研究課題/領域番号 |
23K22901
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補助金の研究課題番号 |
22H01631 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 福島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
押手 茂克 福島工業高等専門学校, 化学・バイオ工学科, 准教授 (80321389)
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研究分担者 |
羽切 正英 群馬工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (70435410)
加島 敬太 小山工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90710468)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 水環境 / 機能性分離膜 / バイオポリマー / 環境モニタリング / ストロンチウム / 鉛 / 金属イオン架橋アルギン酸 / 金属イオンの分離回収 |
研究開始時の研究の概要 |
環境中の超微量の(放射性)原子種の迅速分析で,質量分析は重要であるが,分析を困難にする幾つかの問題点が存在する。その一つに,分析対象と同じ原子量をもつ『同重体原子』の存在がある。このため,環境試料から必要な同位体の高効率な分離・濃縮が必要となり,分析作業工程に重大な影響を与え続けている。本研究では,ゲル形成バイオベース材料内部に異なる分離能をもつ相を連続的に配置した分離膜を開発し,この膜中でのイオンの移動度差を駆動力として単一デバイスでの高効率な『分析対象同位体の濃縮』と『分析に支障となる同重体の分離』を達成する。この単一プロセス化で分析を迅速し,原子力災害復興や水質分析などに寄与させる。
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研究実績の概要 |
本研究では,種々の様態物質が共存する系中から,膜デバイスにより,質量数204のPbおよび質量数90のSrを選択的に抽出し,質量分析を実施と,得られたデバイスを組み込んだICP-MSシステムによる同位体の定量実験を目的に,研究計画4ヶ年で達成する。本年度までの2ヶ年で,ゲル形成バイオベース材料を素材とし内部に傾斜組成をもたせた単一の分離膜(傾斜機能膜)の設計・作製及び分離評価を行った。アルギン酸ナトリウム,グルコマンナン(KGM),カラギーナン(KC)の水溶性多糖類より,KGM膜作製,KGM/KC複合膜と脂質コーティング層を付与した天然素材を積層させたアルギン酸膜の作製,そして,製膜剤であるポリエチレングリコール(PEG,分子量200)添加量とPb回収率の関係を検討した。グリセリンを副添加材としてKGMを膜化して純水透過試験や膜内有効拡散係数を測定し,膜内有効拡散係数より分子量約1000~1300の範囲で分子画分に適すると推測された。更に,カリウムなどの架橋剤でハイドロゲル形成するKCをKGM膜に添加したKMG/KC複合膜は,KGMのみの膜と同様の引張耐性を有する材料を得られた。また,セルロースマイクロファイバーで微細な凹凸構造形成及びキトサン層導入とステアリン酸ナトリウムを固定化して脂質コーティング層を付与したアルギン酸膜を作製し,高撥水領域に到達した。これらの結果より,水溶性多糖類の複合膜や膜上への異なる天然素材積層を可能とし,傾斜機能膜作製に利用可能な知見を得られた。一方,アルギン酸膜へのPEG添加量と膜厚の関係より,アルギン酸水溶液を乾燥させてシート状にする過程で一定以上の低分子量のPEG添加でより密な状態となり,製膜剤による多孔質化を効率よく促進することでの吸着性能の向上が推測された。製膜技術として新たな知見も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の2ヶ年(令和4年度~令和5年度)は,本申請研究で最も重要となるゲル形成バイオベース材料を素材とし内部に傾斜組成をもたせた単一の分離膜(傾斜機能膜)の設計・作製及び分離評価を行う。昨年度は,金属イオン架橋アルギン酸膜作製過程で添加するポリエチレングリコール(PEG)の選択によるPb回収率の向上,Pb及びSr分離に利用可能なこと,膜組成の変更で回収率を改善できることが分かった。本年度(~2024年3月31日)は,内部に傾斜組成をもたせた単一の分離膜(傾斜機能膜)作製及び分離評価のため,アルギン酸及びアルギン酸と異なる水溶性多糖類(グルコマンナン(KGM),カラギーナン(KC))を利用した分離膜形成及び複合膜形成・作製及び分離評価を行った。これまでに,KGM膜作製,及び,膜内有効拡散係数より分子量1000程度の範囲で分子画分に適した膜作製,複合膜膜(KMG/KC複合膜,セルロースマイクロファイバー及びキトサン層導入とステアリン酸ナトリウムを固定化させることで脂質コーティング層を付与したアルギン酸膜)を作製し,傾斜組成をもたせた単一の分離膜(傾斜機能膜)の作製をある程度達成した。また,製膜過程で添加するPEG選択により,乾燥させてアルギン酸水溶液をシート状にする過程でより高い密な状態にすることができ多孔質化を促進させることが分かり,膜作製技術として新たな知見が得られた。本年度は分離能を有する単層膜と複合膜の作成,膜作製時の多穴化促進のための条件を得られたが,得られた膜デバイスをSrとPb測定のための誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)への組み込み法の検討までは実施できず,次年度に実施する必要があった。1点の改善点を残したが,ICP-MSへの組み込みは,当初予定では次年度(令和6年度)までの2ヶ年での計画としていることから,進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した2ヶ年(2022年4月~2024年3月)では,バイオベース材料としてアルギン酸,グルコマンナン,カラギーナンなどの水溶性多糖類などを選択し,これらの水溶液をシート状に乾燥させたのち,架橋剤と製膜助剤を選択し,膜状に成型することで分離膜を試作した。純水透過試験,膜内有効拡散係数,引張耐性,製膜助剤の添加量の影響を検討し,単一の分離膜(傾斜機能膜)の設計・作製の基礎データを得られたと考えられた。そのことから,次年度~最終年度(令和6年度~7年度)は作製した単一の分離膜(傾斜機能膜)を利用してSrやPb回収,及び,それを前処理法としたICP-MSでのPb及びSr測定を行い,次年度(令和6年度)は作製した単一の分離膜(傾斜機能膜)を利用してSrやPb回収,及び,それを前処理法としたICP-MSでのPb及びSr測定を検討することで,環境試料への適用を評価して総括する予定である。引き続き,研究代表者は安定性同位体Pb及びSrイオンの測定と総括を担当してモデル試料としたICP-MS装置での計測への応用を検討し,研究分担者2名はバイオベース素材の分離機能膜の分離機能やICP-MS装置への組み込み時の問題改善のための膜特性の向上を担当する予定である。ここまでの2ヶ年で,単一の分離膜(傾斜機能膜)の作製と機能評価までは達成しており,膜機能と特性データを得ていることから,それらを基に環境試料への適用を検討していく予定であり,進捗状況はおおむね予定通りである。当初の予定での残り2ヶ年でのICP-MS装置への組み込みと環境試料での測定を完了できる予定である。研究成果がまとまってきたことから,残り2ヶ年で分離膜(傾斜機能膜)の作製と機能評価を論文としてまとめ,広く報告する予定である。
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