研究課題/領域番号 |
23K22796
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補助金の研究課題番号 |
22H01526 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森岡 直也 京都大学, 化学研究所, 准教授 (90905952)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
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キーワード | 炭化ケイ素 / SiC / 点欠陥 / スピン / 電気的検出磁気共鳴 / 磁気共鳴 / 光電流 / 半導体 |
研究開始時の研究の概要 |
炭化ケイ素(SiC)は高感度な量子センサや量子情報処理・通信において有用と目されている様々な点欠陥スピンをホストし、かつ電子デバイスとして良好な動作が可能な半導体材料である。これまでに光電流を用いてSiC中のスピン点欠陥のコヒーレントな量子情報が室温で電気的に検出できることが見出されてきたが、光電流がスピン依存性を獲得するメカニズムやスピン依存性の大きさの決定要因は未だ明らかではない。本研究では、光励起下におけるSiC中の点欠陥スピンと電荷のダイナミクスを詳細に研究し、室温量子エレクトロニクスの基盤となる高効率な電気的スピン情報読出技術の確立につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究では、量子情報および量子センサのプラットフォームとして炭化ケイ素(SiC)中の点欠陥スピンに着目している。光電流磁気共鳴法によって、点欠陥スピンの量子情報を電気的に検出することが可能であるが、炭化ケイ素においてそのメカニズムや検出感度向上の指針は十分に理解されていない。本研究では、SiC中点欠陥においてスピン、光、電荷が相互に関与するダイナミクスを調べ、光電流によるスピン検出メカニズムの解明と、検出効率の向上を目指している。 研究初年度となる本年度は、SiC中欠陥の光電流磁気共鳴検出装置の立ち上げを行った。スピン・光・電荷ダイナミクスを調べるうえで、本研究では時間軸ダイナミクスおよびエネルギー軸ダイナミクスの両方に着目している。時間軸の制御のため、励起レーザ強度を高速に変調でき、かつスピン操作用マイクロ波を任意のタイミングで数十ナノ秒のスケールで印加可能な装置を構成した。またエネルギー軸に関しては、様々な励起レーザ波長を使用できる光学系を構成した。その過程で、SiC中のシリコン空孔V2と結合した核スピンの磁気共鳴信号を光電流磁気共鳴によって電気的に検出可能であることを示し、測定システムの低ノイズ性能を示した。また、これまでSiCにおける光電流磁気共鳴はシリコン空孔についてのみ報告されているが、本研究で製作した測定システムの検証過程においてシリコン空孔以外の信号と考えられる信号を観測し、その起源の特定を進めている。以上に加えて、今後スピン信号の検出ダイナミクスを明らかにするために必要なサンプルの作製についても取り組み、欠陥生成条件や加工条件、デバイス構造の最適化に向けた実験を実施した。これらの研究によって、実際にダイナミクスの研究を進める準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、レーザ励起の時間分解および波長依存性を測定可能な光電流磁気共鳴装置を製作することができた。本装置において、4H-SiC中のシリコン空孔の光電流磁気共鳴が検出可能であることを確認した。また、これまでSiCにおける光電流磁気共鳴検出ではシリコン空孔スピンのみが検出されているが、本研究の過程においてシリコン空孔以外の信号の観測に成功した可能性がある。詳細な検討が必要ではあるものの、これは当初の計画に加えた進展である。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に製作した装置を用いて、今後は測定パルスシーケンスに対する光電流の応答を解析することによって時間軸ダイナミクスの解析を行い、光電流がスピン依存性を獲得するメカニズムの解明にアプローチしてゆく。また、エネルギー軸について、励起波長範囲をより拡大し、様々な励起波長における信号を詳細に解析することで、光電流の構成成分および励起メカニズムを明らかにしてゆく。これらと並行して、欠陥生成条件やデバイス構造が信号に与える影響についても引き続き検討を行う。これらの結果を総合することで、光電流磁気共鳴に関わるスピン・光・電荷ダイナミクスの解明を目指すとともに、スピン信号検出効率の向上につなげる。シリコン空孔以外のスピン信号についてはその同定を進め、その検出メカニズムの解明を目指す。
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