研究課題/領域番号 |
23K23051
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補助金の研究課題番号 |
22H01783 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
松波 雅治 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30415301)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
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キーワード | 熱電材料 / 重い電子系 / 光電子分光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,強相関電子系が示す異常な熱電特性の起源を特定し,これを制御することで新しい高性能熱電材料を開発することを目的としている.強相関電子系においては,優れた熱電特性を示す物質が存在するものの,その起源が不明なために合理的な材料探索につながっていない.本研究ではこの問題を解決するために,これまでにほとんど例のない角度分解光電子分光を用いた方法論を確立する.この結果に基づいて強相関電子系材料の熱電特性を最適化することで,従来の性能を凌駕する材料の創製につなげる.
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研究実績の概要 |
本研究は,強相関電子系が示す異常な熱電特性の起源を特定し,これを制御することで新しい高性能熱電材料を開発することを目的としている.強相関系においては優れた熱電特性を示す物質が存在するものの,その起源が不明であるために合理的な材料探索につながっていない.その主な原因は強相関系におけるゼーベック係数が一般的な材料のように状態密度のエネルギー微分だけでは理解できない点にある.この問題を解決するためには角度分解光電子分光(ARPES)を用いた方法論を確立する必要がある.この方法論を用いて強相関材料に対して状態密度だけでなく伝導電子の緩和時間も含めた総合的な電子構造の情報から熱電特性の支配因子を特定し,その結果に基づいて熱電特性を最適化することで従来の性能を凌駕する材料を創製する. 本年度は,初めに方法論の確立を目的として典型的かつ基本的な材料として単純金属Cuを選択した.ARPES測定のためのCu試料の清浄表面はARPES装置に連結されたスパッタ&アニール装置によって行った.ARPES測定は実験室とシンクロトロン放射光施設の両方で行った.得られた伝導電子の緩和時間はARPESイメージにおけるエネルギー分布曲線と運動量分布曲線のピーク幅から見積もった.これによりCuにおける伝導電子の緩和時間のエネルギー依存性が得られ,それは予想通りフェルミ準位を挟んで大きな変化を示さないことがわかった.このことから本研究において熱電材料の伝導電子の緩和時間のエネルギー依存性を実験的に評価する方法論が確立できたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,本研究で提案する方法論を確立するために,いきなり複雑な電子構造をもつと予想される強相関材料ではなく,単純な電子構造をもちARPES測定に有利な大きな表面が得られる単体Cu金属を試料に選択して研究を進めた.Cuの清浄表面を得るための条件の最適化やARPESイメージから伝導電子の緩和時間のエネルギー依存性に関する情報を抜き出すための方法の検討等,一歩ずつ進めて行くことで,少なくとも単純金属についてはその方法論が確立できたと考えられる.今後これを次世代の熱電材料として有望な系に応用していくことで,従来の性能を凌駕する材料を創製につなげていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,伝導電子の緩和時間に顕著なエネルギー依存性をもち,それが高い熱電性能をもたらしていると考えられる強相関材料の一つである重い電子系の材料開発とARPES測定を行う.具体的には典型的な重い電子系であるYbCu2Si2やYbNi2Ge2の単結晶をフラックス法を用いて作製する.その後,これらの熱電特性とARPESの両方を精密に測定することにより,特徴的な温度と熱電特性の支配因子との関係を明らかにする.伝導電子(準粒子)の緩和時間のエネルギー依存性については,ARPESデータの自己エネルギー解析によって得る.特に希土類以外の元素の違いが熱電特性に与える影響も明らかにする.ARPES測定自体は実験室とシンクロトロン放射光施設の両方で行う.そのためのビームタイムは既に確保できている.
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