研究課題/領域番号 |
23K22728
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補助金の研究課題番号 |
22H01457 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
槇田 諭 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (60580868)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | ロボットマニピュレーション / 把持 / 力学解析 / 物体操作 / 動作計画 / ケージング |
研究開始時の研究の概要 |
人間が物を持つときには不意の落下に備えて手を添えるような動作をする.これは対象物と接触して持つ手と,対象物の落下を幾何学的に防止する添え手とを組み合わせた物体操作といえる.ロボットによる物体操作ではこれまで,ロボットが対象物を掴んで接触力を与えて拘束する手法か,ロボット指などでゆるく閉じ込めて抜け出せないようにする手法のいずれかがなされてきた.本研究課題ではこの評価指標の異なる2つの方策を組み合わせることができるように,「ロボットによる物体操作において,その対象物の運動を拘束するときの力学的な作用と幾何学的な作用の両方を等しく統一的に取り扱うことのできる指標の導出」をめざす.
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研究実績の概要 |
本研究課題では,人間が手で持った物体を搬送する際に,手を滑らせるなどの不意の落下に備えて添え手を置くような行動をロボットマニピュレーションで実装することを目指している.ここでは対象物が拘束状態から運動するために要するエネルギーを,対象物の拘束状態を評価する指標とする. 本年度は前年度までに取り組んだ,二次元平面の物体を挟み込み把持する場面で重力の働く方向,すなわち対象物が運動しやすい方向に幾何学的拘束として添え手を置く場合の解析を中心に手法を精査した.ある拘束状態にある対象物の力・モーメントのつり合いを破綻させる外力・外モーメントが働くとして,それによって対象物が変位すると,対象物は変位に要する仕事と等価なポテンシャルエネルギーを得ることとなる.このとき,対象物が最も運動しやすい方向に限定して解析することで,計算の効率化を図っている. ここで,対象物が最も運動しやすい方向はその把持状態によって異なり,また,複数の方向に対して同値の評価結果となることも少なくない.この点について,対象物が外力によって変位する過程の各局面で運動しやすい方向を検証した.結果として,対象物が運動する可能性のある方向は複数考えられるが限定的であるので,可能性の高いものについては上述の解析を行う方針を現時点で定めている. また,上述の例における添え手の配置場所によって,幾何学的拘束の効果が変化することについても検討した.これは,対象物の至近に添え手を置くほうが,落下時の対処として適当なのではとの指摘を受けたことによる検討である.本年度の検討により,提案手法であるポテンシャルエネルギーの解析に基づいて,幾何学的拘束に寄与する障害物の配置場所による効果を評価する手法を導くことができた.本研究成果についてはあらためて学術論文等で発表する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題の遂行により,当初の研究目的に定めていた「対象物の力学的拘束と幾何学的拘束を等価に評価する指標の導出」について,対象物の運動に要するエネルギーを基にする手法を提案できた.本研究成果は国内学会の発表を経て,学術誌のレター論文として採録が決定している.また,本発表に関連する議論,指摘を受けて,理論の精緻化を進めており,国際学会および国際誌への論文投稿を目指す.特に本年度に得られた追加の成果については早急にまとめて論文化し,国内外の研究者による評価・議論を受けるべきである.提案する評価指標の妥当性,理論的な整合性についてはいまだ議論の余地がある.成果発表を通じてより多くの議論を重ね,理論体系の確立,また関連分野の研究者への理解を求める必要がある. 本評価指標に基づく動作計画手法の確立,およびそれに基づく実機実験については継続して研究課題を遂行する.本年度の研究実施により実験環境の整備は進み,人為的に教示した動作による検証実験は実施可能な状態である.提案する評価指標の妥当性を検証することと平行して,ロボットの動作計画手法の確立を進める. なお先行する予備実験において,対象物の幾何学的拘束を陽に考慮して,単一のロボットアームによって複数の物体を同時に取り扱う手法を検証できた.この複雑な問題に対して解析計算を通じて理論的な説明を付与することは,本研究課題の発展的な研究になりうるものであり,継続して取り組む必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度として,これまでの研究成果をまとめるとともに,課題期間終了後の継続的な研究の発展も見据えて研究課題を遂行する. 本年度までの成果を受けて,本研究課題で取り組む「ロボットの物体操作の安定性評価指標」については,その理論体系の骨子が固まりつつある.いくつかの検討事項について議論,検証を重ねることで,理論の精緻化を進めることができる.また,三次元空間の問題設定については実機実験を踏まえて,より具体的な条件設定における解析を実施する.特に,接触点数が増大すると計算コストが膨大になることが先行研究からも予想できるので,その対応は必須である. 実機実験については,すでに数値解析の結果が出ている二次元平面の問題設定と同等のセッティングを構築し,解析結果の妥当性を検証する.上述の三次元空間の問題設定についても同様に,数値解析に基づく理論的な裏付けと実機実験による手法の有用性の検証は並行して実施する.特に,力覚センサと測距センサを併用するロボットハンドを構築し,本研究課題の主題である「(非接触な)幾何拘束と力学拘束を併用する」ロボットマニピュレーションの実現を目指す. 物体操作の安定性の評価指標に基づく物体操作計画については,評価値を増大させるいくつかの方策をヒューリスティックに設定し,それらを選択して物体操作を計画する方針を検討する.例えば,ある把持状態において力学解析から最も運動しやすい方向を算出すれば,その方向の運動に要するエネルギーを増大させる方策として,余剰指を障害物として配置することなどができる.このような方策は数多く検討できるので,行動を最適化することは難しいが,人間のような経験に基づく方策の選択とみなすこともできる.
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