研究課題/領域番号 |
23K22903
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補助金の研究課題番号 |
22H01633 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
中野 達也 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (00361361)
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研究分担者 |
山田 哲 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60230455)
聲高 裕治 京都大学, 工学研究科, 教授 (80343234)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 柱梁接合部 / 亀裂 / 破断 / 構造実験 / 有限要素法解析 / 梁端接合部 / 柱端接合部 / 溶接部 |
研究開始時の研究の概要 |
地震時に大きな力が作用する柱梁接合部は鋼構造骨組の急所である。これまでに経験した地震で亀裂が発生している場合,次の巨大地震で破断に進展し,倒壊など建物全体の大きな被害に繋がることも危惧されるが,どこの箇所に,どのような条件で亀裂が発生し,損傷がどれくらい累積したら破断に至るのかはわかっていない。 本研究では,新築建物の設計に活用できる「大きな被害に繋がりやすい条件」を提示する【予防】と共に,既存建物の安全性検証に活用できる「経験地震による累積損傷および破断に至るまでの残存寿命の診断法」を構築する【対策】。
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研究実績の概要 |
本研究では,鋼構造柱梁接合部(梁端接合部および柱端接合部)の亀裂発生感度と累積損傷・変形性能の関係を体系的な実験・解析により定量化することを目的としている.研究1年目である令和4年度は,まずは予算規模にあわせたシナリオの再検討を行った.次に,接合部の亀裂発生感度を評価するための指標として,平面保持を仮定した平均歪に対する亀裂発生点の局所歪の比である歪集中係数に着目した種々の検討を行った. 梁端接合部については,梁端フランジ接合部に溶接欠陥を有する既往実験のデータベースを作成し,欠陥による変形能力の低下率とWES2808による歪集中係数を考慮した亀裂特性寸法との関係を把握した.検討結果から,既往の変形能力予測法と歪集中係数を組み合わせることで,汎用的なサイズの梁については,予測値の8割で実験値を概ね安全側に評価できる成果が得られた.しかし,スカラップ有無や梁とパネルの部材間耐力比などをパラメータとした数値解析を行ったところ,スカラップ有無により梁端フランジ板要素に作用する二次曲げ性状が大きく異なることが判明し,スカラップ有無とエンドタブ形式(固形/スチール)が歪集中係数に及ぼす影響については,複合的な評価が必要であることを示唆する結果が得られた. 柱端接合部については,過去に実施した載荷実験の再現解析を行い,溶接止端部の形状寸法および材料特性分布を精緻に反映した解析モデルの再現性を確認した.次に母材と溶接部の強度比,溶接部の止端形状,コラム寸法・形状(ポアソン効果)をパラメータとした数値解析を行い,それらの因子と歪集中係数の関係を定式化し,延性亀裂発生条件に基づく溶接金属への要求強度評価法を構築することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
梁端接合部については,歪集中係数の評価指標としての有効性を実験データベースから確認できたが,スカラップの有無により梁端フランジ板要素に作用する二次曲げ性状が大きく異なることが解析結果から判明した.既往研究では,スカラップ有無とエンドタブ形式による影響をそれぞれ独立に扱っているが,相互作用を考慮した複合的な検討が必要であることを示唆する結果が得られた.そのため,載荷実験に先立ってパラメトリック解析を充実させる計画に変更する. 柱端接合部については,当初計画を上まわる成果が得られた. 以上のとおり,梁端接合部に関する検討はやや遅れ気味ではあるが,柱端接合部に関する検討が進んでおり,総合的にみておおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
梁端接合部については,まずは接合ディテール(スカラップ有無,エンドタブ形式),梁サイズ,部材間耐力比などをパラメータとした数値解析を行い,弾塑性挙動と歪集中係数の関係を把握すると共に,延性亀裂発生条件に基づく変形能力評価を行う.次に,これらの解析結果に基づいて,上記のパラメータに塑性率振幅を加えた載荷実験を行う.その他,母材および溶接部については各種の確性試験を実施し,基本的な機械的性質を把握する.曲げ実験の再現解析に必要となる局所的な形状寸法と材料特性分布を調査する.形状寸法はレプリカ法でトレースし,材料特性分布は機械試験で調査する. 柱端接合部については,応力・歪に関する解析結果の抽出点を溶接止端部のBOND点に統一して歪集中係数の再評価を行う.また,延性亀裂発生条件のもうひとつの主因子である応力三軸度の定式化にも取り組む.なお当初,3年目に計画していた曲げ実験は,延性亀裂の発生と進展を観察し易いように,柱角部溶接部の要素実験に変更し,2年目にその予備解析を行う. 得られた成果を取りまとめて,学会発表および論文投稿などを行う.
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