研究課題/領域番号 |
23K23038
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補助金の研究課題番号 |
22H01770 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
脇谷 尚樹 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (40251623)
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研究分担者 |
川口 昂彦 静岡大学, 工学部, 助教 (30776480)
坂元 尚紀 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (80451996)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | スピノーダル分解 / スマートウィンドウ / 薄膜 / シミュレーション / 二酸化バナジウム / 二酸化チタン |
研究開始時の研究の概要 |
ガラス基板上にc-軸配向のTiO2-VO2薄膜を周期20~30nmでスピノーダル分解させることができれば急峻な相転移を維持してVO2の金属絶縁体転 移温度(Tc=68℃)を室温まで低下させることが可能で、スマートウィンドウができると予想している。ガラス基板上のc-軸配向薄膜はCdOバッ ファー層の導入で、スピノーダル分解周期の制御はダイナミックオーロラPLD法により実現を目指す。また、フェーズフィールド法シミュレー ションにより、TiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解の動力学の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、(a)TiO2(001)単結晶基板上への結晶性の高いTiO2-VO2薄膜の作製、(b)TiO2-VO2薄膜の相転移温度を精密に測定するための測定方法の確立、および(c)フェーズフィールド法によるTiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解挙動の解明を行うための前段階としてのSr過剰組成SrTiO3薄膜におけるスピノーダル分解の計算機シミュレーションを実施した。(a)ではTiO2単結晶基板をフッ酸処理した後、加熱する超平坦処理を行った後、TiO2バッファー層を形成することで結晶性の高いTiO2-VO2薄膜が得られることが明らかになった。(b)では4探針測定器を改造した定温乾燥機中に設置することで抵抗率の温度依存性の測定法を確立した。実際、この装置を用いてVO2バルクの金属絶縁体転移温度を測定したところ68℃となった。この温度は報告されている値と一致することを確認した。さらに、FT-IRの光路中に自作のアタッチメントを挿入することでVO2バルクと薄膜の赤外光の透過率の温度依存性測定法も確立した。(c)ではダイナミックオーロラPLD法による薄膜の作製時には基板に対するイオン衝突が起きている点に注目し、フェーズフィールド法による計算の際に、基板表面にから膜厚方向に減少する過剰エネルギーを導入してシミュレーションを行った。その結果、自発的な超格子構造の生成を再現させることに成功した。この考え方はTiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解の計算機シミュレーションを行う際にも重要なものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)バッファー層の導入による、ガラス基板上へのc-軸配向スピノーダル分解TiO2-VO2薄膜の作製、(2)スピノーダル分解周期の制御によるTiO2-VO2薄膜における相転移温度の室温への低下とスマートウィンドウ特性の発現、(3)フェーズフィールド法による、ガラス基板上および異なる面方位の単結晶基板上に作製したTiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解における微構造形成過程の統一的解明の3点であるが、(1)についてはまだ着手していない。これは、ガラス基板上にc軸配向スピノーダル分解TiO2-VO2薄膜を作製するためにはまず単結晶基板上で結晶性の高い薄膜が得られる成膜条件を確立する必要があると考えられたためである。この成膜条件はほぼ確立されたため、ガラス基板上への薄膜作製の準備は整っている。(2)の転移温度の低下とスマートウィンドウ特性発現についてはともに測定装置が完成しており、データが出つつある。(3)については、TiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解を計算するためのベースとなるSr過剰SrTiO3薄膜におけるスピノーダル分解の計算機シミュレーションの研究の学術誌への掲載が決まっている。これらのことから、全体として順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は(1)についてはガラス基板上に結晶性の高いTiO2-VO2薄膜をc軸配向させることが可能と考えているCdOバッファー層の導入を実施する。c軸配向薄膜が得られなかった場合にはZnOなど他のバッファー層の導入も実施する予定である。(2)については引き続き、抵抗率と赤外線の透過率の温度依存性におよぼす超格子周期やひずみの影響の解明を行う。これらに加えて、高温X線を用いてVO2およびTiO2-VO2粉末および薄膜における金属絶縁体転移における構造変化の温度依存性も明らかにする。(3)についてはTiO2-VO2の結晶構造の異方性をフェーズフィールド法に導入した計算機シミュレーションを行う。これまでのシミュレーションは立方晶のチタン酸ストロンチウムをベースにプログラムを作っていたため、弾性コンプライアンスに異方性は考慮していなかった。TiO2-VO2は正方晶(高温相)であるため、弾性コンプライアンスの異方性を考慮する必要がある。また、この異方性の導入により、基板と薄膜間の格子定数のミスマッチひずみがスピノーダル分解におよぼす効果を明らかにすることができると期待される。
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