研究課題/領域番号 |
23K23115
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補助金の研究課題番号 |
22H01847 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 厚志 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (30417878)
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研究分担者 |
手嶋 勝弥 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00402131)
巽 広輔 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (60336609)
佐伯 大輔 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (70633832)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 逆浸透膜 / 芳香族ポリアミド重合膜 / 塩素耐性 / 電気化学インピーダンス分光法 / 陽電子消滅寿命測定法 / reverse osmosis membrane / polyamide membrane / impedance spectroscopy / chlorine exposure / membrane degradation / ポリアミド膜 / イオン流束 |
研究開始時の研究の概要 |
EIS(Electrochemical Impedance Spectroscopy)によるPA膜中のイオン伝導を解析する手法を軸に研究を進める。EISは原理的に透水状態でも測定できる優位性を有する。またEISは、解析周波数領域を選択することで、厚さ数10 nmの活性層(PA膜)に焦点を当てたイオン伝導の解析が可能である。EISによりイオン伝導の増加(膜抵抗の減少)として劣化の進行を定量的に追跡し、併せてXPSや陽電子消滅等の分析により、アミド結合の劣化を評価する。さらにマクロなイオン透過流束と突き合わせ、RO膜のイオンの阻止能の劣化機構を解明する。
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研究実績の概要 |
市販の芳香族ポリアミド系の逆浸透膜(以下RO膜)をNaClO水溶液又は/及び水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、その処理前後で透水速度、イオン流束を求め、膜の電気化学インピーダンスペクトル(以下EIS)を測定した。 RO膜は、日東電工社製の海水淡水化用のSWC5を用いた。KCl 10mmol/Lの電解液を0.3~0.7 MPaの範囲で供給し、透水速度、イオン透過流束、脱塩率などを求めた。また、前年の知見を踏まえ、①Pristne膜、②NaClO(200ppm)浸漬、③NaOH(0.1mol/L)浸漬、④NaClO(200ppm) + NaOH (0.1mmol/L)浸漬、⑤NaClO(200ppm) + NaOH (0.1mol/L)浸漬の5種類のサンプルを準備した。浸漬時間はいずれも24時間である。内径約20mmの透水セルを用いて浸透圧相当の圧力を1次側に加え、クロスフロー状態でインピーダンを測定した。EIS測定用の電極は、低周波領域まで測定が可能になるように白金電極に白金黒めっき処理をしたものを用いた。これにより、RO膜の活性層のスペクトルを支持層部分と分離し、解析可能とした。測定スペクトルをMaxwell-Wagnerモデルに基づく等価回路で解析し、活性層部分の膜抵抗(Rm)を求めた。 ①のPristine膜のRmは約285Ωを示した。⑤のサンプルでは、活性層スペクトルはほぼ消失した。透水速度はPristine膜に比較して約1.33倍、またイオンの透過流速は約2倍にとなった。脱塩率はPristine膜が99.61%(@0.7MPa)に対して、⑤では99.01%(@0.7MPa)であった。EIS測定では活性層のスペクトルが消失しても、イオンの阻止能力は残存しているといえる。②、③、④の膜でもそれぞれRmの減少が観測され、EISにより劣化が定量的に把握できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次亜塩素酸処理と水酸化ナトリウム処理の組み合わせにより劣化状態の進行をおよそ把握することができた。特に次亜塩素酸のみの処理で活性層の疎水性が進行し、透水速度が減少することが明らかになった。これに関連し、EISの測定において、2次側からの電解液の注入時に、疎水性の進行が把握できることが判明した。このことは今後の実験条件を詰めていくうえで重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、2年度目の知見を基に、NaClO水溶液のみ、およびNaClO水溶液+NaOH水溶液のシーケンシャル浸漬条件をもとに、RO膜の劣化のプロセスを解明していく。特に、NaClO処理においては、pHに依存して劣化機構に違いが発生するとの文献情報があるので、浸漬時のpHを制御し、活性層スペクトルの変化への影響などを詳細に調査する。併せてXPS、FTIRによる測定、解析を実施し、アミド結合の切断などとの対応関係を調べていく予定である。
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