研究課題/領域番号 |
23K23099
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補助金の研究課題番号 |
22H01831 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土谷 博昭 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (50432513)
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研究分担者 |
藤本 愼司 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (70199371)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | アノード酸化 / ナノチューブ / 貴金属 / ナノ粒子 / チタン合金 / 貴金属元素 / 遷移金属元素 / 自己規則化 / 構造解析 / 陽極酸化 / 極微構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では貴金属元素および様々な遷移金属を共添加したTi合金について、陽極酸化後のTi合金基板/TiO2層界面の構造・組成および担持したナノ粒子を、各種観察・分析技術を用いて評価することによって、TiO2ナノチューブ層形成にともない生じる添加元素の濃縮・合金化挙動を検討するとともにナノ粒子形成・担持の機序を明らかにし、それらを制御して様々な合金ナノ粒子を位置選択的に担持したTiO2ナノチューブ層を作製する手法を構築することを目指す。さらに作製したナノチューブ層のエネルギーデバイスへの展開に向けた基礎検討も行う。
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研究実績の概要 |
2種類の貴金属元素を含むTi合金の陽極酸化研究において見出した、フッ化物を含む電解液中での陽極酸化により貴金属合金ナノ粒子が担持したチタニアナノチューブ酸化被膜が形成する現象から「複数の合金元素を添加したTi合金の陽極酸化過程で合金基板/ナノチューブ層界面に添加元素が濃縮するのならば貴金属元素同士に限らず、それらの合金化は可能か」、「合金化現象と合金ナノ粒子形成・担持の機序はチタニアナノチューブ形成機構から理解できるか」、さらに「ナノ粒子形成・担持は陽極酸化電圧によって制御できるか」という、これまでの知見に基づいて立案した研究における課題を解明して、「組成および位置が制御された貴金属元素と遷移金属元素からなる合金ナノ粒子を担持したTiO2ナノチューブ層の創成」と「形成したナノチューブ層のエネルギーデバイスへの展開に向けた基礎検討」を目的とする。各種遷移金属元素と貴金属元素を1種類ずつ添加したTi合金を作製して、その陽極酸化挙動と被膜形態を調査してきた。フッ化アンモニウムおよび水を添加したエチレングリコール中で作製したチタン合金の陽極酸化を行うことにより、ナノチューブの形成とナノ粒子担持が確認できたが、その担持量は2種類の貴金属元素を添加したチタン合金よりも少なかった。ナノ粒子の担持量を増加させる方法として、フッ化物種の変更などを検討した。その結果、ナノ粒子の担持量を増加させることには成功したが、形成したチタニアナノチューブのエッチングが進行しナノグラス状酸化被膜が形成した。また光照射による水素製造にとって重要な酸化チタンの光電流測定を実施し、光電流測定において見られた過渡応答の計算モデル化にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
添加元素の合金化および合金ナノ粒子化現象の機序の解明をするためには、より広範な組成を有するチタン合金を作製し、研究を行っていく必要がある。これまでの検討により規則配列したチタニアナノチューブ層を形成するためには貴金属元素の添加量を低く抑えることが必要であることを明らかにし、低添加量範囲では単相合金を形成できるアーク溶解法によりチタン合金を作製している。すなわち遷移金属元素および貴金属元素を1種類ずつ添加した種々のTi合金をアーク溶解により作製して、フッ化物含有電解液中での陽極酸化挙動、被膜形成・成長挙動ならびにナノ粒子形成・担持挙動を検討している。陽極酸化によりナノ粒子が担持したチタニアナノチューブ被膜を形成することができたが、ナノ粒子の担持量を増加させるためにフッ化物含有量を変えた電解液を用いて陽極酸化を行うことで、ナノ粒子担持量は増加したが、表面近傍のチタニアナノチューブが過度にエッチングされナノグラス形成したことにともない配列の規則性が著しく低下した。現在はフッ化物を含まない電解液での陽極酸化にも取り組み、ナノチューブ形態を維持しつつ、かつナノ粒子を多く担持できる陽極酸化プロセスの開発および陽極酸化条件の探索を検討している。エネルギーデバイスへの展開のひとつとして酸化チタンの光電気化学反応を検討する。その簡便な評価法として行っている光電流測定において観測される過渡応答の実験および計算による検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
アーク溶解により作製した貴金属元素・遷移金属元素共添加チタン合金試料の構造解析を行うとともに、陽極酸化中の電流挙動と形成した酸化被膜の形態・構造ならびにチタン合金/酸化被膜界面における元素分布を解析して、貴金属元素共添加チタン合金上へのナノチューブ形成時に発現した添加元素の合金化およびナノ粒子化の機序を解明する。さらにそれらに及ぼす遷移金属元素の影響を明らかにして、貴金属元素の使用量を低減した省資源型エネルギーデバイス創成へと繋げる。チタン合金の陽極酸化にはフッ化物を含む電解液を用い、添加するフッ化物の種類・濃度および水分量を変えた有機溶媒中でチタン合金の陽極酸化を実施する。陽極酸化中に生じる電流は酸化被膜の形成および成長挙動と密接に関連するため、陽極酸化中の電流を、無抵抗電流計を用いて計測・解析する。また電流と電解液中に溶出したイオン定量分析から酸化被膜形成・成長過程を考察する。陽極酸化後に形成した酸化被膜の形態および構造をFE-SEMおよびTEMを用いて調査するとともに、合金/酸化被膜界面における元素分布を明らかにするため断面試料を作製し、TEM/EDXを用いて界面近傍を調査する。添加元素の濃縮および合金ナノ粒子形成に、陽極酸化によるナノチューブ形成が関与するのかを明らかにするために、フッ化物含有電解液を用いて形成するナノチューブ被膜とフッ化物非含有電解液を用いて形成する平らな被膜を比較する。これらにより合金ナノ粒子担持チタニアナノチューブ被膜形成・成長過程を明らかにする。形成した酸化被膜のエネルギーデバイスへの展開に向けた基礎的検討を、光電流測定および光照射下の水素生成測定から行う。
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