研究課題/領域番号 |
23K23098
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補助金の研究課題番号 |
22H01830 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北田 敦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30636254)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 金属電析 / アルミニウム / グライム / めっき / 電解液 / アルミニウム電析 / グライム類 / 計算化学 / 炭酸プロピレン / 電析 / 電気化学 / 室温電析 / イオン液体 / 配位環境 |
研究開始時の研究の概要 |
電析(電気化学的析出)技術は、金属生産や材料加工、あるいは化学電池にも応用しうる材料工学の要素技術である。実用化にはコスト、安全性、作動温度が重要な指標となるが、室温で金属アルミニウムを生産する新手法を研究する。具体的には電解液を革新し、ホールエルー法にかわるプロセスを開拓すべく検討を行う。グライム類という安全性の高い有機溶媒をベースとして、実験理論の両面から電解液を設計し、高速で安全な室温アルミニウム電析の指針を得る。
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研究実績の概要 |
アルミニウム(Al)生産プロセスの改善に資する電解液研究を過去10年にわたり推進している。沸点が150 °C以上であり室温において安全性の高いオリゴエーテル系溶媒であるグライム類に注目し、AlCl3-ジグライム(G2)電解液を用いる室温での平滑Al電析を行ってきたが、昨年度においてグライム系Alめっき液の粘性や電析速度の改善を目的として、AlCl3-G2系電解液へのヘテロ溶媒の添加を検討した。蒸気圧が高く誘電率も高いヘテロ溶媒として、リチウムイオン電池でも検討されている炭酸プロピレン(PC)を用いた。 しかし、PCを用いた実験(サイクリックボルタンメトリー)で得られた結果はネガティブなものであった。PCを含まないx(PC) = 0の系においては金属Alの析出溶解電流密度が10mA cm-2程度の電流密度で観測されるのに対し、PCをG2に対してx(PC)=0.1の割合で添加しただけで電流密度が約1000分の1に観測されなくなり、約3桁小さい微小な還元電流のみが見られた。 この要因を解明し適切なヘテロ溶媒を選択するには、グライム錯体の構造(八面体型六配位Al3+-Cl-G2錯体2))やその還元機構の詳細な検討が必要であると判断し、本年度は計算化学を適用した。 PC溶媒の還元電位はグライム錯体の電位よりも貴であると計算された。以上のことから、PCの還元分解がAl電析よりも優勢であり、PC分解物がAl電析を阻害しているのではないかと考察した。 DFTおよびMD計算により、グライム系Alめっき液にヘテロ溶媒を添加する場合の効果をスクリーニングすることができた。本手法は他の非水系めっき液にも展開できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
密度汎関数理論(DFT)計算を利用してグライム-アルミニウム錯体の構造特定と還元メカニズムの予測ができた。量子化学計算により得られた最適構造は、実験情報のみからは特定できなかったものであり、新たな知見を得るに至った。また、電子を与えた状態での構造最適化とエネルギー計算についても実施し、還元安定性を議論することができた。 得られた還元メカニズムをもとに、研究開始当初には予定していなかった分子動力学計算によるシミュレーションを実施するに至った。これにより、電解液特性の改善に向けた設計指針、例えばヘテロ溶媒の添加効果などをスクリーニングする指標などを得ることが可能になると期待される。 DFT計算の結果を踏まえて、研究開始当初には予定していなかった分子動力学計算を用いてヘテロ溶媒のスクリーニングを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
密度汎関数理論(DFT)計算により、G2系においてグライム錯体は、1電子還元後にG2が脱離する方がエネルギー的に有利であるとの結果を得たため、各ヘテロ溶媒を添加した系のMDシミュレーションにおいて得られたAl錯体の拡散係数を、電解液特性の指標として利用できる可能性を見出した。一方で評価指標としてヘテロ溶媒の還元電位を利用する場合には、計算の前提条件と実験的(経験的)な還元電位とのずれが大きい可能性が示唆された。今後(最終年度)は、論文発表を見据えて、計算結果の妥当性を検討する。
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