研究課題/領域番号 |
23K22860
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補助金の研究課題番号 |
22H01590 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
乾 徹 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (90324706)
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研究分担者 |
緒方 奨 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50868388)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 循環資材 / 溶出 / 六価クロム / 物質移行解析 / 環境安全性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、セメント改良土や解体コンクリートから製造される再生砕石といった循環資材からの微量の六価クロム(以下、Cr(VI))の溶出、ならびに2022年4月に実施された地下水環境基準におけるCr(VI)の基準値強化を背景として、1) これらの循環資材からのCr (VI)溶出量の時間変化、最大溶出可能量の特性化、2) Cr(VI)の溶出特性・移行特性に基づく実効性の高い対策工の提示を通して、循環資材の有害物質の環境負荷量に基づいた環境安全性の判定基準の構築と適切な利用シナリオの提案を図る。
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研究実績の概要 |
本研究は,セメント改良土,解体コンクリートから製造される再生砕石,掘削工事に伴い発生する掘削ずり等の地盤材料として利用される循環資材からの六価クロム(以下,Cr(VI))等の有害物質溶出への懸念,および地下水環境基準におけるCr(VI)の基準強化を背景として,1) 代表的な循環資材からのCr (VI)やヒ素(以下,As)溶出量の時間変化,最大溶出可能量の特性化,2) 有害物質の溶出特性・移行特性に基づく実効性の高い対策工の提示を行う.さらには,有害物質に起因する地下水汚染リスクに基づいた循環資材の環境安全性の判定基準の構築,適切な利用シナリオの提案を図るものである。 1) の観点では,Cr(VI)の溶出が懸念されるセメント系固化材による粘性土,火山灰質粘性土の改良土を対象として,Cr(VI)溶出挙動を詳細に実施した。特に,セメント改良土を対象とした拡散溶出試験の評価結果に基づいて,セメント改良土からのCr(VI)溶出に及ぼすセメント配合方法,養生日数,溶媒量などの影響を明らかにした.さらに,利用有姿状態のセメント改良土からの溶出挙動を評価する試験方法の提案も行った.また,トンネル掘削岩石(掘削ずり)に含まれるAsの溶出挙動についても,供試体サイズや粒度といった各種影響要因の検討を継続的に実施した. 上記 2) の観点では,解体コンクリートを原料とする再生砕石の路盤材利用などの代表的な利用用途を対象に,その地下水汚染リスクを既存の溶出試験結果や地盤中のCr(VI) 移行特性の評価結果に基づいて予測を行った.さらにはその結果に基づいて,資材の性状と適用する溶出試験方法に基づいて環境安全性の新たな評価の枠組みについて提案を行った.加えて,掘削ずりからの溶出が広く認められるAsの吸着層工法による地下浸透抑制効果について,吸着層内の実際の浸出水の流動状況を考慮して検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セメント改良土,解体コンクリートから製造される再生砕石等の循環資材からの微量の六価クロム(以下,Cr(VI))やヒ素(以下,As)の溶出挙動のキャラクタリゼージョンを目的とした検討については,研究協力者からの数多くの実験データの提供や文献調査の結果,溶出特性に影響を及ぼす要因や溶出量の分布について傾向を整理した結果をレビューとしてまとめ,公表するべく原稿の執筆に取り組んでいる.当初の計画よりやや遅れてはいるものの,おおむね計画通りに進んでいる.さらに,溶出速度の実験的評価についてはセメント改良土の物性値や配合,最大溶出可能量と溶出速度の関係について,データの蓄積を進めており,計画通りの進捗が得られている. 一方でCr(VI)やAsの溶出特性・移行特性に基づく実効性の高い対策工の提示を目的とした研究については,循環資材から溶出したCr(VI)による地下水汚染が確認されていないことから研究方針を軌道修正し,帯水層で想定される還元環境下におけるCr(VI)の移行特性の評価に取り組んでいる.具体的には,地下水中に存在するFeやMnといた還元作用を有する物質がCr(VI)の移行特性に及ぼす影響の実験的評価を着実に進めている.さらには,掘削ずりから溶出が広く確認されるAsについては,吸着層工法による対策効果に及ぼす浸出水の流動状況の影響について詳細な検討を実施した.以上より,研究計画の修正は生じているものの,順調に研究成果が得られているといえる. 以上のことを総合的に考慮し,「おおむね順調に進展している」との自己評価としている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目的である,セメント改良土,解体コンクリートから製造される再生砕石等の循環資材を対象とした環境安全性の評価基準と利用シナリオの提示に向け,最終年度となる2024年度は,2022~2023年度に得られた実験結果に基づいて,最大溶出量および溶出量の時間変化に基づく溶出特性の観点から整理した循環資材の類型毎に,環境安全性の評価判定基準と適切な利用方法を提示する. 例えば,最大溶出量と循環資材の利用量の積で規定される潜在的な環境負荷量が,許容される水準,すなわち地下水汚染のリスクが認められないと判断できる場合は制限を設けずに利用可能とする.材料劣化による溶出量増加が認められる材料については,浸透抑制や周辺地盤・吸着層による有害物質の緩衝効果といったが十分に期待される条件での利用に制限する等,溶出特性に応じた環境安全性の評価基準と利用シナリオを提示する.代表的な利用シナリオについて,数値解析による予測を実施し,地下水汚染リスクが長期的に許容範囲であることの根拠を提示する. 既存の環境安全性の評価基準,すなわち地盤材料の環境安全性を土壌環境基準に基づいて判定することは,試験の簡便性,社会受容性の面から合理性が認められる.しかし,水質に係る環境基準項目の追加・基準強化が継続的に行われる中で,その都度,循環資材の利用が制限される事態を避ける必要がある.このためには,土壌環境基準の本来の趣旨である地下水環境への負荷が許容できる範囲であることを担保しうる,環境安全性の判定・評価方法を学術的知見に基づいて構築しておくことが必要であり,本研究ではそのための科学的根拠を提示することを最終的な目的とする.
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