研究課題/領域番号 |
23K22886
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補助金の研究課題番号 |
22H01616 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22050:土木計画学および交通工学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
柿本 竜治 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (00253716)
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研究分担者 |
竹内 裕希子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (40447941)
吉田 護 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (60539550)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 豪雨時の避難行動 / 自然主義的意思決定モデル / 状況認識の失敗 / 防護動機理論 / 認知バイアス / 避難行動 / 自然主義的意思決定 / 二重過程理論 / 豪雨災害 / アンケート調査 |
研究開始時の研究の概要 |
豪雨時の避難促進を目的に,多くの気象や避難の情報が見直されたが,未だ避難遅れの課題は解決されていない.その理由の一つに,豪雨時の情報や周辺環境に対する状況認識の失敗が指摘される.そこで,本研究課題では,避難行動の意志決定過程に状況分析段階と反応選択段階の2つを設け,豪雨時の時間的な制限やリスクの程度によって異なる反応を選択させることで,豪雨時の状況認識を踏まえた避難行動の意思決定過程をモデル化する.また,モデル分析を通じて,豪雨時の状況認識を効果的に促す具体策を導き出し,豪雨時に適切に状況認識が出来れば,避難がスムーズに行われるか検証する.
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研究実績の概要 |
平時から防災活動に取り組み自然災害リスクの認知が高くても,適切な防護行動を取らない自然災害リスク認知のパラドックスが存在する.リスク認知のパラドックスの存在は,避難遅れが頻繁に発生している豪雨時の避難行動を慎重な思考による行動として取り扱うことに疑問を投げ掛けるものである.そこで,本研究では,状況認識を重要視している自然主義的意思決定モデルを援用し,豪雨時の避難行動の意思決定過程をモデル化を行った.具体的には,2019年の台風19号で被害を受けた1都14県の住民を対象に避難行動を調査した結果を用いて,避難行動意思決定モデルを推定した.そして,平時の防災への取り組みの強化や豪雨時の状況認識を促す施策等が,早期の水平避難にどの程度効果があるかをそのモデルを用いたシミュレーションにより検討した. また,令和2年7月豪雨を事例として,備えや災害情報が避難行動に及ぼした影響を因果効果分析の枠組みを用いて明らかにした。結果として,避難の備えの中で,居住地の浸水想定の認識や指定緊急避難場所までの道のりの確認,避難行動計画の検討が早期の立退避難に寄与していたことが明らかとなった.また,災害関連情報の中では,防災河川・気象情報や避難情報の取得による避難行動への因果効果は確認されなかったが,早期の呼びかけ情報の取得は立退避難に大きく寄与していたことが明らかとなった. 令和2年7月豪雨で被災した球磨村小川地区で発災時の行動についてヒアリング調査を行い,以下のことが明らかになった.小川地区から周辺の茶屋地区に声かけを行った.吐合地区は独自の避難目安を持っていた.災害後は茶屋地区と船渡地区に避難訓練の声かけをしていた.住民への呼びかけは消防団員が行った.役場からの指示が出ていたが皆避難せず,目の前に水が迫ってきてから避難をしていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,豪雨時のSAや避難意識の時間的推移を重要視するため,河川氾濫や土砂災害等の発生認識,周囲の避難状況,避難の呼びかけ等を時系列で調査するとともに,それらの変化に伴って変化する脅威評価や避難意図の時間的推移を調査することを予定した.また,それらのデータを用いて状況分析段階と反応選択段階を持つ豪雨時の状況認識を踏まえた避難行動の意思決定過程をモデル化することを計画していた. これに対し,研究実績概要にも記載しているように,2019年の台風19号で被害を受けた1都14県の住民を対象に避難行動を調査し,そのデータを用いて避難行動意思決定モデルを推定し,2022年度に提案した研究フレームの確認が出来た.また,2020年熊本県南部の豪雨災害時の避難データにも適用し,そのモデルフレームの汎用性を確認した. このように,本年度は当初計画通り,豪雨時の状況認識を踏まえた避難行動の意思決定過程をモデル化を行うとともに,そのモデルフレームの汎用性が確認できたことは,大きな成果である.このように,当初の計画通りに研究代表者も分担者も課題に取り組んでおり,また,順調に成果も得られている.以上より,「おおむね順調に進展している.」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,豪雨時の避難遅れの課題を解決するための処方箋を作成する.豪雨時に発信される気象情報,避難情報,および周辺環境から得られる情報を適切に分析し,能動的に避難できる住民を増やすことが重要である.そのためには,2023年にモデル化した避難意思決定モデルの状況分析段階でのSAの失敗を防ぐ方策が必要となる.SAの失敗の要因には,「正常性バイアス」や「同調性バイアス」といった認知的バイアスがある.そこで,人の意思決定バイアスに逆らわないことを念頭に,適切な避難行動を誘導できるインセンティブと学習・啓発とを組み合わせた防災学習プログラムを作成する.防災学習プログラムの中では,避難行動意思決定モデルからの知見を生かした豪雨時のマイタイムラインのガイドラインも作成する.それらに加えて,多くの人の避難のきっかけとなっている避難の呼びかけや濁流が迫ってきたなど外的環境刺激に替わり得るプッシュ型個別避難情報システムの開発を検討する.
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