研究課題/領域番号 |
23K22811
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補助金の研究課題番号 |
22H01541 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高木 康博 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50236189)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | コンタクトレンズ / ホログラム / AR / ディスプレイ |
研究開始時の研究の概要 |
ホログラムを用いたコンタクトレンズディスプレイは、コンタクトレンズ内のディスプレイにホログラムパターンを表示して、眼から離れた位置に画像を立体表示することで、画像への眼のピント合わせを可能にする。本研究では、眼がもつ視野全体に対して画像の表示を可能にするため、角膜を覆う球面形状のホログラムについて研究する。また、ホログラムを球面化するとホログラム計算の局所性が高まること、網膜の解像度は中心部で高く周辺部で低いことを利用して、ホログラムを分割して位置によって解像度を変えて並列計算するfoveated並列ホログラム計算について研究する。
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研究実績の概要 |
1)球面ホログラムによる画像表示特性の解明:平面ホログラムの場合は空間光変調器の画素ピッチで画角が決まり、解像度で被写界深度が決まるのに対して、球面ホログラムではこの関係が逆になり、解像度で画角が決まり、画素ピッチで被写界深度が決まることを理論的に導き、実験で確かめた。このような、球面ホログラムの特性を実現するために、本研究では球面ホログラムを球面波で照明する方法を提案した。また、コンタクトレンズに組み込む空間光変調器と偏光子による光学的シースルー特性の劣化を抑える方法について検討し、空間光変調器の開口率を0.9以上にすることで高次回折像の影響をほぼなくすることができ、偏光子を1/4波長板に置き換えることで光量低下をなくし画質劣化も小さく抑えることができることを示した。 2)表示デバイスに必要な性能の明確化:本研究で提案した球面ホログラムを球面波照明する構成方法において、空間光変調器の画素ピッチと解像度と、ホログラム表示の画角と被写界深度の関係を明らかにした。さらに、球面波照明に対応するホログラム計算法を開発した。この方法では、球面波の曲率をレンズの焦点距離と考えて、虚像結像の関係を用いた回折計算を行う。提案法の有効性を実験で確かめた。画素ピッチ8 μmで解像度1,024×1,024の空間光変調器を用いて、約15°の画角が実現できることを示した。 3)球面ホログラム作製システムの構築 本研究では、球面化した空間光変調器を作製する代わりに、フィルムを用いた球面ホログラムの作製システムを構築した。まず、ホログラムフィルムであるフォトポリマーにホログラムを記録する。その後、熱処理によりホログラムフィルムを球面化するシステムする。複数の熱処理パラメータを試したのち、安定的に球面化する方法を確立した。人間の目の角膜の曲率半径とほぼ等しい曲率半径9 mmの球面化を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)球面ホログラムによる画像表示特性の解明:当初の計画通り、球面ホログラムによる画像表示の特性を理論的に求め、コンピュータシミュレーションで確かめた。この結果をもとに、視域拡大の方法を提案した。以上について、実験で確かめた。 2)表示デバイスに必要な性能の明確化:当初の計画通り、球面ホログラムの計算式を導出した。ここで、虚像結像の考え方を用いたホログラム計算法を提案した。これらについて、実験で確かめた。 3)球面ホログラム作製システムの構築:当初の計画では、球面化したフォトポリマーにホログラムを記録することを考えていた。しかし、その後の研究で、ホログラムを記録したフォトポリマーを球面化することが可能であることが判明したため、こちらの作製方法を用いることにした。球面化の熱処理の最適条件を見出し、安定的に球面化が実現できている。また、球面化に伴うフォトポリマーの伸び率を考慮してホログラム計算も実現した。 以上のように、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に、当初の計画通り進める。令和4年度の研究成果をもとに、令和5年度は、以下の内容について研究を行う。 1)球面ホログラム計算法の開発:ホログラムコンタクトレンズの広画角化のためには、ホログラムの球面化が必要である。球面ホログラムの計算法を新たに開発する。開発したホログラムを、令和4年度に開発した球面ホログラム作製システムで実際に作製して、実験でその有効性を示す。 2)高速ホログラム計算法の開発:角膜の光学部の直径は8 mmであるので、画素ピッチを3 μmとするとホログラムの解像度は約2,700×2,700になる。例えば、ホログラムを3×3、5×5、7×7個に分割し、並列計算の効果を調べる。つぎに、網膜の解像度に合わせて周辺部のホログラムの解像度を下げるfoveated化を検討する。さらに、GPUを用いた高速化の効果を確かめる。将来のホログラムコンタクトレンズの実現においては、スマートフォンと連携して、スマートフォンでホログラム計算を行う形態が考えられる。この場合のスマートフォンのプロセッサに求められる性能について検討する。本研究では、透明なホログラムとして、光を吸収しない位相型ホログラムを用いる。本研究では、位相型ホログラムの計算に、従来からよく利用されているGerchberg-Saxtonアルゴリズムや、最近研究が進むディープラーニングを用いたニューラルネットワークを用いた方法を適用する。 3)模型眼を用いた網膜像評価システムの作製:提案法で発生できる網膜像の画質評価のために、人間の眼を用いる代わりに、模型眼を用いた評価システムを作製する。模型眼は、人間の眼の光学特性を再現したレンズ光学系である。広画角に対応できるように、イメージセンサを2軸回転ステージに取り付けて網膜に沿って移動できるようにする。
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