研究課題/領域番号 |
23K22852
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補助金の研究課題番号 |
22H01582 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 聡 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (70470127)
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研究分担者 |
所 哲也 北海学園大学, 工学部, 准教授 (40610457)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 地盤工学 / 地盤凍結 / 地盤材料 / 力学特性 / 凍土 / 人工凍結 / 地盤改良 / 土質力学 |
研究開始時の研究の概要 |
深度50m・全応力1MPaに至る大深度・大断面建設事業に人工凍結技術が適用される時代が到来し、凍土工学に新しい展開が望まれている。本研究の目的は、高圧環境下での凍結・掘削(応力解放)・シールド構築(応力回復)・融解といった一連のプロセスに伴う地盤変形と安定性を一貫して評価する技術体系を構築することである。このため、凍土挙動の真の拘束圧依存性など、理解が未だ統一されていない古来の問題に対し、不凍水分量計測と応力・温度経路制御を合わせた室内力学試験でアプローチするとともに、熱・水・土骨格(THM)連成理論に基づくモデル化を発展させ、その運用のための物性評価法と合わせたパッケージを創出する。
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研究実績の概要 |
本研究は、高圧環境下での凍結・掘削(応力解放)・シールド構築(応力回復)・融解といった一連のプロセスに伴う地盤変形と安定性を一貫して評価する技術体系を構築することを目的とし、凍土挙動など、理解が未だ統一されていない土質力学的問題に対し種々の室内試験でアプローチするとともに、熱・水・土骨格(THM)連成理論に基づくモデル化を発展させ、その運用のための物性評価法と合わせたパッケージ創出を進めてきた。R5年度の主要な成果として、凍結時の強度特性の基礎研究をさらに発展的に推進させた。特に、過圧密粘土の凍結時強度を正規圧密粘土同様に限界状態理論の拡張で解釈することができること、引張強度が中途の温度変化やひずみ速度変化などにより大きな影響を受けることなどを示した。後者については凍土における復氷効果の現れであると考えられ、常温の土質力学にはない概念を用いて説明する必要があることを示した。R5年度後半からはアイスレンズにより不均質化した凍土の強度特性の解明および均質化モデリングに向けた実験データ取得に取り組んでおり、その試料作製のために種々の条件での凍上試験を行い、アイスレンズの生成制御が概ねできるようになり、最終年度の主要タスクの一つである不均質性の取り扱い方法の確立に向けた準備ができた。これら大変形時挙動の理解に加え、S波・P波速度計測が可能なミニチュア加圧凍結セルを開発し、凍土の剛性・ポアソン比など微小変形特性についても定量化を行った。また、初年度に自身で構築した熱・水・土連成有限要素コードに実装した凍結・融解による土の構造変化・塑性変形モデルは強非線形により数値計算が安定しない問題があったが、これの改善を図り、より安定的な計算が可能になった。以上を通して、微小変形から大変形、凍結融解の繰返しまで一般的な履歴をもつ凍土の挙動を定量化・記述可能な統合シミュレータの開発が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究調書作成時から、当初研究分担者となる予定であった研究者1名が海外に異動となり研究グループから外れたこと、および研究連携を行っている企業の遠心模型実験装置の更新に想定以上の時間がかかっているため、当初計画した8つのタスクのうち凍上時の側圧計測および遠心模型実験による境界値問題の解析という2タスクの実施が保留となっている。しかし、人工凍結に関わる技術には課題が山積しており、新たに微小変形特性の実験的解明および凍結時のアイスレンズ生成により不均質化した凍土の均質化に関わる検討という2つの新たなタスクを立ち上げ、前記の通り順調に進めている。また、力学的検討から凍上挙動や不凍水分量同定といった物理的検討まで多方面で研究を推進しているため、多くの研究者との新たな交流が生まれ、別途、日本学術振興会の外国人招へい研究者(短期)の採択や、本研究開始時には予定されていなかった国内外の共同研究などに発展している。載荷装置のモーターの故障といったトラブルや、水銀圧入ポロシメトリの結果の不安定性(乾燥に至るまでの試料準備方法の抜本的な見直しが必要と考えている)など、解決すべき問題も生じてはいるが、通常の研究で一般的に直面する程度のものであり、研究は総じて順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である本年度で主に推進するタスクは以下の通りである。 ・凍土の力学挙動に対する応力履歴効果の総合的評価:これまで進めてきた特殊な圧密・凍結履歴三軸圧縮・引張・弾性波速度計測試験をさらに進め、一般的な条件下での定式化を行い、下記の熱・水・土骨格(THM)連成モデルの一部として完成させる。また、実際の人工凍結地盤のより包括的な反映として、凍結管遠方でのアイスレンズを多く含む極度に不均質化した土質の強度を評価する手法を実験的に検討する。この不均質性に関するタスクは研究事業期間内に完了しない可能性があるが、次フェーズへの布石として鋭意実施する。 ・一次元凍結・融解試験とFTRLモデルパラメタの同定、データベース化の更なる進展:試験装置の設計・実施プロトコル等についてはこれまでのタスクでほぼ完成したため、本年度は実際の凍結サイトの地盤などに対して凍結・融解試験を行い、人工凍結解除時の地盤変形予測に必要となるパラメタの取得事例を増やす。これらと並行し、凍結・融解による土の変形の根本的な物理的過程に関する基礎研究を進める。前年度の試行では水銀圧入ポロシメトリの結果が安定せず、試料準備方法に疑義が残ったことから、種々の準備方法の検討に立ち戻って実施する。 ・THM連成有限要素解析コードの完成:上記モデルの原型の実装は前年度までに完成したが、現状の提案する凍結・融解モデルは非常に細かい時間ステップでしか解くことができない。より実務的なものとするため、低い非線形性のもので近似解が得られるモデルへの置換などを試行する。 ・一次元凍結時の側方応力計測とTHM連成モデルによるその数値的再現:本タスクについては、当初の研究分担者の国外異動により実験の実施が困難になっていたため、過去のデータの数値的再現から先に始めていた。今年度は改めて実験の実施に取り組む。
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