研究課題/領域番号 |
23K22726
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補助金の研究課題番号 |
22H01455 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
五十嵐 洋 東京電機大学, 工学部, 教授 (20408652)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 人間機械系 / 機械学習 / 技術伝承 / 技能伝承 / 人間モデル / 相互作用 / 相互作用オブザーバ / 教示者支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の新規性の一つは,技能教示者のスキルに着目し,そのアシストを目指す点にある。この実現のために,教示者・学習者間の力覚による相互作用を伴う技能伝承実験システムの構築が必要となる。さらに適切な教示を明らかにするために,機械学習を応用した教示者・学習者の操作入力予測モデルを構築する。実験前の個人特性を人間モデル化し,教示作業中の操作入力量との差に注目することで,技能伝承に有効な教示特性を解析する。さらに,3名以上の協力タスクに発展させることで,多人数を対象とした教示者支援手法を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は,学習者-教示者間の相互作用モデルによる技能伝承支援システムの実現を目指している。この技能伝承支援において,教示者のスキルをどのように定量化・促進するかが重要となる。しかし,これまで教示者の技能に関する一般的なモデルは存在していなかった。本研究の新規性のひとつは教示者を教え上手にするという新しい視点にある。 本年度は,特に教示者の教示技能の抽出を目指した。そのため,実験対象として利用可能な学習者モデルの構築を行った。提案した学習者モデルは,リアルタイム学習型のニューラルネットワークにより構成し,教示者の操作力に応じてその操作特性を逐次的に学習を行う。つまり,教示者からの支援量に応じて操作特性の修正(技能学習)を行うことが可能となる。また,学習者モデルの機械学習パラメータを変化させることにより学習者モデルの熟達進度(物覚えの良さ)を表現することを可能とした。これについては,国際会議SAMCON2024にて発表を行った。この学習者モデルに対して,複数の実験協力者を教示者と見立てた実験を行うことで,技能伝承の鍵となる教示者のサポート操作要素の抽出を行うこと期待できる。 また,学習者視点の研究として,ヒトの主体感に着目した機械操作モデルの実験検証を行った。個の実験では,サポートのないフラットな状態のヒトの操作モデルをあらかじめニューラルネットワークにより学習する。その後,外部からの操作補正要因を含めた場合の操作量とフラットな状態の操作量予測の差から,ヒトの主体感に対する影響度合いを定量化した。本成果は,国内学会で2件の発表を行っている。この知見は,今後の技能伝承システムにおける,教示者から学習者へサポート操作量の伝達補正要因として導入することが期待できる。 最終年度では,教示者特性の抽出および学習者の主体感を考慮したアシスト系の構築・評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,技能伝承システムの支援手法の確立を目指している。従来の技能伝承システムの多くは,リーダ・フォロワ型として教示者・学習者の操作系をそれぞれ制御することで,相互の力覚情報を共有するアプローチをとっていた。しかし,このアプローチには以下2点の課題がある。(1)教示者の教示スキルに関する定量的な議論が不十分であり,教え上手になるための要素が不明確である,(2)学習者は教示者からのサポート力に対する応答には個人差があり,さらに主導権を奪われる可能性がある。 まず,教示スキル要因の抽出に対しては,人工的な学習者モデルを構築し,新しい教示プラットフォームを実装した。ここで,実験協力者を教示者と見立て,複数の実験協力者に学習者モデルに対して作業教示を行うよう指示する。ここで学習者モデルは,リアルタイム学習機能を有するニューラルネットワークにより構成し,追従タスクに対する力次元の操作入力量を予測する系としている。この学習者モデルにおいて,バックプロパゲーション学習を行う際,教示者(実験協力者)からのサポート操作入力量を加えて学習を行う。すなわち,この学習者モデルは教示者からのサポートを含有した形で学習が進むため,いわゆる教示者が学習者を育てる実験環境といえる。現在,この実験プラットフォームの実装に向けたチューニングの段階である。 また,学習者の視点の研究として自己主体感が操作特性に与える影響を評価した。自己主体感は,アシストのない単独マニュアル作業における操作入力パターンを事前に機械学習でモデル化しておき,外的要因を加えた際に単独と比較してどの程度変化したかにより定量化を行った。これにより,自己主体感をリアルタイムに推定することができる。今後,人間を学習者とした技能伝承実験において,学習者の主体感を維持しながらの教示サポートとなるよう伝達調整の実装が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策として,まず構築した学習者モデルに対する教示評価実験プラットフォームを用いて,教え上手の要因を特定する。ここで,複数の実験協力者を教示者とみなして,異なる学習特性を持つ学習者モデルに対する教示実験を行う。この学習者モデルは機械学習パラメータ設定により,物覚えの良さに相当する学習効率を任意に設定できる。このとき,教示者のどのようなサポート入力が学習者モデルを短期間にパフォーマンス向上をできるかを解析する。 このように被験者に教示の役割を与えた実験は世界的に例がなく,定量的に教示特性を評価できる本システムの優位性は高いと言える。 そして,技能伝承支援においては,特定した要因を強化することで学習者の熟達効率を向上させるアシストを実現する。ここでは,特に学習者モデルと教示者入力の差に注目した相互作用に注目し,教示パフォーマンスとの相関解析を行う。 次に,学習者を人間として,上述のアシストを適用することで熟達効果を測定する。その際,リアルタイム推定が可能となった学習者の自己主体感に注意を払いながら,必要に応じてサポート量を適応的に調整するアルゴリズムを実装する。また,人間学習者の個人差や熟達過程に伴う操作特性の変化への適応化について実験的に検証を行う。
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