研究課題/領域番号 |
23K23061
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補助金の研究課題番号 |
22H01793 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森本 幸裕 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (80607218)
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研究分担者 |
関野 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20226658)
趙 成訓 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50776135)
後藤 知代 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60643682)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 光触媒 / 紫外光 / 可視光 / 抗菌 / 合成 / チタニア / ハイブリッド構造 / 有機物分解 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽光や室内照明の様な広いスペクトル光を利用し抗菌に有効な活性酸素(ROS)を発生する酸化物系ハイブリッド型の光触媒創製および機能発現の機序解明を行う。その姿は端部が開いた異方形態core/shell構造をとり、shell部にチタニアをcore部には可視光応答半導体であるWO3を選びモデル検証する。 広波長利用効率を上げる重要な構造設計指針は、shellチタニアをナノチューブ構造としROS生成量を増大させること、低損失電子移動を実現するcore/shellヘテロ界面を確立することである。研究成果は、抗菌機能の設計だけでなく、水→水素生成やCO2還元用の長寿命光触媒への展開に資する。
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研究実績の概要 |
居住環境にある広波長域に渡るスペクトル光を効率的に利用して動作するチタニア系ハイブリッド光触媒の創製研究をスタートした。研究は、1)材料合成と材料評価、2)光触媒特性の評価、3)抗菌性など機能性の評価、の3つのパートから成る。初段では、コア部に可視光応答するWO3結晶を配置し、シェル部をチタニアnano-tubeで作り機能発揮する構想である。 初年度は、1.と2.のパートに注力し、ナノリボン束状に集結したWO3結晶(Yot構造体)の合成条件と熱処理条件に対しどの様な光触媒性能を示すかを検討した。タングステン酸ナトリウムに酸を加えた原料を比較的低温で水熱合成する方法で、軸サイズ数μm、直径約10nmのロッドが集積したYot構造体を再現性良く合成できた。Yot構造体の結晶構造はhexagonalであり、これを昇温加熱をするとロッドが成長した形のmonoclinicとタングステン酸ナトリウムでなるtriclinic相の混晶へと変化した。この様に得た種々形態のWO3粉体について、紫外・可視光触媒特性を評価するためにRhB分子の分解速度を測り、同時に吸着性も調査した。Yot構造体は中空チューブ構造であるため比較的表面積が広く吸着量は多かったが、光触媒としての動作は緩慢である一方、熱処理後の混晶状態では可視光下で良好に動作することが確認できた。この様にコア部に配置するWO3結晶の条件が定まり、シェル部に配置するチタニア膜の形成条件を濡れ性の観点などから現在、検討中である。 3.のパートでは、表皮ブドウ球菌に対する抗菌性を評価するための環境を整備し、再現性のある菌の培養条件をセットできた。またこのハイブリッド光触媒は、抗菌性だけでなく、環境ガスの分解や水素発生能力を有することを目指すので、それらの評価に供するためにGC-MSを計画よりも早期に導入し立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッド構造を作る上で重要なのが基板となるコア部材料の合成方法の確立である。そして合成したコアの機能・性能が高い方が、後の検討は良好に進む。研究の初段では、構造つくりに注力しコア部WO3/クラッド部TiO2の構造はほぼ出来上がったが、魂となる機能を吹き込んでなかった。コア部WO3の合成条件が振れて表面状態が左右するとクラッド部の良好な付着条件は千変万化し、研究効率は劣化する。これらの考えから、良好に推移していた構造作りを減速させ、コア部WO3の条件出しに注力したので、最良のハイブリッド型結晶の作製は翌年度に持ち越した。当初の計画に対して多少遅れたように感じるが、発揮する機能の観点で質の高い材料を合成できているので大局的には遅れとはなっておらず、概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
可視光照射下で良好に動作する熱処理施行Yot構造体WO3(HT YOT)をコア材として出発し、1)材料合成と材料評価、2)光触媒特性の評価、3)抗菌性など機能性の評価、の各パートを推進する。 1.のパートでは、HT YOT基体にTiO2膜を形成しハイブリッド構造とすることと、コア材の特性を変え広波長域で動作させるための合成法を検討する。前者では、再現性のある合成が出来ることを担保しつつ、適当なコーティング材料を選択すると共に、膜形成条件を調整して厚さ、密着性、密度、表面積など光触媒特性に関与する条件を最適化する。後者では、不純物を含ませることやプラズモン吸収誘起材を仕込むなどして可視光吸収centerを形成することを試行しコア材のcoloringを検討する。またもう少し先では、WO3以外の組成をもつ光半導体結晶を吟味する積りである。 2.では、コアとしたYot構造体WO3単体の、またはTiO2膜を形成しハイブリッド化した構造体の価電子帯上端のポテンシャルを見積もる。さらに、光学的band schemeを描き、光触媒として動作をする理屈と上質なハイブリッド材料形成の条件を見出す。 3.では、室内光スぺクトルの照射下での光触媒特性評価ができるよう整える。これまでは便宜上、太陽光スぺクトルに対する反応性で評価してきたが、利用される環境に合わせて評価をすることも必要である。そして、有機物分解の性能を太陽光スぺクトルと比較して物性を把握した後に、抗菌性試験を行う。環境汚染ガスの分解性能やH2ガスの生成についても検討する予定である。
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