研究課題/領域番号 |
23K23116
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補助金の研究課題番号 |
22H01848 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平出 翔太郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (60853207)
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研究分担者 |
渡邉 哲 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80402957)
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60200200)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | ソフト多孔性錯体 / ゲート吸着 / 速度論 / 吸着速度解析 |
研究開始時の研究の概要 |
ソフト多孔性錯体は,吸着によって誘起される結晶構造転移(ゲート吸着)を示す。この構造の変形を伴った吸着過程は,直感的には遅いように思われるが,従来吸着剤と遜色ない,ともすれば速い吸着応答性を示すソフト多孔性錯体の存在が確認されている。この迅速吸着特性の起源解明は工学的に重要であるが,細孔内拡散を律速とする現行の吸着工学では,吸着と構造変形が不可分であり,かつ,吸着分子が存在して初めて細孔構造を維持可能なソフト多孔性錯体の吸着速度を議論することは不可能である。本研究は種々のソフト多孔性錯体の吸着緩和過程について解析を行うことで,ゲート吸着の速度論の体系化を目指すものである。
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研究実績の概要 |
ソフト多孔性錯体は,吸着によって誘起される結晶構造転移(ゲート吸着)を示す。この構造の変形を伴った吸着過程は,直感的には遅いように思われるが,従来吸着剤と遜色ない,ともすれば速い吸着応答性を示すソフト多孔性錯体の存在が確認されている。この迅速吸着特性の起源解明は工学的に重要であるが,細孔内拡散を律速とする現行の吸着工学では,吸着と構造変形が不可分であり,かつ,吸着分子が存在して初めて細孔構造を維持可能なソフト多孔性錯体の吸着速度を議論することは不可能である。本研究は種々のソフト多孔性錯体の吸着緩和過程について解析を行うことで,ゲート吸着の速度論の体系化を目指すものである。 本年度は,SPring-8で年4回程度ビームタイムを確保し,累計5種のソフト多孔性錯体についてデータの収集を行った。これらのデータを解析したところ,ゲート吸着に伴う速度式が,MOF種によって0次反応様,1次反応様,もしくは自触媒反応様で記述でき,それがMOFの幾何学的な骨格構造に依存していることを明らかにした。そして本成果および解析手法を論文としてまとめ上げ,Nature Communications誌への掲載を果たした。さらに,一種のMOFについて昨年度までに開発したQCM法による吸着速度測定装置を用いてその特性を評価することに成功し,時分割in situ XRD測定と同等の結果が得られることを確認した。一方でQCM法による測定ではミクロンサイズの粒子からなるMOFだと発振が悪く,正常なデータ測定が難しいという問題点も明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
時分割in situ XRD測定から得られたデータをまとめ上げ,超一流誌であるNature Comuunications誌に掲載を果たすという大きな成果を実施2年目に達成したという点において,本研究課題は計画以上の進展を見せているといえる。また,一種のMOFについてはQCM法による吸着速度測定にも成功した点からも順調に進展しているといって良い。しかしながら,QCM法による測定ではミクロンサイズの粒子からなるMOFだと発振が悪く,正常なデータ測定が難しいという問題点も明らかとなっており,今後より一層の進展を実現するためには,この問題解決が急務と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題における実験は大きく分けて,放射光施設SPring-8にて行う時分割in situ XRD測定と水晶振動子マイクロバランス(QCM)法に基づく吸着速度測定の2つである。これを,種々のSoft MOFに対して実施し,得られたデータを解析することで,ゲート吸着の速度論の体系化を目指す。ここで,QCM法に基づく測定装置の開発,および種々のSoft MOFの合成も本事業における実施事項に含まれる。これまでの検討により,QCM法による測定装置の開発および5種のSoft MOFの合成をすでに終えている。また,時分割in situ XRD測定を通して,ゲート吸着に伴う速度式が,MOF種によって0次反応様,1次反応様,もしくは自触媒反応様で記述でき,それがMOFの幾何学的な骨格構造に依存していることを明らかにしている。さらに,一種のMOFについてQCM法による吸着速度測定に成功しており,時分割in situ XRD測定と同等の結果が得られることを確認している。しかしながら,QCM法による測定ではミクロンサイズの粒子からなるMOFだと発振が悪く,正常なデータ測定が難しい問題も明らかとなっている。そこで,今後は,MOFの粒径制御を念頭に置きながら,QCM法による安定した測定を行うためのプロトコル開発をまず優先的に行い,測定可能なSoft MOFの種類を増やすことを目指す。また,QCM法で測定に成功したSoft MOFについては同一ロッドに対して時分割in situ XRD測定を行い,QCM法から観測される吸着速度とXRD測定から観測される構造転移速度の相関解明に踏み込む。このようにして得られた知見をもとに,より具体的なゲート吸着の速度論の体系化を目指す。
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