研究課題/領域番号 |
23K22858
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補助金の研究課題番号 |
22H01588 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩井 裕正 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80756908)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 海底地すべり津波 / 海底地盤災害 / 輸送現象論 / 津波振幅 / 津波到達時間 / 令和6年能登半島地震 / 海底地すべり / 津波 / 海底地盤工学 / エネルギー輸送現象 / 微小振幅波理論 / 地すべり性津波 / 地盤工学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最終的な目的は,海底地すべり土塊の運動変化とそれによって励起される津波特性とを明らかにすることで,津波規模や到達時間予測の高精度化に結び付けることである。特に,海底地すべり土塊と海水の境界において行われる運動量輸送や質量輸送との相関関係に焦点を当てる。 研究は実験,理論構築,数値実験の3本柱で進める。海底地すべり土塊の運動と水面変動を同時観測する模型実験を実施する。実験結果に基づき,地すべり土塊の運動と水面変動を連成させた数理モデルを構築する。定式化した微分方程式を数値シミュレーションに帰着させ,縮尺模型実験では見えにくい実スケールでの境界値問題に挑戦する。
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研究実績の概要 |
2023年度は,特に海底地すべり津波の到達時間に着目して研究を進めた。海底地すべりが津波の波源となる場合,多くは海底地震断層に比べて陸地に近い大陸斜面で発生する。海底地すべり津波は,沿岸域に到達する津波規模だけでなく,その到達時刻の予測も狂わせる可能性がある。 室内模型実験土槽を用いて,難透水層を有する傾斜10°の砂斜面に過剰間隙水圧を人為的に発生させることで地すべりを誘発し,海底地すべり運動とそれに伴う水位変動を同時に観察することで,地すべり運動と励起される波の特性について整理した。特に,津波規模および到達時間の予測の際に鍵となる,津波振幅,周期,波速,波長などの波の特徴量に加えて,地すべり土塊の運動エネルギーと津波エネルギーの相関関係に着目をした。実験結果から算出した波の周期,波速,波長について,地すべり土塊の初速度および初期平均加速との関係の整理を図った。両者において有意な関係は示されず,周期,波速,波長は土塊の運動とはほとんど相関がなく,海底地すべりが発生する水深が波速に支配的である可能性が示唆された。 また,2024年1月1日に発生した能登半島地震において富山湾で観測されたつ津波波形データの分析も急遽実施した。津波の到達時刻について着目してみると,震源に比較的近い石川県七尾市における津波第一波の到達時刻は16 時 37分である一方で,富山湾に設置された潮位計では地震の発生からわずか3分後の16 時 13分に津波第一波を観測した。富山湾で観測されて津波は,①到達時間が予想以上に早いこと,②第一波が引き波から始まっていること,そして③第二波で異なる周波数特性を持つ波が到来し津波振幅が増幅している,という3つの特徴を有していることが本分析より明らかとなり,地震断層変位に加えて海底地すべり津波が発生していると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた,海底地すべり-津波励起現象に関する数値解析手法の開発が遅れている。その理由は,2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震において,富山湾で予想以上に到達時刻が早い津波を観測したことを受けて,急遽富山湾の津波の波形データの分析を行ったためである。震源に比較的近い石川県七尾市における津波第一波の到達時刻は16 時 37分である一方で,富山湾に設置された潮位計では地震の発生からわずか3分後の16 時 13分に津波第一波を観測した。富山湾で観測されて津波は,①到達時間が予想以上に早いこと,②第一波が引き波から始まっていること,そして③第二波で異なる周波数特性を持つ波が到来し津波振幅が増幅している,という3つの特徴を有していることが本分析より明らかとなった。 海底地すべり津波は,深海底地盤での地盤災害であるため実際に観察されることは非常に稀である。富山湾で観測された津波は,津波波形データが記録されており,また地震発生後に行われた海底地形の調査によって富山湾の海底地盤で斜面崩壊の痕跡も見つかっており,実際に海底地すべり津波が発生したことが強く疑われるものである。このような現場データは大変貴重であるため,本年度の研究計画を急遽変更することに至った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度に引き続き,海底地すべり模型実験を実施し,地すべり運動と励起される津波特性の関係性の把握に努める。これまでの研究を通じて,発生する津波エネルギーを海底地すべり運動の仕事率で整理することを提案し,両者に強い相関があることが明らかとなった。また,これまでは主に発生する津波振幅に注目して実験結果を考察していたが,それに加えて,津波到達時刻の予測に不可欠な津波の波速や周期についての検討にも着手した。今年度は実験的な検討を継続的に進めつつ,実験で得た知見が令和6年度能登半島地震において富山湾で観測された津波を説明できるかどうかについて考察を進める。地震発生後に行われた海底地形の調査によって富山湾の海底地盤で斜面崩壊の痕跡も見つかっており,富山湾で観測された津波が海底斜面崩壊によって引き起こされたことが強く疑われる。さらに,海底地すべり-津波励起現象を再現することができる数値解析手法の開発に着手する。当初の研究計画では,海底斜面崩壊という地盤の大変形と自由水面を有する流体の連成解析を予定していた。しかしこれまでの実験的研究によって,海底地すべり津波は微小振幅波理論の枠組みの中で議論できる可能性が示唆された。複雑な非線形偏微分方程式を導入せずとも比較的シンプルなモデル化による海底地すべり津波の再現を試みる。
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