研究課題/領域番号 |
23K23020
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補助金の研究課題番号 |
22H01752 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 |
研究代表者 |
河田 恵昭 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, センター長 (10027295)
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研究分担者 |
橋冨 彰吾 名古屋大学, 減災連携研究センター, 研究員 (20839089)
寅屋敷 哲也 早稲田大学, データ科学センター, 講師(任期付) (50758125)
井上 寛康 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (60418499)
奥村 与志弘 関西大学, 社会安全学部, 教授 (80514124)
中林 啓修 日本大学, 危機管理学部, 准教授 (90398644)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 相転移 / 南海トラフ地震 / 長期停電 / 人的被害 / 経済被害 / 電力供給 / 電力需要 |
研究開始時の研究の概要 |
将来南海トラフ地震の発生により長期間の停電や電力不足が生じる恐れがあり、大規模災害における電力被害に伴う人的・経済的被害の拡大を軽減することが課題となっている。そこで、本研究では、南海トラフ地震による電力供給サイドのリスク評価と電力需要サイドの停電対応力の評価を行い、人的・経済的被害の抑制のために必要な対策を提言することを目的とする。本研究においては、電力被害を誘因として発想を転換する点、「相転移」概念を用いて新たな視点から対策を提言する点に独自性がある。
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研究実績の概要 |
2022年度は次のAーEの項目について研究を実施した。 A)電力供給サイドのリスク評価:令和4年福島県沖を震源とする地震による東北および東京エリアの発電所の電力需給逼迫状況を可視化し、今後発生し得る大規模災害に伴う電力需給逼迫の影響の軽減に向けた論点整理を行なった。また、60ー50Hz間融通を担う送電鉄塔の位置情報を作成し、富士山溶岩流可能性マップ等と突合し、これらの送電線が被災するシナリオを確認した結果、現在進められている周波数変換施設の増強計画が、ハザードの内容によっては効果がないことが明らかとなった。 B)電力需要サイドのリスク評価:令和元年台風第15号における千葉県の停電状況と県内各消防本部の熱中症搬送件数との関係性として分析し、長期停電による季節性リスクの可能性を検討した。 C)長期停電の影響(人的被害):停電の継続期間と関連死発生率を用いて、個々の巨大災害が長期停電によって相転移が発生したと言えるかどうかを判定できる可能性があることを示した。また、循環器系疾患、呼吸器系疾患による関連死が、避難生活の長期化に伴う関連死発生率を増大させ、被災社会を質的に大きく変化させる要因であることを明らかにした。 D)長期停電の影響(経済被害):東日本大震災によって引き起こされたサプライチェーンの混乱に起因する経済的損失を再現する上で、従来のモデルと異なり、事業所レベルでのモデルを利用し、シミュレーションにおいて複数の点の改善を行なった。その結果、経済的振る舞いを再現するための能力が大幅に改善されることが確認された。 E)相転移を回避する対策の提言:相転移を回避するための対策を提言するために、相転移を災害の実証研究に適用可能にするためのモデル化に向けた予備的考察として、相転移を成立させる形、相互作用そして運動という3つの要素を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗が遅れている主な理由としては、2022年度中に実施予定であった事業所を対象としたアンケート調査について、研究メンバー間での協議を重ねた結果、当初想定していた質問方法の変更が必要になり、調査の設計に時間を要したことが大きい。研究遂行上、有用性の高いデータを得るために、ヒアリング調査等も踏まえて慎重に多様な観点から検討した上で質問内容を検討することが不可欠のため、調査の実施を遅らせることとした。 本研究は、月に1回研究メンバーで研究会を実施しており、進捗状況の相互共有、方針の共有等を定期的に図っており、その他の研究項目についての目立った遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策についてAーEに分けて記述する。 A)電力供給サイドのリスク評価:これまで整理していた東日本大震災や令和4年福島県沖地震の火力発電所の被害と復旧期間のデータベースに、令和6年能登半島地震で被災した火力発電所のデータを加えて、大規模災害後の発電可能量の評価手法を更新する。送電網に関しては、中国・九州地方の500k V送電鉄塔の立地と土砂災害の関係について検討し、令和6年能登半島地震における送電・変電設備の被害の関係の調査、西日本における500k V送電網に脅威となる断層帯の抽出を行う。 B)電力需要サイドのリスク評価:令和6年能登半島地震における被害状況として、主に広域での「道路寸断」「水道途絶」「通信途絶」が挙げられ、停電の影響も含めて、これらの事象の相互関連による被災地域の様々な課題について整理を試みる。 C)長期停電の影響(人的被害):東日本大震災における災害関連死の発生状況が他県と異なる福島県のデータを切り離し、また、気仙沼市の事例を用いた関連死犠牲者の生活拠点の実態等について分析する。 D)長期停電の影響(経済被害):日本の実際のサプライチェーンネットワークデータを用いたエージェントシミュレーションによる研究を継続して実施し、南海トラフ地震の半割れを仮定した新たな推定を行う。また、南海トラフ地震において長期の計画停電が実施されることが予想される近畿地方の製造業を対象としてアンケート調査を実施し、相転移の抽出を試みる。 E)相転移を回避する対策の提言:人的被害については、関連死の発生に着目した停電に伴う相転移発生過程を整理し、相転移の抽出を行う。また、経済被害については、停電に伴うサプライチェーンの質的変化を相転移と捉え、その抽出を行う。以上を踏まえて相転移を回避するための対策を検討する。
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