研究課題/領域番号 |
23K22751
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補助金の研究課題番号 |
22H01480 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
塩田 茂雄 千葉大学, 大学院情報学研究院, 教授 (70334167)
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研究分担者 |
関屋 大雄 千葉大学, 大学院情報学研究院, 教授 (20334203)
高橋 応明 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (70267342)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | センサ / 無線電力伝送 / 無線パワープロセッシング / 位置情報非依存型空間認識 / デジタルツイン / Society5.0 / 空間認識 |
研究開始時の研究の概要 |
微量なエネルギーで動作するセンサを屋内外に設置して必要最小限のデータを収集し,情報処理技術を駆使して十分な解像度で現実空間を認識するスマート社会基盤の実現に向け,(1)広域設置された小型センサ群への電力供給方法,(2)位置情報のないセンサデータに基づく現実空間認識手法に取り組む.前者に関しては,電力を運ぶ無線パルスに宛先情報を重畳してマルチホップ伝送し,任意エリアのセンサ群に指定量の電力を供給する新技術(無線パワープロセッシング)を開拓する.後者については,各センサが収集するデータの類似度からセンサの相対的位置関係を推定して,現実空間の認識に活用する技術(位置情報非依存空間認識)を確立する.
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研究実績の概要 |
■無線パワープロセッシング(マイクロ波送電方式) マイクロ波送電装置として,人体が存在する空間でも使用可能である920MHzを用いて,主に送電装置の検討を行った.室内の天井照明を送電装置に置き換え,周方向に複数の送電ゾーンを設定し,1つのゾーンの送電ビームの角度を限定することにより,送電電力強度を強めて受信電力を確保することとし,シングルボードコンピュータを用いてプログラムにより電子スイッチで4つの送電ビームを切替える装置を製作した.また,受信装置はダイオードを4つ並列に使用することで整流効率の向上を図り,ほぼ設計通りの動作を確認した. ■無線パワープロセッシング(磁気共鳴方式) バッテリー充電向け磁界共鳴型双方向ワイヤレス給電システムのプロトタイプを開発することを目的とし,そのための要素技術として負荷非依存E級整流器,電流一定/電圧一定切り替え機構を検討した.負荷非依存E級整流回路ではMHzオーダの同期整流器技術として,同期と出力電圧レギュレーションの等価性を見出し.その設計理論を確立した.さらに,一つのスイッチ素子でインピーダンス特性を変換することで電流一定/電圧一定の切り替えることを提案し,システム解析によりその動作特性および設計手法を確立した. ■位置情報非依存空間認識 センサの収集するデータの類似度等から,センサの相対位置関係を推測して,センサの位置推定を行う手法を検討した.特に,センサデータに多次元尺度構成法を適用してセンサを2次元平面上の点として配置し,アンカーセンサの情報を介して位置を推定する手法(手法1),およびデータの類似度がしきい値を超えるセンサ同士を辺で結んだ無向グラフを構築して,アンカーセンサの情報を介して位置を推定する手法(手法2)の性能を比較した. その結果,手法2の性能が手法1を若干上回るものの,両者の差は小さいことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
■無線パワープロセッシング 送電装置,受電装置の基本設計はほぼ完了したが,まだ送電効率の向上を図る必要がある.また,マイクロ波送電方式は,送電距離が長くなる,もしくは送電装置と受電装置が見通せなくなると送電できなくなる.そのため,送電距離の延長や影領域への送電を行うには,中継装置が必要となる.この中継装置を無電力で駆動するための基本設計を行なった.送電装置からの電力を蓄電し,その電力を用いて電力と信号を間欠的に受信装置への中継を行う.今後,昇圧回路や蓄電回路などの部品選定などを行い,送電領域の拡大を検討する予定である. ■位置情報非依存空間認識 センサが収集するデータの特徴から,センサの相対位置関係を推定する「データ類似度に基づく位置推定手法」は,センサが収集データの類似度とセンサ間の物理的距離との間に明確な相関関係が存在するか否かに大きく依存する.明確な相関関係が存在する場合は,データ類似度に基づく位置推定手法は非常に有効であり,高い推定精度を示す.一方,必ずしも明確な相関関係が見いだせない場合は,推定精度は大きく劣化する危険性のあることも,実機実験等を通して確認している.このため,今後は位置推定手法に適したセンサデータを見出すための検討も併せて実施していく.
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今後の研究の推進方策 |
■無線パワープロセッシング ・マイクロ波方式:現状のマイクロ波方式の中継機では回路内部で電力の昇圧動作を行っていることから,電流値が非常に小さくなり,その結果,コンデンサへの充電時間が長くなる問題がある.回路側ではこの問題の抜本的な解決が難しいため,受信アンテナや送信アンテナを工夫し,伝送効率を高めて問題解決を図ることを検討する.複数のアンテナに向けた送信アンテナ設計は実施済みであるので,特に,中継機間の伝送においてビームフォーミングの技術を用いて指向性を絞り,利得を高めることを狙う. ・磁気共鳴方式:バッテリー充電向け磁界共鳴型双方向ワイヤレス給電システムのプロトタイプを開発する.そのための要素技術として:(1)負荷非依存E級整流器,E/F級整流器の実装,(2)電流一定/電圧一定切り替え機構の搭載を検討する.(1)については,MHzオーダの同期整流器技術がキーテクノロジとなり,電流/電圧センシング機構とディジタル信号処理でその壁を突破する.(2)については,インピーダンス変換を一つのスイッチ素子で実現することを目標とし,整流器が純抵抗動作から純コンダクタンス動作へ切り替えるための回路理論を構築する. ■位置情報非依存空間認識 収集データの類似度に基づくセンサ位置推定手法について引き続き検討する.特に,データの類似度に基づいて各センサーペアを「類似度高」,「類似度低」のいずれかに分類し,「類似度高」と分類されたセンサペアを「辺」で結んだ無向グラフを構築して,アンカーセンサの情報を介して位置手法を行う手法に焦点を絞り,データの類似度とセンサ間の物理的距離との間の相関が大きくない場合であっても,類似度高と判定されるセンサペアの割合を調整することにより,一定の位置推定精度を保つ手法について検討する.
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