研究課題/領域番号 |
23K22941
|
補助金の研究課題番号 |
22H01671 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀 賀貴 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20294655)
|
研究分担者 |
小川 拓郎 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (00943614)
池口 守 久留米大学, 文学部, 教授 (20469399)
加藤 磨珠枝 立教大学, 文学部, 教授 (40422521)
奥山 広規 徳山工業高等専門学校, 一般科目, 准教授 (50852365)
佐々木 淑美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (60637883)
佐々木 健 京都大学, 法学研究科, 教授 (70437185)
山田 順 西南学院大学, 国際文化学部, 准教授 (90352202)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
|
キーワード | 古代ローマ / 転用 / 城壁 / オスティア / ローマ / ポンペイ / ヘルクラネウム / コンクリート / 人工地盤 / ヴォールト / ウィトルウィウス / 庶民住宅 / 壁画 / グラフィティ |
研究開始時の研究の概要 |
都市=庶民生活の場ととらえ、以下の観点から研究を進める。食)外食が主流であった古代ローマの食生活について、タベルナやテルモポリウムに加えて、住宅内にも設置されたクリーナ(台所)の特定を進める。娯楽)劇場と浴場が対象となる。ここでは数百人以上を収容するような常設の劇場ではなく、住居内に設置された集会室、あるいは小型の浴場をターゲットにする。宗教)囲壁周辺、とくにオスティアにおいて、門外の墓群と居住との混在について検討する。法)様々な法的告示、命令と実際の遺構を関連付ける、とくに違法性を検討することにより、法社会学の立場から都市生活を読み解く。
|
研究実績の概要 |
ポンペイ、ヘルクラネウム、オスティアの三遺跡について、アフターコロナの状況、とくに遺跡の管理状況について確認する必要があり、9月に渡伊し、現地を確認するとともに、遺跡管理者との今後の研究の進め方について再検討を進めた。結果、コロナ以前の状況にほぼ復旧しているものの、管理事務所におけるテレワークが定着したため、現地での確認が必要な調査については許可までにやや時間を要することが判明した。ただし、許可内容については、コロナ前とほぼ同じ内容で承認された。ただし、滞在中に調査を開始することができなかったため、年度末の3月に再び渡伊し実測調査を行った。 ポンペイにおいては、西部の周縁部、とくに前1世紀には機能していたと思われる城壁、あるいは囲壁と一体化あるいは超えて住居を形成している区画、VII.16の斜面上構築物の調査を行った。この区画は人工地盤の上に形成されたと考えられ、その構築技術の練度を詳細にすることはウィトルウィウスが示した建設技法の変容、応用について重要な資料を提供してくれる可能性がある。とくに18番および20番の間口につながる地下(斜面下)遺構は、ポンペイでは地上の構築物にはほとんど見られないヴォールト構造が観察される。ボールト構造については、いわゆる「知っているけれども使わない技術」という解釈が可能であり、調査結果の分析が待たれる(この地区は第二次大戦中に爆撃を受けた箇所に近接しており、修復の可能性も否定できず、資料を精査する必要がある)。ヘルクラネウムにおいても、ポンペイと同様、海岸に向かって下る斜面地に形成された人工地盤であるII.1区について下部構造を実測した。ポンペイと同じくヴォールト構造が確認され、その建設技法についてもヴィトルヴィウスの記述と異なることが確認された。ただし本地区も18世紀おわりの最初期の発掘であり、復元、修築の可能性を精査する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地遺跡管理者の都合により、実測調査が年度末となったため、年度内の報告、成果発表がかなわなかった。ただし、調査内容については、予測以上に大きな成果があり、詳細に分析可能な良好なデータが収集できた。あわせて、現地の遺跡管理者のとの協力関係の再構築することができた。ポンペイにおいては、食堂の分布を精査する上で、調理あるいは提供カウンターに類型が存在する可能性が確認され、今後精査を進める。なお、ローマで予定していた調査については、調査許可の審査が年度内には間に合ったものの、調査を実施するまでにいたなかった。ただし、城壁(囲壁)に付随する構築物の踏査および簡易的な実測を行うことができ、2023年度の本格的な調査に向けて準備が整ったといえる。加えて、9月に開催されるEAA(ヨーロッパ考古学っ協会)の国際学会での博士後期課程学生によるプロシーディング2編、および7月にアテネで開催されるATINER(アテネ教育研究研究所)が開催する建築に関する国際会議での若手助教による論文発表1編が採択されたことを勘案し、初年度には成果発表には至らなかったものの(研究報告はあり)、さらにポンペイの食に関する新たな手がかりが得られたことから、概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍による影響がほぼなくなると予測される2023年度においては、引き続きポンペイ、ヘルクラネウムでの調査を継続して行う。2022年の都市周縁部、および沿岸部での人工地盤構造の調査によって予測を上回る結果であったため、同様の特性を持つ構造物を中心に調査を進める。ヴィトルヴィウスが記述しない技法については、その存在を確定した上で、分析・評価を行っていく。その成果をもとに、オスティア、すわなちポンペイ、ヘルクラネウムから50年から100年後のローマ建築について、その技法の変遷、変容について明らかにするため、いくつかの調査地点を絞りつつある。ローマにおいては、城壁あるいは囲壁に附属する構築物の調査、とくに軍事利用から転用の可能性について、さらには地盤の変化について、調査を通じて具体的に分析をすすめていく。また、新たに確認されたポンペイの食堂カウンターの類型化については、2023年度に追加調査(実測を含む)を行い、学会などでの研究発表につながるべく精査を進める。2023年度は、調査のターゲットを絞りつつ、テーマとしては都市史を視野に入れつつ、生活の場としての都市の実像を明らかにすべく、より詳細かつ広範な調査を進めていく。
|