研究課題/領域番号 |
23K22833
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補助金の研究課題番号 |
22H01563 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22010:土木材料、施工および建設マネジメント関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
中村 文則 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70707786)
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研究分担者 |
下村 匠 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (40242002)
神田 佳一 明石工業高等専門学校, 都市システム工学科, 教授 (60214722)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | 環境作用 / 劣化予測 / 飛来塩分 / 表面境界 / 塩害 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、気象学・海岸工学分野の方法論とコンクリート工学の知見を高度に融合することにより、周辺地形と構造物自体の時間的な変化を考慮して実構造物の劣化予測解析が可能な総合劣化予測システムの開発とその検証を行う。具体的には、風況・波浪・飛来塩分の外部環境作用とコンクリート内部の劣化促進物質の移動過程、内部鋼材腐食過程の予測解析モデルを統合した総合劣化予測システムを開発する予定である。さらに、コンクリート構造物の外部・表面・内部を一連した総合的な検証データの構築を行い、その結果と開発した劣化予測システムの予測結果を比較することで、詳細な妥当性の検証を行う。
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研究実績の概要 |
令和5年度(2023年度)は、実構造物の総合的な検証データの構築のために実施したコンクリート橋梁の外部・表面・内部の調査結果の取りまとめを行うとともに、実構造物の新規劣化予測技術の開発の一部分の予測モデルを改良するための実験を実施し、その研究成果を学会で発表した。実構造物の総合的な検証データの構築では、塩害環境下に設置されたPC桁の損傷・内部劣化促進物質量の調査と外部環境予測として査読付論文を執筆し、学会で発表した。実構造物の新規劣化予測技術の開発の一部分の予測モデルを改良するための実験では、学会で口頭発表するとともに、外部環境作用を考慮したコンクリート表層部の塩化物イオンの移動過程に関する研究として査読付論文を執筆し、学会に投稿した(掲載決定)。さらに、実構造物の外部環境作用を評価するための観測方法についての実験および機械学習による予測技術の開発、実構造物の形状を再現した飛来塩分作用の模型実験を実施し、その成果を査読付論文として執筆し、それを学会に投稿した。 査読付論文として発表を行った塩害環境下に設置されたPC桁の損傷・内部劣化促進物質量の調査と外部環境予測では、塩害環境下に50年間設置されてきたコンクリート橋の表面損傷と浸透塩化物イオン量の関係について取りまとめを行った。具体的には、撤去をされたコンクリート橋梁のはりの一部を摘出し、その詳細な調査を実施した。調査では、実構造物の表面損傷、コンクリート内部の浸透塩化物イオン量、中性化、内部鉄筋のかぶり深さ、内部鉄筋の腐食量について調査を行い、その成果の一部を論文として公表した。さらに、構造物の外部環境作用として、飛来塩分の3次元空間の予測解析を実施し、構造物の外部環境作用と表面・内部の関係について取りまとめを行い、それを公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究活動として、研究開始時に予定をしていた1) 海岸工学分野の環境予測技術を利用した地形変化モデルの構築、2) 環境作用による表面特性変化とその影響に関する模型実験と実構造物の調査、3) 実構造物の外部・表面・内部を網羅した調査(検証)データの取得を実施し、ほぼ予定通りの進捗状況である。その一方で、2)の環境作用による大規模な模型実験において、コンクリート表面での劣化促進物質の移動過程が詳細に明らかにできてない部分があることが新たに示された。 このような新たな問題点を含めて、令和5年度(2023年度)には、実構造物の総合劣化予測システムの開発のための模型実験と予測モデルの構築、開発したシステムの実構造物の劣化予測解析への適用を行った。具体的には、実構造物の総合劣化予測システムの開発のための模型実験では、小型のコンクリート供試体を使用したコンクリート表面・表層の水分と塩分の移動過程の実験を実施した。その結果から、外部から作用した飛来塩分と降雨が、コンクリート表層部に侵入・移動する過程について明らかにできた。 実構造物の外部・表面・内部を網羅した調査(検証)データの取得では、実構造物の表面損傷の調査とその定量化を行い、内部鋼材の腐食量の関係について整理した。実構造物の外部環境作用データとして、海域から発生する飛来塩分のデータが不足しているため、橋桁形状を再現した縮尺1/6の実験模型を製作し、大型風洞施設を使用した実験を実施した。模型実験では、風と飛来塩分を同時に作用させ、橋桁に作用する飛来塩分量について測定を実施し、その成果について取りまとめを行った。 以上より、研究の進捗状況はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、以下のような研究活動を進めるとともに、最終年度であるため、その成果の取りまとめを行う予定である。 これまでの研究活動において、コンクリート表面・表層部の劣化促進物質の移動過程の予測モデルの精度が低下することが新たに明らかになったため、引き続き、令和5年度に実施した実験を実施するとともに、予測モデルの改良を行う予定である。令和6年度では、昨年度に実施できなかった風・飛来塩分・降雨パータンおよびコンクリート配合の影響について実験を行い、その結果の取りまとめを行う。さらに、予測モデルを改良するとともに、その予測精度について検討を行う予定である。 構造物の外部・表面・内部を一連した総合的な検証データの構築の部分では、これまでの研究で取得したきた実構造物の外部・表面・内部を総合的に整理し、管理者・技術者・研究者がデータを幅広く使用できるようにデータベース化を行う予定である。具体的には、データを統合して確認できる3次元サイバー空間データベースシステムを構築し、経験が少ない管理者・技術者でもデータを簡易的に確認および使用できるように工夫する予定である。 実構造物の総合劣化予測システムの妥当性の検証の部分では、これまでの研究活動で開発した実構造物の総合劣化予測システムを実構造物に適用し、供用開始から50年間程度の予測解析を実施するとともに、その妥当性の検証を行う。劣化予測システムの妥当性の検証では、コンクリート橋梁に作用する飛来塩分と降雨の3次元空間分布およびコンクリート内部に浸透する降雨水・結露水と塩化物イオン量、内部鉄筋の腐食箇所について、取得した実構造物の外部・内部・表面の調査結果との比較を行う予定である。開発した総合劣化予測システムの予測精度と、幅広い実構造物への適用性について確認する予定である。
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