研究課題/領域番号 |
23K22906
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補助金の研究課題番号 |
22H01636 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平島 岳夫 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20334170)
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研究分担者 |
戸塚 真里奈 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60893774)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 木質構造 / 接合部 / 火災 / 炭化性状 / ばらつき / 耐力 / 支圧強度 / 回転剛性 / 有限要素解析 / 炭化深さ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的の1つは、火災時における梁・柱・接合部の耐力評価方法を示し、木質構造フレームの火災時崩壊時間をより精度よく計算する方法を提案することである。 そのために本年度は、ダウエル金物接合部を有する木質構造フレームの載荷加熱実験を実施し、火災時における当該接合部の剛性と耐力を明らかにするとともに、接合部の回転抵抗により木質構造梁の耐火時間を延長させる効果を示す。また当該接合部の高温時回転バネモデルを組み込んだ火災応答フレーム解析によって、実験より得たフレームの火災時たわみ挙動と比較し、火災時におけるフレームの曲げモーメント分布の変化と接合部における応力状態の変化を詳しく分析する。
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研究実績の概要 |
本研究では、未だ不足している木質構造接合部と火災時残存断面のばらつきに関する耐火実験データを取得してその性状を明らかにするとともに、既往の実験データをも整理・分析して、水分の影響を考慮した木材の高温力学的特性値と火災時における梁・柱・接合部の耐力評価方法を示し、木質構造フレームの火災時崩壊時間をより精度よく計算する方法を提案することを目的とする。2022年度は下記3つの項目を実施した。 1)水分の影響を考慮した木材の高温時力学的特性値の提案: 高温時における接合部の耐力・剛性評価に必要となる木材の支圧強度に関するデータを高温時要素実験から取得した。その高温要素実験では、加熱と載荷を同時に行えるよう、ダウエル型金物そのものを熱源とする新たな方法で実施し、その実験方法の有効性を確認し、実験より得た木材の高温時支圧強度の結果を発表した。また木材の高温時力学的特性に及ぼす水分の影響について言及された、最近の国内外の文献を収集・整理した。 2)木材の残存断面性能のばらつきの評価と耐力評価用温度・含水率の評価方法の提案: 火災時における残存断面の断面性能の長さ方向のばらつきを把握するため、その加熱実験の計画をたて、大断面構造用集成材の梁を8体製作した。加熱時間は60分・90分・120分、樹種はスギとカラマツとし、加熱時間に応じて元断面寸法を設定した。また既往の構造用集成材梁の載荷加熱実験にて取得した残存断面データを整理し、そのばらつきについて考察した報告を発表した。 3)ダウエル金物を用いた木質構造接合部の火災時耐力・剛性の評価方法の提案: 木質構造金物接合部の高温時解析モデルを提案し、既往の木質構造フレームの載荷加熱実験結果との比較により、そのモデルの妥当性を確認した。また接合部の数値解析モデルおよびその解析に基づき考察した結果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の交付申請書に掲げた研究実施計画について、研究実績の概要にて前述した通り、当該年度中に概ね実施することができた。 水分の影響を考慮した木材の高温時力学的特性値の提案については、ダウエル型金物そのものを熱源とする新たな方法での載荷加熱実験が上手く実施でき、木材の高温時支圧強度に関するデータを取得できた。その実験方法では水分の影響までを十分に把握するまでに至らなかったが、一部の絶乾試験体と気乾試験体の結果比較から、今後の高温実験にてデータを取得できる見通しができた。 木材の残存断面性能のばらつきの評価と耐力評価用温度・含水率の評価方法の提案では、その加熱実験の計画をたて、予定通り、大断面構造用集成材の梁を8体製作した。また令和5年度に実施する加熱実験の場所と時期も決定し、その準備も進められている。また火災時における炭化性状のばらつきに関する事前検討から、カラマツの炭化深さと断面係数については概ね正規分布で評価できそうであるとの見通しが得られた。 ダウエル金物を用いた木質構造接合部の火災時耐力・剛性の評価方法の提案については、木質構造金物接合部の高温時解析モデルを提案し、そのモデルを組み込んだ数値解析プログラムを作成できたことが大きな成果である。これにより、令和6年度に実施予定の木質構造接合部の載荷加熱実験に対して、令和5年度に事前予測解析を実施し、その実験計画を立案することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度はそれぞれ実施項目について下記の通り実施する予定である。 1)水分の影響を考慮した木材の高温時力学的特性値の提案: 今年度は接合部の要素実験により高温時せん断強度または割裂強度の取得を目指す。引き続き既往実験データの収集・整理する。 2)木材の残存断面性能のばらつきの評価と耐力評価用温度・含水率の評価方法の提案: 火災時における残存断面の断面性能の長さ方向のばらつきを把握するための加熱実験を令和5年9月に実施する。加熱時間は60分・90分・120分とし、加熱直後における炭化後の残存断面データおよび残存断面部の含水率分布を取得する。各試験体とも多数の箇所で切断し、残存断面性能のばらつきを検討するための基礎資料を得る。また接合金物による梁継手を設けた120分加熱試験体では、後述する接合部の耐力評価に資する温度データも取得する。加熱実験より得た内部温度結果を、接合部モデルが組み込まれた3次元熱伝導解析プログラムにより考察する。 3)ダウエル金物を用いた木質構造接合部の火災時耐力・剛性の評価方法の提案: 令和5年度は、木質構造接合部の載荷加熱実験計画を立て、その試験体を作成する。令和4年度に作成した木質構造フレームの火災応答解析プログラムを用いて事前解析を実施し、接合部の回転抵抗によって梁の耐火性能が向上するような仕様を試験体に採用する。その実験は令和6年度に実施する。 以上の成果をとりまとめ、火災時における梁・柱・接合部の耐力評価方法を示し、木質構造フレームの火災時崩壊時間をより精度よく計算する方法を提案する。そして国内外の学術誌などで積極的に発表する。
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