研究課題/領域番号 |
23K22759
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補助金の研究課題番号 |
22H01489 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤本 孝文 長崎大学, 総合生産科学研究科(工学系), 准教授 (40264204)
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研究分担者 |
GUAN ChaiEu 長崎大学, 総合生産科学研究科(工学系), 助教 (10824584)
田中 俊幸 長崎大学, 総合生産科学研究科(工学系), 教授 (50202172)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 非回折波 / 5G / 電波吸収体 / 誘電体レンズ / アンテナ / 5G / 5G用アンテナ |
研究開始時の研究の概要 |
理論上減衰せずに無限遠方まで伝搬する非回折波に着目し,遠距離通信が可能な28GHz帯における非回折波用のアンテナの開発を行う。提案アンテナは光工学での非回折波生成装置を参考にし,ホーンアンテナ,円環スリット付き電波吸収体,誘電体レンズで構成される。本研究では,これらの素子の形状パラメータおよび電気パラメータ(比誘電率,導電率)と非回折波特性(リターンロス,利得,放射指向性,伝搬距離)の関係をシミュレーションにより明らかにする。さらに試作・測定実験によりシミュレーション結果の評価および試作アンテナの性能評価を行う。
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研究実績の概要 |
提案するシステムは、一次放射器、円環スリット付き電波吸収体、誘電体レンズで構成される。設計周波数は28GHz帯である。2023年度は一次放射器、円環スリット付き電波吸収体、誘電体レンズのすべてを含んだアンテナシステムについて、シミュレーションおよび測定実験により研究を進めた。研究実績は以下の通りである。 ①シミュレーション:光学系の非回折波生成の研究により、準フレネルナンバーFは5以上が望ましいことが分かっている。本研究で提案する準ミリ波帯非回折波では、所有するワークステーションのRAMの大きさにより計算できる電波吸収体およびレンズの大きさに制限がある。このため、アンテナシステムをシミュレーションする際は、準フレネルナンバーを上げるため、実在しない電波吸収体、レンズの電気定数で検討を行う必要がある。その結果、準フレネルナンバー=1.35で、レンズ透過後の焦点距離×2までの距離に光の非回折波に非常に近い分布が得られた。 ②測定実験:シミュレーションにおいてF=1.35で非回折波に近い分布が得られたので、同程度の準フレネルナンバー(F=1.32)のアンテナシステムを設計し、測定実験による解析を行った。電波吸収体にはウレタン系を使用し、円環スリットの外径Sb=30mm、レンズ径Lb=100mmとした。しかしこの場合、非回折波の分布は得られなかった。これは、円環スリット外径Sbに比べレンズ径Lbが小さく(Lb/Sb=3.3)、レンズエッジ部で回折現象が生じているためと考えらえる。そこで、準フレネルナンバーは小さくなるが(F=0.66)、レンズ径Lbを2倍(200mm)にし同様の実験を行った。その結果、焦点距離×1まで非回折波に近い分布が得られた。この結果より、円環スリット外径Sbとレンズ径Lbの比がある程度大きく(本実験ではLb/Sb=6.6)する必要があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電波吸収体とレンズのエッジ外側からの回折を抑えるためには、当初予定していた以上の電波吸収体およびレンズ径が必要であることが分かった。このため所有するシミュレーション用ワークステーションのRAMの大きさでは、計算できる電波吸収体、レンズの大きさに制限がある。シミュレーションにおいて、実在しない電波吸収体、レンズの電気定数(比誘電率、誘電正接)で検討を行う必要があった。このため、シミュレーションの結果を参考にして、測定用の電波吸収体、誘電体レンズの設計ができず、研究の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
目的とする非回折波生成に至っていない。以下に予想される原因と今後取り組むべき研究方策を述べる。 ①現在使用しているウレタン系電波吸収体の減衰率は8dB/cmであるため、厚さ25㎜の場合20dBの減衰しかない。このため、完全な非回折波生成は難しいと考えられる。減衰率を上げるためにウレタン系電波吸収体の厚50mmの場合を検討する必要がある。シリコン系電波吸収体は、1cm辺りの減衰率がウレタン系より大きい。したがって、シリコン系も検討する。 ②電波が通る円環スリット部では、円環スリット幅を一定に維持するため、円環状の素子をPLA樹脂を使用し3Dプリンターで作成している。しかし、円環スリット部内のPLA樹脂が一様な分布をしておらず、円柱状スリット透過後の電界分布が一様な分布になっていない可能性がある。また、PLA樹脂の比誘電率は空気の1より大きいため、円環スリット部入射面で入射波の一部が反射され、円環スリット内部での電界強度が弱くなり、電波吸収体での電界強度との差が小さくなっている可能性がある。対策として、発砲スチロール製の円環スリットを製作(外注)し、実験を行う予定である。 ③光学系の非回折波生成の研究では準フレネルナンバーは5以上が望ましい。しかし、2023年度に測定実験用で設計した非回折波生成システムでは準フレネルナンバーが約0.66である。準フレネルナンバーを大きくするため、円環スリットの外径を現在の300mm(準フレネルナンバー=0.66)から400mm(準フレネルナンバー=1.17)さらに600㎜(準フレネルナンバー=2.64)にし、実験を行う予定である。
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