研究課題/領域番号 |
23K23039
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補助金の研究課題番号 |
22H01771 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹羽 健 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40509030)
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研究分担者 |
劉 崢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (80333904)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
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キーワード | 超高圧合成 / 窒化物セラミックス / ダイアモンドアンビルセル / 多窒化物 / セラミックス / 窒化物 / 硬質材料 / 超高圧力 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究開始時の研究の概要 |
SiN2は2017年に申請者の所属する研究グループが合成に成功した,全く新しい窒化物セラミックスである.合成には超高圧環境が必要であるが,常圧下に回収することができるので各種の分析手法が適応可能である.また,その結晶格子の体積弾性率は既存のSi3N4より高く,硬質性セラミックスとしての応用が期待される.しかし,多結晶焼結体の特性を詳細に理解は乏しい.そこで本研究では,SiN2のバルク焼結体を合成し,透過電子顕微鏡による界面の原子配列の直接観察とナノインデンテーションによる押し込み硬さ測定から,新規に創製されたSiN2の原子およびバルクの超硬質性の解明し,新しい材料科学を展開を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,単結合窒素を有する二窒化物(AN2)を超高圧下で合成し,その粒界・界面における原子配列と硬質性の相関を解明することを目的とする.具体的には,共有結合性につよい14族元素窒化物や常圧下に準安定的に回収可能な遷移金属の二窒化物を対象とする.研究初年度は物質合成環境の整備に注力し,既に当研究室に設置されている赤外レーザー加熱光学系に高速で温度測定が可能な輻射分光測温システムを組み込んだ.2年目はSiN2の合成に向けた実験条件の最適化および合成手法の新たな開発に取り組んだ.シリコンと窒素の化合物を合成する際は,反応系にSiと窒素のみが存在することが望ましい.一方,常温常圧で存在可能な窒化珪素はSi3N4であるため,目的の多窒化物を生成しようとする際には過剰に窒素を加えた系で反応させる必要がある.しかしながら,シリコンと分子状窒素を超高圧装置に充填し,合成を行うには高い実験技術が必要になる.そこで固体窒素源を用いた新しい合成手法の開発に着手した.具体的には常圧下における窒化物の合成や結晶育成に用いられる塩化アンモニウムを,超高圧下におけるSiN2合成の窒素源として用いることを試みた.水素と塩素が反応系に残るが,予備実験の段階でSiN2の合成を示唆する結果が得られた.その一方,実は塩化アンモニウムの超高圧下における振る舞いはよくわかっていない.特に物質合成に果たす役割は未知である.本実験では合成経路や保持時間が最終生成物に与える影響も調べた.その結果,特定の条件でSiN2が合成できることがわかった.これは塩化アンモニウムの高圧高温における状態が物質合成に影響を与えていることを示唆しており,その知見は今後の物質合成に大いに活用できるものと思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,シリコンと窒素の直接反応というより直接的な手法でSiN2のバルク焼結体の合成を目指した.しかしながら,実験技術的な困難もあり研究方針を転換した.特に窒素源を別の固体窒素源に変更したことで,その準備や結果に関する考察に時間を要した.実験では,この新たな固体窒素源を取り入れた合成手法により,より効率的なSiN2の合成を期待したが,実験を進めるうちに当初予想していなかった固体窒素源自身の圧力による構造や分解挙動が観測され,それがSiN2の合成と関わっているかどうかの検証に時間を要した.これは過去の研究では報告がない萌芽的な研究であり,その後の展開の検証にも時間を要した.固体窒素源を用いたSiN2の合成自身には成功しているので,最終年度では研究目的であるSiN2のバルク体合成に向けた合成手法の最適化に対応するとともに,固体窒素源自身の高圧下における振る舞いを詳細に解析する予定である.一方で,当初想定していた方法であるシリコンと窒素の直接反応実験も,不純物の混入を最大限防げる点や高温窒素流体を用いた良質結晶の焼結体合成が期待される点など,非常にシンプルかつ有用な手法である.そこで,問題点を改善することでこの従来手法を使った合成も継続し研究を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
現時点の大きな方針として,1)固体窒素源を用いたSiN2の合成,2)固体窒素源自身の圧力応答性の評価,3)シリコンと窒素を用いた合成手法の最適化,の3つが目的に対する取り組み内容となる.まずは次年度の早い段階で固体窒素源を用いた合成手法に目処を付ける.焼結体SiN2の合成以外にも,固体窒素源の超高圧高温における振る舞いを明らかにする予定である.シリコンと窒素の直接反応実験も継続して行う予定であるが,本研究では硬質性評価に適した試料として合成する必要がある.そこで平滑で強固な単結晶酸化物基板上に,Siを超高圧高温下で窒化して育成したSiN2多結晶体薄膜の合成を試みる.具体的にはサファイア基板上に蒸着したシリコン膜の窒化を50 GPa以上の圧力で行う予定である.合成物はラマン散乱測定,XRD測定,および前述したナノインデンテーションによって評価する.また電子顕微鏡による界面や粒界の観察も分担者である劉博士と連携して進めていく.例えばTiO2の高圧相の界面や欠陥導入組織の観察に協力頂いており,うまく試料が合成および回収できれば,ナノサイズの解析および分析からその素性が明らかになる.研究成果は関連学会で発表し,投稿論文としてまとめる予定である.
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