研究課題/領域番号 |
23K22914
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補助金の研究課題番号 |
22H01644 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
岩佐 貴史 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (90450717)
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研究分担者 |
藤垣 元治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40273875)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 大型膜構造 / 皺現象 / 形状推定 / 数値シミュレーション / 画像計測 / 皺 / 膜面宇宙構造物 / 形状計測 / 有限要素解析 / スパースモデリング |
研究開始時の研究の概要 |
皺現象は薄膜の局所的な座屈現象であり,皺を含む膜面形状を詳細に把握するには細かい要素分割で作成した解析モデルを必要とし大規模構造になるほど計算コストが高くなるといった課題がある.同様の問題は計測技術でも生じ,膜面の局所的な皺形状を計測するには高解像度の計測が必要となり,膨大な計測データを処理する必要があるため計算コストが高くなる.
このような課題を解決するため,本研究は皺の生じた薄膜の形状を粗い要素分割,或いは粗い計測点間隔でも詳細に求めることができる膜面形状推定法を構築する.これにより,次代の大型膜構造物の実現に必要となる高度な設計・開発・運用支援ツールを整備する.
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研究実績の概要 |
本研究は,「空間分解能の粗い計測点」或いは「粗い有限要素モデル」から皺の生じた薄膜の変形形状を復元する方法論を構築するものである.これにより,膜面形状推定に必要なデータ量を大きく削減し,計算コストを抑えた実用的な膜面形状推定技術の確立を目指す. 今年度は,初年度に確認した皺の形状と膜応力をつなぐ計算式を利用して、粗い要素分割の有限要素解析から皺の形状を復元できるか検討した。対象としたモデルは矩形膜のせん断モデルである.その結果、通常のシェル要素では矩形膜を縦方向80分割、横方向160分割以上の要素がないと皺の形状を再現できない膜モデルが、提案する計算式と張力場膜要素による有限要素法とを組みあわせることで,縦方向3分割横方向4分割の極めて簡素な有限要素モデルでも近似的に皺の断面形状を復元できることを確認した。これらの結果はJAXA宇宙科学研究所が主催する構造材料シンポジウムで報告した。また、矩形膜のせん断モデルを対象に構築した推定法が皺発生直後の現象しか適切に対応できない原因を明らかにした。この成果は次年度開催される構造強度に関する講演会にて発表予定である。 これと並行して薄膜に皺を発生させることができる実験装置を設計し一部製作に取りかかった。次年度以降、計測システムの構築も含め実験環境の整備を行い本格的に粗い計測点から皺の断面形状が復元できるか検証していく予定である。今後の課題としては、矩形膜の引張モデルへの適用性の検証、これまでの研究で明らかとなった計算式の適用範囲を取り除くための理論構築、現状では皺の断面形状しか復元できないといった制約があるため,これを3次元形状の復元へ拡張するための方法論の構築,さらには実験による計測技術への応用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の異動に伴う環境変化により当初の予定と比べて進捗が遅れていることを昨年度報告したが、今年度もその影響を完全には取り除くことができなかった。具体的には、粗い有限要素モデルで皺の断面形状を復元できることは確認できたものの対象としたモデルは1つだけであり他のモデルへの適用性等は行うことができていない。また、実験装置の設計に数カ月を要してしまい、結果として実験装置の一部は製作できたものの計測システム(ジグを含む)の構築までを終えることができなかった。これらは今後の課題も含め次年度以降引き続き取り組んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
実験装置(計測システムを含む)を完成させ、皺の生じた薄膜の計測実験を適切に行える環境を整える。その後、これまで数値シミュレーションで妥当性を確認した「粗い要素分割から皺の断面形状を復元する方法」を計測技術に応用することで、限られた計測点で取得したデータから皺の断面形状を復元できるか検証する。そして皺の断面形状しか推定できていない状況を打開し、3次元形状の復元を可能にする方法論の構築に取りかかる。また、現在の計算式に課されている適用範囲を拡張する方法についても新たな力学モデルの構築を含め検討していき、矩形膜のせん断モデル以外のモデルへの適用性も併せて検証していく予定である。
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