研究課題/領域番号 |
23K22783
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補助金の研究課題番号 |
22H01513 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
滑川 徹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30262554)
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研究分担者 |
牛房 義明 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (90343433)
畑中 健志 東京工業大学, 工学院, 准教授 (10452012)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | サイバーフィジカルシステム / メカニズムデザイン / スマートシティ / 分散協調最適化 / Plug & Play 制御 / 経済効果 / 費用便益分析 / 限定合理性 / 集団ダイナミクス / スマートパーキング / 制御バリア関数 / 分散最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、制御学と経済学の知見から、スマートシティのモデリング、分散協調最適化アルゴリズムの設計、経済効果と費用便益の解析を実施し、次世代メカニズムデザインを世界に先駆けて提案する。これによりPlug & Play機能を有するフレキシブルで強靭な社会システムの構築に寄与することを目指す。 まず、スマートシティを人間の意思決定機構を含む大規模統合動的ネットワークシステムとしてモデリングし、次に、制御学と経済学の視点から、分散協調最適化手法に基づく社会システムのメカニズムデザインを提案する。最後に提案メカニズムと実データを用いた数値実験により、提案する次世代メカニズムデザインの有効性を示す。
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研究実績の概要 |
スマートシティを大規模サイバーフィジカルヒューマンシステムと捉え、ネットワーク結合した異種・異構造インフラシステムの各コンポーネントをモデル化し、制御学と経済学の観点から数理的解析と設計を行った。その結果、以下の4つの成果が得られた。 1.大規模電力ネットワークを、火力発電機、需要家のデマンドレスポンス、ネットワークシステムに分解し、それぞれのシステムの特性を受動性という概念で統一的に表現することに成功した。またこの性質に基づき、制御学の観点からイベントトリガー制御を用いたデマンドレスポンスを含む負荷周波数制御系を構成した。 2.制御学と経済学の双方の観点から、共有経済問題の一つであるカーシェアリングシステムにおける車両台数の平準化問題に対して、需要予測とゲーム理論のメカニズムデザインに基づくインセンティブの設計法を提案した。数値実験により、提案法によるサービス提供率の向上と、利益増加が確認された。 3.経済学の観点から、電力電圧の制御システムの検討とその制御システムによる効用を検討した。太陽光パネルの大量導入による既存電圧制御機器の保守管理費が増大する問題に対して、電圧制御機器の負担軽減のために、燃料電池型コージェネレーションシステムを用いて電力変動を直接かつ自律的に補償する制御手法を提案し、その経済効果を示した。 4.スマートコネクティッドコミュニティの主要要素である人間に焦点を当て、行動経済学における限定合理性をシステム制御、特に受動性の観点から解析し、集団の選択をより良い方向に導くメカニズムを設計した。本成果はシステム制御分野のトップジャーナルに掲載された。また、蓄電池とPVパネルの最適投資問題を対象として、制度保証付きの新たな確率最適化アルゴリズムを提案し、城野地区の実データを元にその有効性を明らかにした。さらに、蓄電池の共有が地域にもたらす便益を定量的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、制御学と経済学の観点から、スマートシティを大規模サイバーフィジカルヒューマンシステムと捉え、ネットワーク結合した異種・異構造インフラシステムの各コンポーネントをモデル化し、数理的解析と設計法の提案に成功している。目標である「制御学と経済学で共創する次世代メカニズムデザインとスマートシティへの展開」の実現に向け、おおむね順調に研究が進展していると判断する。主要な結果は以下の4つである。 1.制御学の観点からデマンドレスポンスを含む負荷周波数制御系における安定性解析に成功している。電力システムを火力発電機・デマンドレスポンスと電力ネットワークに分解し、それぞれの システムの受動性を解析し、更にイベントトリガー制御を用いたデマンドレスポンスを含む負荷周波数制御系の構成にも成功している。 2.制御学と経済系観点から、貨物輸送とライドシェアサービスを同時提供する貨客混載車両の運行に関して、安定マッチングに基づく経路最適化アルゴリズムを構築した。またカーシェアリングシステムにおける車両台数の平準化問題に対して、需要予測とメカニズムデザインに基づくインセンティブの設計を用いた最適化アルゴリズムを設計した。 3.再生可能エネルギーの大量導入により配電系統電圧変動が引き起こされる問題に対して、燃料電池型コージェネレーションシステムを活用した電圧変動制御システムシミュレータと制御アルゴリズムを構築した。その結果、電圧変動を減少させ、既存電圧制御機器の動作回数の減少に成功した。 4.これまでに分散最適化アルゴリズムの提案、社会モデルの解析と設計という二つの理論課題が解決するなど、研究は順調に進捗している。また、蓄電池共有に関する便益の定量的な算定や、既存のキャンパスシミュレータではなく実データに基づく住居・集合住宅の空調・照明シミュレータ構築など、当初の予定を上回る進捗を得た部分も存在する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、制御学と経済学の観点から、スマートシティを大規模分散型サイバーフィジカルヒューマンシステムとして捉え、ネットワーク結合した異種・異構造インフラシステムのそれぞれのコンポーネントをモデル化し、その動作原理の数理的解析を行った。最終年度は、これまでに構築したスマートシティの構成要素である情報・電力・交通・経済の動的な数理モデルを活用し、モデル間の相互作用と情報結合構造を解析し、Plug & Play特性を有するスマートシティの最適設計と動的メカニズム設計理論の体系化を行う。多数のステークホルダーの意思決定問題を、ゲーム理論におけるメカニズムデザインに基づいて定式化し、解の存在条件、最適解の高速計算アルゴリズム、システムの安全条件を明らかにする。さらにはスマートシティのエネルギーマネジメント問題、モビリティやシェアリングエコノミーの制度設計問題へ応用展開する。 経済学の視点からは、これまでに再生可能エネルギーが大量導入された場合の電力システムの技術的な課題とその対応、経済的な負担の軽減について研究成果が得られている。最終年度は、燃料電池型コージェネレーションシステムを用いた電圧制御システムの設計に加えて、蓄電池を導入した場合の電圧変動の制御や既存電圧制御機器の保守管理費抑制方策を提案する。また電圧制御システムの費用便益分析を行う。 制御学の視点からは、分散最適化技術に関しては、線形緩和に基づく更なる計算高速化技術を着想済みであり、これを元にさらに精緻な蓄電池最適化および共有の便益計算を行う。 また、蓄電池の共有に対する住民の戦略性を考慮したモデルを新規に提案し、戦略性が便益に与える影響を実データに基づいて定量的に明らかにする。前年度までに構築した空調・照明シミュレータを統合し、時定数の異なるダイナミクスが混在する対象に対する分散最適化技術の適用可能性についても解析を進める。
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