研究課題/領域番号 |
23K23002
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補助金の研究課題番号 |
22H01734 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 正太郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (70346815)
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研究分担者 |
京谷 孝史 東北大学, 工学研究科, 教授 (00186347)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 斜面崩壊 / 土砂流動 / 混合体理論 / 限界状態理論 / 弾塑性構成則 / 不飽和 / 動的解析 / 不飽和土 / 弾塑性 / 有限変形 / フェーズフィールド法 / 数値解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,不飽和土が飽和土化し不安定化する過程を混合体理論に基づいて記述するとともに,地盤材料の剛性低下挙動を限界状態理論を拡張した構成則によってモデル化する.数値離散化手法として粒子法などを活用し,斜面崩壊後の土砂流動を再現可能なシミュレーターを開発する.開発した数値シミュレーターを用いて,土石流の諸特性を把握するとともに,人的被害を抑制するための対策について検討する.
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研究実績の概要 |
不飽和土を三相混合体としてモデル化すると,高飽和領域で過剰な空気圧変化が計算され,安定的に解析ができないこや,有効応力の定義に任意性が残ることなどを背景に,間隙水と間隙空気を一括して間隙流体として扱い,不飽和土を二相混合体として近似する解析手法を構築してきた.これにより,全領域において間隙流体が存在するため,飽和土の水~土連成解析と同様に安定的な計算が可能となる.さらに,間隙水圧と間隙空気圧の区別がなくなることにより,有効応力式の定義の問題も同時に解決できる.前年度までは,土骨格の変形は無視し,不飽和土中の間隙流体の挙動だけを計算対象としてきたが,本年度は,不飽和土の土骨格の力学を有限変形理論に基づいて記述し,さらに有限要素解析コードを開発した.このコードを用いた計算により,上記の問題点が確かに解決できることを示した.開発した不飽和土の力学モデルは,限界状態理論に基づき飽和土を対象にして開発した有限変形Cam-clay modelを,飽和度の低下に応じて剛性や強度増加させる仕組みを有しており,不飽和土を水浸させた際に水浸コラプスや水浸クリープを表現できるモデルとなっている. 上記の取組みと並行して,数値的に安定で精度の高い陰的な動的解析手法の開発を試みた.陰的Runge-Kutta法を用いた動的な有限要素解析スキームが系の運動量を保存することを示した上で,数値計算上においてもエネルギー保存/散逸特性が満たされるように応力更新アルゴリズムを構築した.この際,陰的Runge-Kutta法を一貫して用いることで,ArmeroによるEDMCと同型のスキームが自然に得られることを示した.さらに,数値解析例を挙げ,他の動的解析手法よりも高い計算精度や,数値的安定性および収束性が得られることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに構築した間隙空気と間隙水を一つの間隙流体としてフェーズフィールド法を活用しながら計算する手法を,今年度は有限変形理論に基づいて土骨格の運動まで加味して計算できるように理論を拡張した.これにより,不飽和土を土骨格と間隙流体から成る二相混合体として扱う理論の基礎がほぼ完成したと言える.この理論を有限要素解析コードに実装し,三相混合体理論が抱える高飽和度領域やほぼ乾燥した領域において示す数値的不安定性を解決できることを示したことは,確かな前進であると言える. また,これまで安定性や精度に課題が残されていた動的解析を,運動量保存則やエネルギーの保存・散逸特性などの力学的諸法則を満足するように改良したことによって,既往の解析手法に比べて数値安定性や計算精度が向上することを示したことも次へ繋がる確かな進歩であったと言える. さらに,斜面流動解析を視野に粒子法の一つであるISPH法の計算にも着手した.今年度は非圧縮性粘性流体の数値解析コードを開発し,混合問題を対象に実現象の諸特性を計算で再現できることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度に開発した不飽和土の弾塑性モデルの再現性能を検証する.そのために,標準圧密試験装置や三軸圧縮試験装置を用いて不飽和土の水浸コラプス現象や水浸クリープ現象に関する実験を行った上で,開発したモデルによりその再現を試みる.供試体への間隙水の浸潤速度や変形量が定性的にも定量的にも表現可能であるか確かめ,必要に応じたモデルの改良や,パラメータの設定方法について議論する. また,前年度に開発した不飽和土用の有限要素解析コードに,各種力学法則を考慮した動的解析手法を適用することによって,不飽和土を対象にした連成計算においても,数値的な安定性の向上が見られるか検証する.過去の計算事例では,既往の動的解析スキームでは,地震応答解析を行った際に,不自然な高周波成分の発生が認められたが,提案する動的解析手法ではそのような不自然な挙動が発生しないことが期待される. さらに,非圧縮性流体を対象に開発したISPH法の解析コードを固体を対象に計算が行えるように改良するとともに,二相混合体理論を適用した不飽和土の解析を視野に入れた計算手法の確立を目指す.また,ISPH法の計算精度を高めるために,粒子シフティングや勾配モデルの改良も試みる予定である.
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