研究課題/領域番号 |
23K22698
|
補助金の研究課題番号 |
22H01427 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
能見 公博 静岡大学, 工学部, 教授 (20325319)
|
研究分担者 |
朝間 淳一 静岡大学, 工学部, 准教授 (70447522)
MOBEDI MOGHTADA 静岡大学, 工学部, 教授 (80754986)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
|
キーワード | 宇宙テザー / リール機構 / モーター駆動制御 / 宇宙機器熱解析 / モータ駆動制御 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙テザー(ケーブル)は幅広い利用が期待されているが,デブリ発生防止の観点からテザーの他宇宙機への衝突が危惧されている.そこで,リールを用いたテザーの伸展回収により,衝突を回避することを考えた.ここで,軌道上外力は非常に小さいため,高精度な制御が求められる.本研究では,打ち上げに耐え,微小重力・熱真空環境で高精度な制御が可能なリール機構を開発する.さらに,地球方向に重力が勾配することで安定するテザーを,軌道運動およびコリオリ力を敢えて利用したテザー伸展回収により,テザー伸展方向を自在に操ることで,他宇宙機との衝突を回避する手法を確立する.
|
研究実績の概要 |
本年度は,初年度に試作したリール機構を用いて,宇宙環境に耐えうること,かつ微小重力環境において高精度制御できることを評価検証,高精度制御を実現するモータ機構および制御法の構築,熱真空環境における性能評価を実施した.試作したリール機構は,高精度制御を可能とすること,打ち上げ振動・衝撃に耐えること,微小重力環境において柔軟なテザーを高精度に制御できること,熱真空環境において回転体であるリールを安定して駆動させることを考慮した設計としている. まず,宇宙航空開発研究機構の空気浮上装置を用いて,テザーの伸展および回収実験を行った.伸展はテザー先端機に初速度を与えると同時にリールを回転駆動させ,テザーの伸展に追従させる方式である.とくに初速度の与え方によるバラツキを踏まえたリール駆動手法を評価した.またリール機構はテザー伸展に伴いリールの直径が変化することを踏まえ,リール系による伸展挙動への影響を評価した.また回収実験も実施,巻取開始からテザーのたわみを抑えてリール回転駆動する制御手法を評価した. 次にレベルワインダー(リールと離れた場所でテザーをガイドし,左右に動かすことで,リールに巻き付くテザーを平滑化する)による巻取実験を実施,レベルワインダーを用いない場合との差異を確認した.さらに張力検知機構の張力測定性能を評価するとともに,テザーがたわんだ時のリール制御手法が機能することを確認した. そして,熱真空試験を実施,温度により回転性能(とくに摩擦の影響)が変化することを確認,熱環境での挙動評価を行った.また打ち上げ振動・衝撃によるバラツキも考慮し,回転性能のバラツキを低減する構造設計と検討するとともに,バラツキを吸収して高精度に伸展回収制御できる手法を検討,構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は,数km~数百kmのテザーを,軌道上外力(数g@1km程度~数百g@100km程度)を利用して制御することを目的とし,「地上では想定されない極限環境(微小重力・熱真空環境)で使用できるテザー伸展回収機構は?」に応える装置を開発することである.さらに,従来の宇宙テザーの研究では,地球方向に重力が勾配することを利用した安定化に焦点があてられているが,軌道運動およびコリオリ力を敢えて利用した伸展回収により,「宇宙空間で自由にテザー伸展方向を操作することは可能か?」について挑戦する. 本年度の計画は,初年度に試作したリール機構を用いて,宇宙環境に耐えうること,かつ微小重力環境において高精度制御できることを評価検証,高精度制御を実現するモータ機構および制御法の構築,熱真空環境における性能評価を実施することを計画していた. まず,微小重力環境でのリール機構制御に関しては空気浮上装置を用いて実施,平面かつ広さの制約はあるが,全体シーケンスを分割した要素実験により性能評価を行うことができた.また制御手法をソフトウエアに実装した評価検証を行うことで,ソフト的な制御高精度化を達成できた.さらにハードウエアとして初年度に製作したレベルワインダーおよび張力検知機構の性能を評価,リール機構によるテザーの伸展回収に有効に利用できることを確認した.さらに,熱真空試験による温度により回転性能(とくに摩擦の影響)評価を行い,軌道上温度変化に耐えられることを確認した.また打ち上げ振動・衝撃による影響も確認した.その上で,これらの影響による性能変化に対応できる高精度伸展回収制御手法を構築し,実験的に評価検証を行い,要求を満足できることを確認した.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究全体計画では、高精度制御が可能なリール機構の開発を目的とし、実験的に評価検証していくこととしている。初年度は、リール機構試作を行った.高精度制御を可能とするリール機構を目的とし、打ち上げ振動・衝撃に耐えること、微小重力環境において柔軟なテザーを高精度に制御できること、熱真空環境において回転体であるリールを安定して駆動させること、を考慮して試作した.二年目は,初年度に試作したリール機構を用いて,宇宙環境に耐えうること,かつ微小重力環境において高精度制御できることを評価検証,高精度制御を実現するモータ機構および制御法の構築,熱真空環境における性能評価を実施した. 最終年度となる令和6年度は,本研究で開発したリール機構について,シミュレーションおよび実験結果を含めて対外発表をしていき,とくに当該分野の専門家の指摘評価を収集する.自己評価を含めて,次の主要な観点から評価を整理する.①打ち上げ振動・衝撃および宇宙環境への耐性,微小重力環境における柔軟なテザーの高精度制御(能見主担当),②モータ駆動によるドラム式リールの高精度回転制御(朝間主担当),③熱真空環境における回転体であるリールの安定駆動(モベディ主担当)である.各項目単独の課題が出てきた場合には各主担当者主導で,複合的な課題が出てきた場合は研究チームで,理論解析およびシミュレーション,また必要に応じて追加実験および新規実験を策定し実施していく.
|