研究課題/領域番号 |
23K22966
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補助金の研究課題番号 |
22H01697 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24020:船舶海洋工学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
川村 恭己 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50262407)
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研究分担者 |
岡田 哲男 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10753048)
早川 銀河 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 技術職員 (80939158)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 疲労試験 / ホイッピング / 疲労き裂進展解析 / モニタリング / 統計モデル / 疲労強度 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、コンテナ船の急速な大型化に伴い、従来考慮していた波浪荷重に加えて、ホイッピングにより弾性振動成分が重畳することによる強度に対する影響が懸念されている。本研究では、モニタリングで得られた計測データを用いて、実際のホイッピング現象の統計的性質を明らかにするとともに、疲労強度への影響の合理的な評価手法の検討を行う。具体的には、ホイッピングを考慮した疲労き裂進展試験を行うとともに疲労き裂進展シミュレーション手法を開発し、合理的かつ不確定性を考慮した疲労強度評価手法を検討する。
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研究実績の概要 |
本年度の第一の目標であるホイッピングの統計モデル構築に関しては、コンテナ船の縦曲げ応力の計測データの解析を行うことにより、特定の海象状態における「ホイッピング発生確率」や「ホイッピングの大きさ」の統計モデルを提案してきた。本年度は、これらのモデルを定式化するとともに(論文投稿中)、提案した統計モデルを用いてホイッピングが重畳している荷重履歴を生成する手順を提案した。これにより、従来困難であった、任意の海象に対して実現象を模したホイッピング荷重履歴の生成が可能となった。本年度の第二の目標であった、疲労試験に関しては、比較的単純な重畳荷重履歴の疲労試験を実施し、ホイッピングの特徴量(ホイッピングの大きさ、波浪成分の大きさ、ホイッピング間隔)の疲労寿命に対する影響について考察し、レインフロー法による疲労被害度の評価が危険側になることを観察してきたが、本年度は、前述した統計モデルを用いてホイッピングが重畳している荷重履歴を用いた疲労試験を行い、同様な結論となることを確認した。ところで、これらの観察結果を理論的に説明するためには、疲労試験時のき裂先端のRPG荷重を同定し、RPG荷重に基づいた疲労き裂進展則と比較することが重要となる。本年度当初は、RPG荷重の同定法として、従来手法(微分法)を用いていたが、本年度のFEMによるき裂進展解析を用いたRPG荷重の同定法の妥当性の検証により、微分法では十分な精度のRPG荷重の同定が行えないことがわかった。そこで、本研究では、新たに接線法によるRPG荷重同定手法を提案し、その有効性の検討を行った。今後、実験でのRPG荷重同定結果に基づいた疲労寿命評価と、開発中のき裂進展シミュレーションシステム(CP-System)による解析結果を比較することにより、シミュレーションの妥当性の検証が可能となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の第一の課題であるホイッピング現象の統計モデルの構築に関しては、8600TEUコンテナ船の計測データを用いた統計モデルの構築が完成した一方で、14000TEUコンテナ船の計測データを用いた解析はまだ完了していない。しかしながら、統計モデルの確立と、それを用いた任意海象におけるホイッピング荷重の生成手順を提案することができたことから、研究はおおむね順調に進展していると評価する。さらに、疲労き裂進展試験においても、提案したホイッピング荷重の生成手順により得られた荷重履歴を用いた疲労試験を実施し、ホイッピングの疲労寿命に対する影響をある程度評価することができた。また、疲労試験におけるRPG荷重の同定については、従来の微分法では同定が困難であることがわかったため、弾塑性FEM解析を用いた考察に基づいて、新たに接線法によるRPG荷重の同定法を提案することができた。よって、全体としては、おおむね順調に成果が得られていると考えている。き裂進展シミュレーションの検証に関してはやや遅れているが、RPG荷重の同定について目途がついたので、今後き裂進展シミュレーションシステム(CP-System)の妥当性の検証に進んで行けると考えている。以上のように、研究全体としては、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策を以下に示す。 [1]ホイッピングの統計モデルに関しては、解析が完了していない14000TEUコンテナ船の計測データの解析を継続して行うとともに、それに基づく統計モデルの構築を行う。また、前年度までに構築した8600TEUの統計モデルとの比較を行い、提案したモデルの妥当性について論じる。 [2]疲労試験に関しては、R6年度は本学の建物の改修工事があるため疲労試験を行うことができないが、前年度までに実施した弾性振動成分が重畳する荷重履歴や、実際のホイッピングを模した疲労試験の結果に基づいて、ホイッピングの疲労寿命に対する影響を合理的に考察する。具体的には、R5年度に提案した接線法によるRPG荷重の同定法を、実際の疲労試験結果に適用する手順を確立するとともに、計測されたRPG荷重を用いて疲労試験結果の妥当性を検証し、ホイッピングの疲労寿命に対する影響の定量的な評価を行う。なお、RPG荷重を用いた疲労寿命の評価だけでなく、レインフロー法やスペクトル法による疲労被害度の評価法の有効性についても検証する。 [3]弾塑性FEM解析を用いた疲労き裂進展解析を行い、実験と比較することにより、シミュレーションモデルの妥当性を検証する。特に、実際のホイッピングのようなランダムに弾性振動成分が重畳する場合のき裂先端の塑性挙動(RPG荷重)の同定は、従来は困難であった。そこで、FEM弾塑性解析を用いてランダム荷重下でのき裂先端の塑性挙動の解析を行い、RPG荷重の評価手法の妥当性を検証する。 [4]実験によるRPG荷重の同定結果と、き裂進展シミュレーション(CP-System)におけるRPG荷重の評価結果を比較することにより、CP-Systemの妥当性についても検討していく。
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