への吸着と解離、触媒からの脱離、そしてナノチューブとしての析出に分けられ、これまで個別に研究がなされてきた。それらの結果としてナノチューブの核生成、定常成長、成長停止などが起こるが、本研究では、こうした様々な過程を有機的に結びつける数理モデル群の構築を目指しており、それに基づき緻密な定量的な合成制御を行う。本年度は、特に炭素原子の吸着・脱離・析出という3つの過程に分けて簡便ながら適用範囲の広いモデルを作成し、カーボンナノチューブの幾何・電子構造に応じて成長速度差が生じる理由について実験的に説明することに成功し、これについて国内外の会議で発表を行った。このようなモデルに基づくことで、半導体応用に向けたナノチューブの構造制御において真に着目すべき反応過程が浮き彫りになってくる。まずは、そのような一つの反応過程に絞って定量的理解を目的とした実験に着手し、半導体型のナノチューブと不純物となる金属型のナノチューブの間で差異を実験的に見出した。これらの定常的な成長過程に加えて、ナノチューブの成長開始・停止といった非定常的な過程についても、二酸化炭素や水のような酸化剤となるガスの導入によって制御できることも見出した。これらに並行して、超高効率な成長過程観察を可能にするための合成および分光システムの構築に向け、その設計や部品の準備、またプログラムの作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで報告されてきたカーボンナノチューブの成長速度に関するモデルをアップデートし、その成長のみならず短縮する現象まで統一的に表現するモデルを提案した。これに付随して、これまでチューブ端部の幾何構造に依存した成長速度差が生じるという報告と、成長速度は幾何構造に依存しないという相反する報告の間にある溝を埋め、両者を包含してナノチューブの成長速度を捉えることに成功した。そのように現象を説明するだけでなく、応用のための合成制御に向けて、定量的に重要度の高い反応過程を明確にすることもできたため、現在そのようなポイントに絞って重点的に観察を行っており、すでに一定の知見が得られつつある。成長開始などの非定常プロセスについても、その制御方法を明らかにすることができ、ナノチューブアレイの高密度化に対する進展が得られている。また、そうして実際に合成したナノチューブアレイを用いたデバイス作製などについても、異種原子層物質と組み合わせることで一定の研究成果が得られている。 一方、成長過程のその場観察システムについては、実際の配分額や実験備品の高騰などもあり、この点では必ずしも計画以上の進展があるとは言えないものの、その反面、これまでも実績のある独自の“合成後の成長過程復元手法”をさらに発展させることができた。それにより、従来手法では捉えることが難しかった反応過程を詳細に調べることができるようになっており、当初思い描いていた以上の進展が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
独自のカーボンナノチューブの成長過程の復元手法を発展させ、より詳細な反応過程を定量的に追えるようになったものの、現状では合成された試料に対する分光計測とそのデータ解析速度がボトルネックとなり、知見の蓄積が限定されている。今後は同位体ラベリングによるナノチューブ成長とその場イメージング分光観察による分析を同時に行うシステムの構築により注力して、本研究課題を推し進めていく。 具体的には、合成中か合成後かを問わず、カーボンナノチューブのイメージング分光計測系を組み上げていく。同時に目的に応じたフレキシブルな計測を可能にする計測プログラムや、得られたデータに特化した解析プログラムを作成して、従来手法の延長として計測および分析の効率を高める。並行して、カーボンナノチューブをその場顕微観察できる合成系を構築する。基板の加熱方式や原料ガスの熱分解などの点で、従来のシステムから抜本的に変更すべき点があるため、そういった箇所を設計し直す。このようにして、分光計測系と合成系が構築できた段階で、カーボンナノチューブの成長とその分光が同時に行えるようにシステムの併合を行う。 これに加えて、従来の成長過程観察手法に対しても新たなアイデアを随時付加していくことで、堅実に知見の蓄積を進めていく。
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