研究課題/領域番号 |
23K22934
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補助金の研究課題番号 |
22H01664 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安福 健祐 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (20452386)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 群集誘導 / ヒューマンインザループ / デジタルツイン / ヒューマン・イン・ザ・ループ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、大規模集客施設での安全性とサービス品質向上を目指し、人流のセンシングデータを基に近未来の混雑を予測し、ヒューマンインザループを介した効果的な群集誘導支援システムを開発する。デジタルツイン技術を活用した仮想実験環境を構築し、大型イベント時の人流を再現、実証実験を通じてシステムの有効性を評価する。特に、ドーム球場周辺や完全予約制施設など、実在する施設を対象に、様々なセンシング技術を駆使して人流データを収集、分析し、本システムの実用性を評価する。
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研究実績の概要 |
大規模イベントや集客施設における群集誘導は、安全性とサービス品質の向上の観点から、重要な課題である。従来の群集誘導は経験則に依存していることが多く、現場の状況を迅速に把握し、その場で意思決定を行うことには限界がある。本研究は、エージェントベースの群集シミュレーションとCrowd Management Platform as a Serviceと呼ばれる先進的な群集管理システムを取り入れた、リアルタイムの群集流動予測及び可視化プラットフォームを開発した。そのケーススタディとして、ドーム球場周辺地域に焦点を当て、人流センシングを利用し、最寄りの鉄道駅の混雑を10分前に予測するフレームワークを構築した。 不特定多数の人が集まる商業施設においても来場者の適切な群集誘導は、サービス向上や混雑緩和の観点で重要である。一方で、来場者ごとに目的場所が異なるような施設で群集の動きを予測することは一般的に難しい。そこで、商業施設の購入履歴データを入手して、来場者の買い回り行動を可視化する新しい手法を提案し、群集の動線把握と効果的な誘導策立案を支援した。まず、施設内の全店舗を節点(ノード)として配置する。次に、購買履歴データから店舗間の遷移確率を算出し、確率が高い店舗間は、太く色付けされたエッジ(辺)で結んで表示する。このようにして作成したネットワーク図は、施設内の人の流れを視覚的に表現している。 さらに、地下空間を対象に群集シミュレーションを活用し、適切な群集誘導が避難時間の短縮に寄与することを検証した。大都市の地下街は、ショッピングモール、鉄道駅、オフィスビルなど多様な機能を有する地下施設が広がっており、都市の利便性を高める一方、水害からの安全対策に関しては課題が指摘されている。そこで、南海トラフ巨大地震等で大津波が発生したときを想定した避難シミュレーションを行い、避難出口の位置の最適化について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、エージェントベースの群集シミュレーションを各種のセンサーと組み合わせることで、現実に近い滞在人数を入力し、リアルタイムで近い未来の群集状態を予測するフレームワークを構築した。特にCrowd Management Platform as a Serviceと呼ばれる群集管理システムを利用し、そのケーススタディとして、ドーム球場周辺地域に焦点を当て、最寄りの鉄道駅での混雑を10分前までに予測するフレームワークを構築した。現時点では3,000エージェントに対して20分先の状況を予測するのに要した時間は1分35秒であり、リアルタイム処理の実現可能性も確認した。シミュレーション結果の精度と信頼性を高めるために、センシングの測定誤差を考慮した感度分析を行ったところ、単純な線形モデルでは群集の複雑さを十分に捉えることができないこともわかった。 また、本システムでは実際に群集誘導を行うことを想定し、複数の誘導方法による結果を提示できるように設計し、来訪者にとっての誘導情報のわかりやすさや、運営側の事前計画との差、警備員にとっての誘導のしやすさなど、現実的に対処が可能な方法として、ヒューマン・イン・ザ・ループによって人間の評価を介在させることにより、実運用上の諸問題の解決を図っている。 さらに、商業施設における出入り口通過人数や購入履歴データを入手して、これらも群集シミュレーションに組み入れたり、買い回り行動を直感的に把握する可視化手法を提案したりした。こちらはリアルタイムシミュレーションではないが、群集誘導の事前計画を立案する上で、その意思決定を支援できるものである。 以上より、本研究では2023年度の目標は達成されており、最終年度に向けた実証実験の準備も整いつつあることから、概ね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である2024年度は、これまで開発してきた人流計測に基づく群集予測シミュレーションおよびデジタルツインシステムを活用し、実在する大規模施設を対象に、大型イベントなどで人が集まる状態をデジタルツイン上に再現する。そして、仮想実験環境においてヒューマン・イン・ザ・ループを活用した大規模群集誘導の実証実験を行い、その適用性を評価する。 一つ目の実証実験はドーム球場周辺を対象としている。これには申請者が2020年から研究分担者として取り組んでいるJST未来社会創造事業本格研究課題「個人及びグループの属性に適応する群集制御」において、ドーム球場施設に設置されている各種センサーやモバイル空間統計データを利用できる。実験では、大型イベント終了後の施設周辺から最寄り駅までの混雑予測を行うため、エージェントベース群集シミュレーションをリアルタイムに実施し、10分後の混雑状況を予測する。そのためには、シミュレーションを3分以内に終えることを目標としており、シミュレーション用の高性能計算機が必要となる。 二つ目の実証実験では、完全予約制の集客施設を対象とし、チケット販売数や入場時間をパラメータとした群集シミュレーションを行うことで、施設管理者に対して、施設内の混雑を軽減する具体的な策を提案し、フィードバックを受け取ることで、本システムのヒューマン・イン・ザ・ループを実現する。 さらに、鉄道新駅が開業し、人流が劇的に変化した商業施設を対象として人流の変化を分析する。ミクロな人流を計測するLiDARセンサーと合わせて、マクロな人流の属性が取得できるモバイル空間統計も活用する。人流のセンシングは各機器の特性から現時点で完全なセンシングは難しいが、各種センサーを組みわせることで、計測精度を補間する手法についても検討し、上記の実証実験に応用する。
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