研究課題/領域番号 |
23K22744
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補助金の研究課題番号 |
22H01473 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
尾崎 良太郎 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90535361)
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研究分担者 |
門脇 一則 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (60291506)
飯野 裕明 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (50432000)
渡辺 豪 北里大学, 未来工学部, 教授 (80547076)
大野 玲 新居浜工業高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (70397058)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | 絶縁材料 / 空間電荷 / 移動度 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、超高圧直流送電において重要な役割を果たす架橋ポリエチレンや高分子ナノコンポジットの電荷輸送特性を解析・評価可能な計算理論の確立を目指す。現状では、分子軌道法による分子の電子状態に関する解析などが中心であり、ケーブルなどの実際の機器の解析までには進んでいない。これらを解決するため、ミクロスケールな分子シミュレーションによって輸送特性を調べ、それらをマクロスケールな支配方程式を連成させたシミュレーションを開発する。本計算理論が確立すれば、ナノコンポジット絶縁材料の開発や絶縁材料研究の学術的進歩に貢献できる。
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研究実績の概要 |
本研究は、ナノコンポジット絶縁材料の特性を、近年発展が目覚ましい有機半導体の知見と技術を使って解析することが目的である。2022年度は、低密度ポリエチレン(LDPE)にフィラーを入れた場合のマクロスケールのシミュレーションを構築するために、酸化鉄(III)(Fe2O3)フィラーを添加したLDPEを用いて実験を行い、データを収集した。フィラー添加による物性値の変化を調べるために、無添加のLDPEを基準として、0.05%から0.25%のフィラー濃度を上げたサンプルを用意して、高電圧印加時の電流値と試料内部の空間電荷を測定した。Fe2O3フィラーの濃度が上昇すると空間電荷の蓄積が抑制され、電流値は上昇した。これらの変化をシミュレーションで再現するために、各条件でのパラメーターの移り変わりを調べた。しかしながら、電流を上昇させるパラメーターは複数あるため、複数の可能性が残る結果となっている。これらを解決するために、2023年度は別のフィラーでも実験を行い、どのパラメーターが最も効いているかを調査する。また更に、現象論的なマクロスケールなシミュレーションだけではなく、電子の輸送を考えたモンテカルロシミュレーションも行った。今年度は、Miller-Abraham型のホッピングレートに基づくモンテカルロシミュレーションを開発し、フィラーが入っていないLDPEの高電界下での絶縁材料の移動度を検討した。シミュレーションは、高電界領域において移動度が下がる傾向を示したが、実験結果の方がより移動度が小さくなるため、現在の仮定しているシミュレーション条件だけでは十分ではなく、絶縁材料により適したモデルを構築する必要がある。上記の空間電荷シミュレーションとは別に、圧力波を用いた空間電荷計測の精度向上のために、圧力波の伝搬シミュレーションも開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は、当初計画していた通り、フィラーの濃度を変えたサンプルでの空間電荷および電流測定は実施できている。マクロスケールなシミュレーションは、フィラーを添加していない場合は、比較的簡単に実験を再現できたが、フィラーが入った場合は、実験結果はより複雑な挙動を示すため、フィッティングが難しくなっている。特に、実験結果を再現するために、複数のパラメーターを増やす必要が出てきており、フィラーなしのシミュレーションより、難易度が格段に上がってきている。ミクロスケールなシミュレーションについては、モンテカルロシミュレーションと電荷輸送の物理を基礎から学ぶことでプログラムを開発した。まだ、実験結果に直接的に繋がる結果は得られていないものの、基本的なシミュレーションのフレームワークは構築できたので、今後は、より適切な物理モデルを模索しながら研究を進展させる。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進んでいる。今後も、実験では、様々な種類と濃度のフィラーを添加した試料を作成して、空間電荷分布と電流を調べる。シミュレーションについては、マクロスケールとミクロスケールの二つの異なるシミュレーションを作成している。マクロスケールなシミュレーションでは、パラメーターを増やすなどして、より精度良く実験結果を再現することを目指す。一方、ミクロスケールのシミュレーションは、より複雑な物理を扱うため、文献などを良く調査しながら開発を進めていく。
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