研究課題/領域番号 |
23K22775
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補助金の研究課題番号 |
22H01505 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
武井 良憲 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (00805145)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 光学式圧力計 / 圧力標準 / ファブリ・ペロ共振器 / 真空計測 / 屈折率計 / 真空 / 圧力 / 標準 / 屈折率 / 熱力学温度 / 分極率 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、既存の圧力計測技術に依らずに、圧力の絶対値を世界最高精度で計測できる装置の開発である。圧力は、気体の状態方程式および分子密度と屈折率の関係式より、屈折率と温度と分極率から求められる。これまでに、広い範囲の圧力を高分解能に計測可能な装置を開発した。さらに、屈折率計測に及ぼすキャビティの変形の影響を、ヘリウムと窒素の分極率から補正する手法を実践した。しかしながら、窒素の分極率が元々圧力から決定されており、既存の圧力計測技術に真に独立ではなかった。本研究では、4光路を有するクアッドキャビティを開発して上記の課題を解決する。本研究成果は、広範な科学技術分野の発展に寄与する。
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研究実績の概要 |
圧力以外の物理量から圧力の絶対値を世界最高精度で計測可能な光学式圧力計の技術開発が本研究の目標である。本年度(2023年度)には、これまでに開発した装置を基に下記の①②を行い、光学式圧力計の中真空の圧力計測精度を向上、および計測の信頼性を向上させた。 ①[ファブリペロ共振器の熱膨張補正量の改善] 圧力 p は屈折率(n-1) に比例する。ヘリウム屈折率 (n -1) は100 kPa の際に約3.2×10(-5) であり1 Pa の際に約3.2×10(-10)である。レーザの周波数技術により(n-1)を11桁の分解能で測定できるが、中真空(~100 Pa)の圧力範囲では、その精度はファブリペロ共振器の熱変形に律速される。ファブリペロ共振器の材質には超低膨張のガラスセラミックス:クリアセラム-Z(EX)を採用している。その材料の本来の熱膨張係数を利用するために、他の材料からの熱応力がファブリペロ共振器の測定部にかからないような方法で設置した。また、ペルチェで徐々に温調するチラーを用いて、チャンバの長時間の温度安定性をさらに改善させた。加えて、チャンバを、熱伝導率がSUS304よりも10倍以上優れている0.2%BeCuのものに交換することで、温度分布を改善させた。 ②[他の圧力標準との比較] 開発中の光学式圧力計は、他の圧力標準に依らずに、別の物理量(屈折率と温度とガス分極率)から圧力を求められる。一方で、開発段階ではその測定結果の検証のために、圧力標準が必要である。100 kPa に対する現在の最も高精度な標準は重錘形圧力天びんである。それの高度化のためにピストン・シリンダの寸法を測定している。1 Pa に対する最も高精度な標準は膨張法装置である。それらを比較するために、恒温槽や精密空調機で周囲温度を整えた環境下で、最も再現性の高い隔膜真空計を選定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学式圧力計には、既存の圧力計測技術に依らずに圧力の絶対値を高精度に計測できる可能性がある。ただし、従来にない新規計測装置であり、実用化のためには、ファブリペロ共振器の周囲の圧力変化に依る変形、ファブリペロ共振器長の経年変化やヘリウム透過に変化など、多くの課題を解決する必要がある。研究開発を進めるにつれて追加の課題も明らかになるが、一つ一つ着実に解決しており本研究は「おおむね順調に進展している」。
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今後の研究の推進方策 |
圧力以外の物理量から圧力の絶対値を世界最高精度で計測可能な光学式圧力計の技術開発が本研究の目標である。今後の研究では、下記の①②を行い、光学式圧力計を発展させる。 ①[他の圧力標準との比較] 光学式圧力計の目標は、高真空(1 Pa)以上の圧力範囲で膨張法装置よりも高精度、大気圧(100 kPa)以下の圧力範囲で重錘形圧力天びんより高精度、を達成することである。光学式圧力計の実用化の前にはそれらの標準との比較評価が必須である。今後の研究では、最も高精度な隔膜真空計を選定し、それを光学式圧力計と膨張法装置の両方で校正することで光学式圧力計の高真空測定の妥当性を明らかにする。また、重錘形圧力天びんの更なる精度向上のために、ピストン・シリンダを超精密三次元座標測定機を用いて測定する。100 kPa の圧力を、重錘形圧力天びんで校正された高精度圧力計と比較することで、大気圧測定値の妥当性を明らかにする。 ②[在外研究] 米国計量研究所NISTでも光学式圧力計が開発されている。我々の研究グループは長さが異なる2台のファブリペロ共振器を利用しているのに対して、米国NISTの研究グループは、1つのゼロ熱膨張材料に2つの光路を有するキャビティを利用している。他国の研究グループで米国NISTと類似のキャビティを開発したが想定通りの結果は得られていない。米国NISTには光学式圧力標準に関する長年のノウハウが蓄積されており、それが論文発表では焦点を当てられることはないものの実験系の重要なポイントである。今後の研究では米国NISTを訪問し、そのキャビティを実際に利用することで、肝のところを実験的に調べる。
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