研究課題/領域番号 |
23K23025
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補助金の研究課題番号 |
22H01757 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白土 優 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70379121)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 磁性材料 / スピントロニクス / 交差相関 / 磁性・スピン材料 / 交差相関材料 / 反強磁性 / 薄膜 / 分極 / ダイナミクス |
研究開始時の研究の概要 |
近未来社会では、自動車の自動運転や IoTを始め、これまで以上に多くのデジタル情報を利用する。また、情報処理デバイスの消費電力の上昇が社会問題になっていることは周知の事実である。既存デバイスは、電子の電荷を利用したデバイスが主であるが、本研究では電荷と磁性を相関させた交差相関特性を利用することで、既存デバイスを凌駕する革新的材料の開発を目指している。特に、本研究課題では交差相関材料の分極(デジタル情報の0,1に対応)の反転プロセスを明らかにする。
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研究実績の概要 |
磁性材料には磁石になる強磁性材料のほか、磁石にはならないが超高速動作や超高集積が可能とされる反強磁性材料と呼ばれる材料がある。反強磁性材料は、強磁性材料のようにN‐S極が現れないため、従来は制御不可能な材料とされてきた。本研究課題では、交差相関と呼ばれる電界と磁性の相互作用を利用することで、反強磁性材料を制御可能な材料として発展させ、また、その磁性を超低消費電力かつ超高速駆動の原理実証を目指すとともに、そのメカニズムの解明を目的としている。この手法は、従来手法である電流を用いる方法(動作時の消費電力が大きい)に対して、電流を必要としないため原理上飛躍的な低消費電力が可能になることが期待できる。2022年度は、交差相関材料の一つであるCr2O3薄膜に対して、薄膜の膜厚を結晶性を保ったまま15ナノメーター以下まで低膜厚化させることで、界面の磁化(N‐S極の向き)を制御できること、ならびに、電界によってその制御効率を増強できることを明らかにした。その原理が交差相関性によって定量的にも説明できることも明らかにしている。さらに、放射光を用いた独自計測技術を駆使することで、反強磁性材料の磁化(N‐S極の向き)の向きを直接的に可視化し、その反転過程を明らかにすることにも着手している。これらの成果は、国内の春秋講演大会、国際会議でも報告しており、2023年度に開催予定の国際会議での招待講演も決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cr2O3薄膜の膜厚を低下させることで、界面の効果を積極的に利用した新規な手法での反強磁性磁化の反転手法を確立させた。また、反強磁性磁化の反転に必要となる外場(磁場)を交差相関による反強磁性磁化(スピン)の制御を達成しており、現時点での試算では、従来手法と比較して1/100以下の低消費電力駆動が可能になっており、研究目標の達成に向けて、着実に成果を上げている。また、反転メカニズムの界面に極めて有効となる、分極状態の可視化にも着手し、放射光を利用することでプレリミナルな成果として、この手法による分極状態の可視化、反転状態の可視化が可能であるとの知見も得ている。これらの成果は、各種講演大会(国内、海外、ともに招待講演あり)で報告するとともに、学術論文への投稿も着実に進めている。現在は、これらの成果をもとに、さらなる低エネルギー駆動が可能な素子構造の開発、高速駆動に向けた計測技術と材料設計を進めている段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の成果として、交差相関材料であるCr2O3薄膜を用いて、界面効果による磁場応答機能、ならびに、その反転効率の電界による制御を実現している。2023年度は、これらの成果を基盤として、さらなる低エネルギー駆動が可能になる素子構造の設計(界面構造の最適化など)、高速制御に向けた素子構造と検出技術の開発を進めている。これらのついては、当初計画が順調に進んでいることから研究計画に変更はない。 一方、上記の成果を上げる過程で同時に、格子制御による動作温度上昇の可能性についても、第一段階の成果を得た。これらをもとに、指導原理を見出しつつあることから(論文あり)、2023年度以降は、動作温度情報に向けた試みも同時に進める予定である。 得られる成果の情報発信として、国内外の講演大会、学術論文のほか、社会的インパクトを勘案したアウトリーチ活動も進めていきたい。
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