研究課題/領域番号 |
23K22771
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補助金の研究課題番号 |
22H01501 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
石丸 伊知郎 香川大学, 創造工学部, 教授 (70325322)
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研究分担者 |
和田 健司 香川大学, 医学部, 教授 (10243049)
岡崎 慎一郎 香川大学, 創造工学部, 准教授 (30510507)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 赤外分光 / 分光イメージング / FTIR / 干渉鮮明度 / インターフェログラム / 赤外パッシブ分光 / 中赤外光 / ガス種弁別検査 / コンクリート塩害劣化 / 中赤外分光法 / 中赤外パッシブ分光法 / 非侵襲血糖値センサー / ガス種弁別可視化 / フーリエ分光法 / 中赤外パッシブ分光イメージング / ガス種弁別 |
研究開始時の研究の概要 |
①放射光防止、また母材のSiは赤外光を透過してしまうので②放射光の遮光、更に③反射防止を同時に満たさなくてはならない。①と②を同時に満たすためには、自由電子を有する例えば金を蒸着する事で反射率が大きくなるので①を、また放射率は小さくなるので②を満たすことができる。そこで、反射率が大きく放射率の小さな金を用いながらも、カメラ側の反射率だけを選択的に小さくできる構造的な反射防止膜のサブ波長構造(SWC:SubWave-length Structure Coating)を設ける事にした。本年度は、特に広帯域な中赤外領域での無反射性を有するSWC構造の最適化と製作方法の検討を行う。
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研究実績の概要 |
100年以上の歴史と実績を有する中赤外分光法、特に照明が不要であるパッシブ分光法を日常生活空間へ適用可能にすることにより「その場分析」と言う新たな学術分野を創出する。成分分析に適した中赤外分光法(波長10マイクロメーター=波数1,000cm-1近傍)は、試料を照明せずに物体温度から放出される放射光を分光することが可能である(パッシブ分光法)。そこで、ステルス機能を持ったマルチスリットを開発することにより、独自技術の結像型2次元フーリエ分光装置を温度依存性のない中赤外パッシブ分光イメージング装置へと発展させる。これにより、新たなインフラ管理や環境計測、ヘルスケア分野への広範囲な展開が可能になる。 (Ⅰ)ステルスマルチスリットによる中赤外パッシブ分光イメージング ステルスマルチスリットは3つの条件、①マルチスリット温度からの放射光防止、また母材のSiは赤外光を透過してしまうので②物体からの放射光の遮光、更に③カメラ温度からの放射光の遮光部からの反射防止を同時に満たさなくてはならない。今年度は、①のマルチスリットからの放射光を防止するのではなく、放射光強度を大きくすることによりインターフェログラムの鮮明度を向上させることに成功した。これは、母材に放射率の高いガラスを用いて、マルチスリットを50℃程度まで加熱する事により実現できた。 (Ⅱ)有用性検証 まず、体温から放射される中赤外光の分光特性を取得した。これにより、体内のグルコース起因の放射光ピークを9.25マイクロメーター、9.65マイクロメーターに確認する事が出来た。被験者による臨床評価に於いて、従来の採血型の血糖値センサーと、中赤外の発光強度には強い相関を確認する事が出来た。また和田は、日本製鉄鹿島製鉄所に赴いて、有毒ガスの広域可視化のフィールド試験を行った。更に、岡崎はコンクリートに添加した水分量の分布の可視化に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していなかった、非侵襲血糖値センサーの実現可能性を実証する事に成功した。これらの成果を、Nature Scientific Reportsに投稿して掲載された(11月)。 非侵襲血糖値センサーに関しては、数多くのチャレンジがなされてきているが、その多くは近赤外分光法による手法である。これは、近赤外光の皮膚の透過性の高さに注目しているが、グルコースによる光吸収も微弱であり実現には至っていない。一方、中赤外分光法は、極薄グルコース濃度でも顕著に光吸収を生じるが、水による光吸収も大きく生じてしまう。そのため、水分を多く含む皮膚への中赤外分光法の適用は困難であった。従来は、量子カスケードレーザーなど高出量レーザーを適用することが試みられている。しかし、皮膚内部の光吸収が大きい事から、反射光を検出する事が困難であり、実現には至っていない。しかし、本ステルスマルチスリットを搭載した、世界初の中赤外パッシブ分光イメージング手法では、遠隔からの体内のグルコース濃度の検出に成功した。これは、体が温度が一定で体積の大きな安定的な光源として見なしたことにより、中赤外領域の分光特性からグルコース濃度の計測に成功できている。 スマートウォッチなどで、日々の非侵襲での血糖値計測が世界的に待たれた技術であり、本研究成果が注目されている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた有用性検証の項目であるガス種弁別可視化、コンクリート塩害劣化度評価に加えて、非侵襲血糖値センサーの評価も同時に進めて行く予定である。 特に、イメージング出来ている事から、グルコースの偏在性の可視化も可能となっている。これは、開腹手術中におけるがん浸潤度評価にも展開可能ではないかと考えている。悪性腫瘍がグルコースの消費量が大きい事に注目して、PETではグルコースに標識をつけて深部の偏在性を可視化することでがん領域を検出している。中赤外パッシブ分光イメージングでは、深部の計測はできないが、開腹時の皮膚表面近傍の計測は可能である。そこで、グルコースの偏在性の可視化によるがん領域の抽出可能性について、マウスなどの動物実験により検証を行う予定である。 また、体内の分子振動から発せられる中赤外光の、皮膚などの内部での伝搬モデルについて構築検証を行う。これにより、体内のどの深さからの成分情報を取得できているかが明確になる。これは、分光分野では未だないモデルであり、学術的にも極めて高い価値がある。
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