研究課題/領域番号 |
23K23028
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補助金の研究課題番号 |
22H01760 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
連川 貞弘 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (40227484)
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研究分担者 |
井 誠一郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究センター, 主幹研究員 (60435146)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 粒界 / 粒界偏析 / 転位 / 力学特性 / 粒界性格・構造 / 粒界磁性 / ナノインデンテーション / 反応場 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは,これまでに粒界幾何学を系統的に制御した「双結晶」を用いてナノスケルでの局所力学特性の評価を行い,塑性変形に対する粒界の役割(粒界-転位相互作用)に関わる力学因子の定量化に成功した。本研究はこれらの成果を踏まえ,実用材料でしばしば問題となる固溶元素や不純物元素の粒界偏析に着目し,粒界-転位相互作用に及ぼす粒界偏析の影響を,粒界偏析種(粒界脆化元素,粒界強化元素,侵入型元素,置換型元素)と関連付けて検討するとともに,偏析粒界における電子状態,粒界エネルギー,磁気特性,弾性特性の変化などの視点から,力学試験により見出された粒界-転位相互作用と粒界偏析との因果関係を明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和5年度に得られた主な研究成果は下記の通りである。 1.粒界および粒界近傍の局所力学特性に及ぼす粒界面方位の影響: 粒界偏析は粒界の相対方位差ばかりでなく粒界面方位にも依存することから,R5年度は,粒界局所力学特性に及ぼす粒界面方位の影響を明らかにするために,<110>回転軸に関してΣ3およびΣ9の対応方位関係にある「ねじり粒界」と「対称傾角粒界」を有するFe-3mass%Si合金双結晶についてナノインデンテーション試験を行い両者の粒界局所力学特性を比較検討した。転位発生の臨界応力と関連するfirst pop-inは,Σ3およびΣ9粒界のいずれにおいてもねじり粒界の方が低い応力で発生することが見出された。一方,隣接粒への塑性変形の伝播挙動を反映したGB pop-inはΣ3粒界ではねじり粒界と対称傾角粒界では大差無いのに対し,Σ9粒界では傾角粒界の方がねじり粒界よりも低い荷重でGB pop-inが発生することが明らかとなった。今後,R4年度の結果も踏まえ,粒界偏析量の異方性,すべり系の連続性などの観点から見出された結果の起源について検討する。
2.粒界ー転位相互作用における物理的反応場としての粒界磁性の評価: 昨年度に引き続きSTEM-EELSの取得を行った。対象試料は、<110>を共通回転軸とした{221}Σ9 Fe-Si双結晶である。Fe のL端を対象としたスペクトラムイメージングの取得そのものの条件には見通しが立った。しかしながら,原子分解能など高い空間分解能を要する環境でのスペクトラムイメージング取得については、条件設定を見直す必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒界幾何学と粒界偏析を制御した双結晶を用いた実験研究はほぼ予定通り進行している。これまで粒界脆化元素に着目した研究を行ってきたが,R6年度からは粒界強化元素の粒界偏析の影響について検討を始める予定である。また,粒界ー転位相互作用の物理的反応場と考えている粒界磁性(粒界磁気モーメント)の解析の目処はたちつつある。 一方,予定していた偏析粒界モデルに対する分子静力学・分子動力学計算による粒界-転位相互作用,転位生成・増殖のシミュレーションについては,昨年度より海外の研究協力者と検討を始めたところであるが,進展が多少遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.粒界および粒界近傍の局所力学特性に及ぼす粒界偏析の影響: 令和4年度,5年度に実施した方位制御したFe-SiおよびFe-Si-P合金双結晶を用いた実験的研究を継続して行い系統的研究としてまとめる。さらに,R6年度からは,粒界強化元素の粒界偏析の影響について検討を行い,これまでに得られた脆化元素であるPの偏析の影響と比較検討する予定である。現在,ボロンあるいは炭素を数100ppm添加したFe-Si-M (M = B or C)双結晶を育成するための素材の準備を行っており,準備でき次第,方位制御した双結晶を育成する。育成した双結晶を用いてナノインデンテーション試験を行い,R4-5年度の成果も踏まえて,粒界ー転位相互作用に及ぼす粒界偏析の影響に関する総合的な理解を目指す。 2.粒界ー転位相互作用における物理的反応場としての粒界磁性の評価: Spectrum Imaging(SI)取得の最適化を図るとともに、幾何情報が既知の双結晶を用いて粒界近傍のSI取得に取り組む。加えて、マッピングとして取得した一連のスペクトルを磁気モーメントとして評価するための解析手法を検討する。 3.粒界ー転位相互作用における化学的・物理的反応場としての粒界弾性率の評価: 第一原理引張試験により粒界のヤング率を評価し,粒界-転位相互作と粒界偏析に起因する粒界弾性率変化との因果関係を検討する計画であったが,R5年度の予備的実験によりナノインデンテーション試験により粒界の弾性率を実験的に評価できる可能性が得られたこと,さらにSPMのタッピングモードを用いてナノスケールの局所領域の弾性率を評価できる方法が開発されたことから,実験的手法で粒界のヤング率を評価する方向で検討している。
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