研究課題/領域番号 |
23K22787
|
補助金の研究課題番号 |
22H01517 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
土方 泰斗 埼玉大学, 情報メディア基盤センター, 准教授 (70322021)
|
研究分担者 |
針井 一哉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 量子機能創製研究センター, 主任研究員 (00633900)
松下 雄一郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (90762336)
大島 武 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子機能創製研究センター, センター長 (50354949)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
|
キーワード | 炭化ケイ素(SiC) / 単一光子源 / スピン電流 / 偏光 / MOS界面 / 単一光子源(SPS) / スピン電流注入 / 円偏光 / 炭化ケイ素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,情報担体として単一光子を採用し,このような非古典光の偏光状態をスピン注入により制御すると共に,室温電子駆動により発振する発光デバイスを開発することである.また,単一光子源(SPS) としてSiC 半導体上のMOS 界面に現れるカラーセンタ(表面SPS)に着目し,これをショットキーバリアダイオード(SBD) またはpn 接合ダイオード(LED) に導入する.一方,SiC/絶縁体接合界面の物性を第1原理計算により浮き彫りにすることで,表面SPS 構造・物性の詳細を把握し,SiC 基板に対しより効率的にスピン注入を行うデバイス構造を提案する.本研究で開発した量子デバイスを量子暗号通信等への応用に研究を展開していく.
|
研究実績の概要 |
SiC基板の熱酸化によってMOS界面に表面単一光子源(SPS)を形成し,酸化温度などの酸化条件を最適化する.なお,SPSの評価にはフォトルミネッセンス(PL)測定に加え,光子相関測定における単一光子純度および生成レートを指標に用いた.また,既存の共焦点蛍光顕微鏡(CFM)に偏光解析システムを導入し,各表面SPSの偏光特性データを取得していく.以上の計画を踏まえ実験を行った結果,通常の六方晶表面に表面SPSを形成した場合,面に平行な偏光方向を有する直線偏光の発光が観測され,その偏光角は基板の結合軸と平行であった.また,多数の表面SPSの偏光特性を調査したところ,互いに120°異なる基板3回対称構造に起因した3種類の偏光角を持つSPSがそれぞれ1/3の出現率で観測された.このことは,表面SPSが最表面原子のバックボンドに形成される複合欠陥であり,表面ボンドよりもバックボンドに形成され易いことを示唆している. 実験的に同定された表面SPSに対して,詳細な物性値を第1原理計算により求め,SiC/酸化膜界面と表面SPSのモデル化を実施した.その結果,酸素ポテンシャルエネルギーが小さくなるほどSi置換酸素(O_Si)ができ易く,逆にそれが大きくなるほどO_Cができ易くなる事がわかった.また,発光準位の計算結果より,この二つの点欠陥が最もエネルギー的に安定した構造であり,表面SPSの構造として有力候補であることが示唆された. SiC MOS界面へのスピン注入を目指し,Niを磁化膜として採用し,既にSiC低抵抗n型オーミック接合で実績のあるNi/SiC接合を形成した.このような電極構造を有したデバイスを作製し,スピンバルブ測定を行い,スピン偏極電流を評価した.その結果,期待通りのスピン電流注入に伴うデバイス内部の電界は現れなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SiC基板に強磁性体薄膜を蒸着し,リソグラフィー法でスピンバルブ測定を行うためのデバイス構造を形成し,スピン注入の可否を検証した。その結果,所望のスピン流を示す電界分布は観測されず,スピン注入は成功されなかった.この原因究明のため通常の電流-電圧測定を行ったところ,金属-半導体接合における接触抵抗が極めて高く、強磁性体薄膜の質が十分でないことがわかった.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,SiCへのスピン注入を達成するため,強磁性体膜の成膜方法について再検討する.これまで簡易スパッタ装置を用いたが,これを真空蒸着法あるいはより高度なスパッタ装置を用いることで問題解決に取り組む. また,スピン注入のさらなる高効率化のため,強磁性体とSiC基板の間に東工大Gによる理論計算で提言されたトンネルバリヤ層,あるいは強磁性共鳴を用いたスピンポンピング法の導入等についても検討していく. スピン電流注入に成功した暁には,MOS界面に形成された表面SPSへのスピン注入を行い,エレクトロルミネッセンス(EL)観察を試みる.ELに対する光子相関測定により単一光子であることを確認する. 本研究の最終章として,表面SPSを内蔵し,スピン注入電極を設けたSBDまたはLEDを作製する.埼玉大Gが開発する偏光解析技術を用い,スピン注入による円偏光単一光子放出を検証する.試作デバイスに対し,しきい値電流などの電気的特性,スピン注入効率などの磁気的特性,単一光子生成レートや純度,偏光真円度といった発光特性を測定し,総合的なデバイス評価を行う.
|