研究課題/領域番号 |
23K22828
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補助金の研究課題番号 |
22H01558 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
早瀬 潤子 (伊師潤子) 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50342746)
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研究分担者 |
渡邊 幸志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50392684)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 量子センサ / 量子スピン多重共鳴 / NV中心 / ダイヤモンド / 電子スピン多重共鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ダイヤモンド中の窒素-空孔中心に局在する電子スピンの量子力学的な性質を最大限活用することで、従来よりも遥かに性能の良い「固体量子センサ」を実現します。具体的には、レーザー・マイクロ波・ラジオ波を同時に照射する電子スピン多重共鳴遷移に基づく新たな量子制御技術を開発し、電子スピン3準位系特有の新奇な量子現象の観測・物理解明と、2準位系にはない機能・性能を有する量子センサの開発を目指します。
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研究実績の概要 |
本研究では、ダイヤモンド中窒素-空孔(NV)中心を対象として、電子スピン多重共鳴遷移に基づく3準位系特有の新奇な量子現象の観測・物理解明と、2準位系にはない機能・性能を有する量子センサの開発を目指している。 2023年度は、電子スピン二重共鳴遷移下で生成・観測されるRF-Dressed状態を利用し、連続波光検出磁気共鳴(CW-ODMR)により交流磁場(強度・位相)・温度を同時に測定可能な複合センサを提案・原理実証することに成功した。さらに同技術を広範囲イメージング系に適用するとともに、イメージングに適した量子センサヘッドを開発することで、微細回路に流れる電流由来の交流磁場と温度の2次元イメージを取得することに成功した。NV中心による交流磁場と温度の複合イメージングに世界で初めて成功したこと、バルクダイヤ中電子スピンのRF-Dressed状態を用いることで従来よりも高感度・高空間分解能の温度イメージングに成功したことは、量子センサ分野を発展させる上で重要な成果であると言える。さらにFloquet理論を適用することで、強励起下において観測される電子スピン二重共鳴スペクトル上のアンチクロッシング構造を再現しメカニズムを解明すること(Physical Review Aに論文出版)や、Lindbladマスター方程式を用いてスペクトルのコントラストの特異な振る舞いを説明することに成功した。また電子スピン三重共鳴下RF-Double-Dressed 状態を用いた周波数可変交流磁場センサの開発においては、RF-Dressed状態を用いた磁場センサよりも周波数可変範囲を2倍程度拡大できることを明らかにし、Journal of Applied Physicsに論文出版した。2023年度は3編の学術論文出版と4件の招待講演を行なうなど、順調に研究が進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、ダイヤモンドNV中心の電子スピン多重共鳴現象を対象とすることで、A) CW-ODMRによる交流磁場(強度・位相)・温度複合センサの開発と微細回路イメージングへの適用、B)強励起下におけるRF-Dressed状態の量子物理解明、C)RF-Double-Dressed 状態を用いた周波数可変交流磁場センサの開発を目標として研究を進めてきたが、いずれも順調に研究が進捗している。A)交流磁場・温度の複合センシング・イメージングに関しては、当初は難しいと思われていたバルクダイヤを用いた複合イメージングに成功するなど、大きな進展があった。本成果は論文執筆中であるとともに、2024年春応用物理学会にてポスターアワード候補にノミネートされる(現在審査中)など、大きな注目を集めている。B)に関しては、Floquet理論による電子スピン二重共鳴スペクトルの解析により、従来不明であったRF2光子過程によるアンチクロッシングの出現メカニズムが明らかになるなど大きな進展があり、その成果はPhysical Review Aに論文出版された。またC)に関しても、RF-Double-Dressed 状態を用いた周波数可変交流磁場センサの原理実証とセンサ性能評価が進み、その成果はJournal of Applied Physicsに論文出版された。研究代表者である早瀬は、国際シンポジウム2件を含む計4件の招待講演を行なっており、量子センサ分野において評価を得ている。現在論文執筆中の成果もあり、研究は順調に進捗している。以上より、当初の計画通りに研究が進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
NV電子スピン二重共鳴遷移下におけるRF-Dressed状態を用いた交流磁場・温度の複合センサにおいては、同技術を広範囲イメージング系に適したダイヤモンドサンプルや量子センサヘッドの開発を進め、マイクロメートルサイズの微細回路に生じる磁場(電流)と温度の空間分布を同時に測定する技術を高度化し、我々が開発したNV量子センサの有用性を明らかにしていく。さらに有限要素法に基づく磁場や温度(熱流)の数値シミュレーションにより、実験により得られた磁場や温度の空間分布の詳細な解析を行ない、より定量的な回路解析を可能にする手法を開発していく。ジュール熱が局所的に変化する微細回路を作製し、マイクロメータ―スケールの温度分布が、開発したダイヤ量子センサで測定可能であることを示していく。RF-Double-Dressed状態を用いた周波数可変交流磁場センサに関しては、当初よりも周波数可変範囲が小さく拡張が困難であることが明らかになったため、印加する2周波ラジオ波磁場の差周波によりRF-Dressed状態を生成する新たな交流磁場センサを開発し、周波数可変範囲をさらに拡大することを目指す。またFloquet理論やLindbladマスター方程式を用いた電子スピン二重共鳴スペクトルの解析に関しては、従来考慮していなかった核スピンとの相互作用を取り入れた理論計算を行なうことによって、今まで説明できなかった二重共鳴スペクトルの振る舞いのメカニズム解明を目指していく。
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