研究課題/領域番号 |
23K22729
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補助金の研究課題番号 |
22H01458 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 摂南大学 (2024) 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) (2022-2023) |
研究代表者 |
洞出 光洋 摂南大学, 理工学部, 准教授 (30583116)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
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キーワード | MEMS / マイクロマニピュレーション / 微小力センサ / 細胞挙動解析 / 画像解析 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞への負荷印可と細胞の成長の関連性に着目している.負荷印可の最適化により,細胞培養技術の高度化にもつながると期待できる.本研究では,細胞に負荷をかけるとなぜ大きく成長するのか,それをメカトロニクスの手法で明らかにしたい.具体的には細胞の精密操作方法,負荷を与えるシステム開発技術,評価をするための画像解析手法,これらを効率よく実施し確立していく.最終的に細胞の成長する過程を計測し,医療・バイオに役立つ細胞挙動の考察を,工学研究者ならではの視点で行っていく.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,圧力印可中の細胞が大きく成長している現象に着目し,細胞成長メカニズムがなぜ起こるのか,マイクロロボティクス(ハード)と顕微鏡画像解析(ソフト)を駆使し,ミクロとマクロの両方のレベルで解明することである. これまでのバイオ研究者ベースの解析手法としては,遺伝子解析等が確立された評価方法の1つとして実施されてきた.しかし細胞の集団に対する評価を行う手法であることが特徴として挙げられる.一方で細胞個々によって大きさを含めてばらつきがあることが知られており,これまでの研究から硬さや成長のタイミング・過程も細胞によって異なることが確認できた.また遺伝子解析や一般的な蛍光観察では途中の過程を評価するのではなく変化前後のみの結果を示すため,途中の経時変化をとらえることができない.そこで本研究では経時変化に対する評価や空間的な解析を得意とするメカトロニクスならではのアプローチで,細胞の挙動変化を細胞個々のレベルで実施することとした. 具体的な手法として,細胞の精密操作が得意なマイクロマニピュレーションと,高い分解能を有する時空間解析が得意なビジョンを駆使し,細胞への負荷印可とその応答を計測するシステムを構築していく.そして細胞観察や評価が行いやすい実験系を設計・実装していくこととした. ①細胞の精密操作および配置のための基盤技術の確立,また②細胞への加圧システムの構築,そして③細胞特性を評価するための観察・評価技術の確立,これらの項目を効率よく実施していく.初年度においては①細胞の精密操作および配置のための基盤技術の確立において特に進展がみられた.一方で課題として②細胞への加圧システムの構築において改善が必要であることも確認された.2年目においては②細胞への加圧システムの構築と③細胞特性を評価するための観察・評価技術の確立を中心に実施することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においては,細胞マニピュレーションに関する研究を主に実施した.さらに実際に細胞に加圧するための装置実装まで完了することができた.しかし,最大圧力が150kPaまでしか実現できないことが課題として確認された.また,加圧中の細胞環境,特に温度を維持する必要が確認できた.まずこれらの課題に関して当該年度においては無事に解決することができた. 最大圧力が150kPaまでしか実現できない問題に関しては,加圧周期が長いという特徴により生じていることが確認できた.細胞への圧力印可は,心臓の鼓動や呼吸に合わせた周期で実施する報告が多い.一方で本研究の特徴として,周期が非常に長いこと,そして長い周期による細胞成長への優れた影響に着目していることが挙げられる.したがって,長い周期は維持したいと考えた.そこで長時間の加圧が可能になるよう空気貯槽容量を増加させる装置改良を行い,最終的に0.002HZでも最大圧力が200kPaまで実現できるようにすることができた. また顕微鏡下で培養温度である37℃を維持できるフィードバック制御による恒温設備を顕微鏡ステージに集積させる改良を行った.ただし倒立型顕微鏡による観察できるよう必要な光量は維持できるようにし,温度維持以外は既存のシステムが使用できるようにした. 細胞特性を評価するための観察・評価技術の確立に関しては初年度から取り組み,当初計画していた静水圧式とは別に,新たにマイクロ流路を利用した物理的な負荷印可システムを構築した.当該年度にはさらに追加実験を行うことで,細胞の硬さと円形度(変形することで低下する)の相関性を算出するなどの,評価を行った.変形のしやすさと細胞の大きさには相関性がないこと等,当初の予想とは異なる挙動が確認することができた.ただし,細胞培養自体が非常に難しく,細胞内部の観察までは実施できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
初年度においては,細胞マニピュレーション技術だけでなく,細胞への加圧システムの構築や,実際に細胞培養を行うこと,さらにビジョンを用いた細胞挙動観察を行うことができた.当該年度においては,加圧システムの改良,培養温度の維持,初年度に課題とされた問題解決に着手し,無事に解決することができた.さらに複数回にわたる再現実験を行うことができた.また細胞形状に着目した評価も行い,細胞挙動の傾向をつかむことができた.現在最も注目している事項として,細胞内部の変化が挙げられる.なぜ細胞が大きく成長するのか,細胞内部の細胞骨格と細胞全体の成長との相関性を明らかにしたい. 既に細胞骨格を評価する手法確立の準備を進めており,細胞内部への蛍光試薬導入方法の検討,また細胞内部の動的変化をモーションブラーなく撮影するための最適撮影条件の導出,具体的には分解能(サイズ,時間)の限界を調査した.10msecオーダであれば問題なく撮影できることが確認できたため,これまでに先行研究で実施していた1桁secオーダと比較して100倍の時間分解能で撮影できるようになった.また細胞培養がうまくいかない問題に直面したが,培養液の配合等を変更することで解決できることも確認できた. 初年度中に新たに考案したマイクロ流体デバイスを用いる加圧に関しても,撮影が行いやすいような低速マニピュレーションや,流路内で細胞移動速度を0μm/secで停止するポンプシステムも同時に構築していく.当初予定している平滑筋細胞ではないが,ポリスチレン製粒子や他の細胞種での予備実験では,問題なく操作が実施できることを確認した.細胞内部の細胞骨格の時間変化を読み解くための必要最低限の準備,および予備実験から実験自体が可能であることが確認できた.今後細胞を用いた実験を行っていき,骨格形状の変化傾向に着目した解析を行っていく.
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