研究課題/領域番号 |
23K23138
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補助金の研究課題番号 |
22H01870 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
宍戸 哲也 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (80294536)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | CO2 / 逆水性ガスシフト反応 / CO / 金属リン化物 / メタネーション / 逆水性ガスシフト / メタノール / 水素化 / ナノ粒子担持触媒 / 二酸化炭素(CO2) |
研究開始時の研究の概要 |
基礎的・実用的の両面から重要なCO2変換反応である逆水性ガスシフト反応(1),メタノール合成反応(2)を対象として,金属リン化物を活性種,還元性を有する酸化物あるいは複合酸化物を担体とする触媒系について研究を行う.活性・選択性の制御因子および反応機構の解明を進める過程で,低温域において高効率で反応を進行させる新規高機能触媒が具備すべき物性とそれに基づく触媒の設計指針を学術的に体系化する.
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研究実績の概要 |
本研究では、触媒中のリンの状態と生成物選択性の相関を評価するために,リン添加Rh触媒を調製し,Rhの状態と反応機構解析を行い,反応結果との相関について考察し,CO2水素化の選択性制御因子の解明に取り組んだ. Rh/TiO2触媒は含浸法により調製した.リン添加Rh触媒はRhとPをTiO2に共含浸することで調製した.構造解析の結果, Rh/TiO2上のRhは金属状態にあること,Rh-3P/TiO2上のRhは金属状態とは異なり,ロジウムリン化物(Rh2P)が形成されていることを明らかとした. in situ IRにより,Rh/TiO2, Rh-3P/TiO2によるCO2水素化反応条件下での吸着種としてCOが観察された.次にCO水素化を行ったところ,Rh/TiO2ではCOの水素化が進行し,Rh-3P/TiO2ではCO水素化が全く進行しなかった.Rhの電子状態をXPSによって解析したところ,Rh/TiO2中のRhに比べ,Rh-3P/TiO2中のRhは電子不足であることが分かった.Rhが電子不足であることは,吸着COのIRスペクトルからも支持された.Rh2P中のRhが電子不足であるため,COの反結合性軌道へRhのd電子の逆供与の寄与が低下し,C-O結合の切断が不利になったと考えられる.次にH2活性化能をH2-D2交換反応により評価した。Rh-3P/TiO2はRh/TiO2よりH2活性化能が高いことが分かった.Rh-3P/TiO2によるCO2水素化におけるH2ならびにCO2の反応次数は,それぞれ0.17次,2.6次であったことから,CO2水素化の律速段階にCO2の吸着あるいは活性化段階が含まれることが分かった.すなわち,CO2の吸着あるいはCO2のC-O結合の切断が遅く,CO水素化が不利なことによってRh-3P/TiO2ではCOが選択的に生成したと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
常圧のCO2水素化において高いCH4選択率を示すRh/TiO2触媒にリンを添加すると100%の選択率でCOを生成すること、すなわちCO2水素化の選択性を制御可能なことを見出し,その要因について構造と反応機構の観点から解析を行った.リン添加ロジウム触媒は還元処理によってリン化ロジウム(Rh2P)のナノ粒子が形成されることを確認した.Rh2P上ではCO2水素化の中間体であるCOの水素化が進行せず、また、C-O結合の切断も不利なため高選択的にCOを生成することを明らかにした.また,Rh2Pは金属Rhに比べH2活性化能が高いことを明らかにした.構造解析、反応機構解析については、ほぼ予定通り実施し、金属RhとRhリン化物の触媒機能について有意義な結果を得た。 また、担持Ru触媒について担持ロジウム触媒と同様に検討を行った。その結果、担持Ru触媒についてもリンを添加することで選択性がCO選択的に変化すること、Ruリン化物が形成されることを見出した。ただし、Ruリン化物の形成には、Rhの場合と比較して高温での水素還元処理が必要であった。さらに担持Pd触媒についても予備的な検討を行った。その結果、Pd触媒についてもリンを添加することで選択性が変化すること、Pdリン化物が形成されることを見出した。今後、Ruリン化物触媒、Pdリン化物触媒についてさらに反応機構解析を進める計画である。本年度の研究の結果、上記の様に5d金属元素について、リンを添加することによってCO2水素化の選択性を制御可能であることを示した。これらの結果から、概ね計画どおりに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)今後は、担持Rh触媒について静的な吸着状態の解析に加え,過渡応答法を利用した動的な挙動についても解析し,(a) CO2の直接解離とそれに続く水素化あるいは,(b) CO2の解離に対して吸着水素がアシストする機構のどちらで反応が進行しているのか,リン化Rhと担体の酸素欠損の詳細な役割を解明する.合わせて,XAFS,IR,ガスクロマトグラフ,四重極質量分析計を組み合わせたOperand分析を行い,反応機構と担持されたRhの電子状態・構造との相関を解明する.さらに,量子化学計算により,想定される反応機構に基づきCO2およびH2分子の活性化におけるリン化ロジウムと担体の酸素欠損の役割を解析する.これらを総合し,低温域で逆水性ガスシフト反応(1),メタノール合成反応(2)を高効率で駆動することが可能な触媒が具備すべき性質を提案する. 2)構造を制御した3d, 4d, 5d金属のリン化物の合成とCO2水素化反応への応用 構造を制御した3d, 4d, 5d金属のリン化物の合成し,これを易還元性酸化物に担持した触媒を調製する.5d金属については、予備的な結果を得ている。今後は、3d,4d金属に拡張する。各種金属リン化物の合成については,既報の知見を活用しつつ,条件の最適化を進める.調製した触媒を逆水性ガスシフト反応(1)およびメタノール合成反応(2)に適用し,活性・選択性を評価する.各種分析法により3d, 4d, 5d金属の金属リン化物の構造・モルフォロジー・電子状態を解析するとともに,量子化学計算による電子状態の評価を行う.これらの結果を総合し,各種金属リン化物および易還元性酸化物の物性と活性・選択性の相関を解明し,低温域で逆水性ガスシフト反応(1),メタノール合成反応(2)を高効率で駆動することが可能な触媒の設計指針を提案する.
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