研究課題/領域番号 |
23K23156
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補助金の研究課題番号 |
22H01888 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
森田 剛 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (80332633)
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研究分担者 |
墨 智成 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (40345955)
東 顕二郎 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (40451760)
今村 比呂志 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (40552485)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | 高分子ナノミセル / 治療薬徐放作用 / ペアポテンシャル / 小角散乱 / 不均一凝集 / 相互作用ポテンシャル / メゾスケール凝集 |
研究開始時の研究の概要 |
治療薬を包含した高分子ナノミセルの「相互作用場」を解明する. 特に, 高分子濃度が15wt%以上において, 体温付近にて昇温過程で特徴的にゲル化する挙動が知られており, 研究グループが独自に開発した手法により研究目的の達成を目指す. ゾル-ゲル転移付近での相互作用場の解析は, 2023年度の研究にて達成することができた. この手法を用いて, さらに, 体内血中等の投与環境下を模した各種条件(pH,塩効果,タンパク質共存等)で研究を進める.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は, 優れた「徐放性」などの他に類を見ない高分子ミセルの薬物送達機能のoriginが何か?, 基礎科学的に解明し高機能化への指針を示すことである. ナノ基礎科学の観点から, 高分子ナノコロイドがいかなる相互作用場を持つか?, 中心コアや周囲シェル部における高分子鎖の化学構造が変化すると, どのような違いが生じるのか?, 温度, pH, および, 塩濃度依存性がいかなるものか?, 学術的な知見を得ることが目的である. 我々は, 高分子ミセルの相互作用場に関して, 世界に先駆けて純水中での解明に成功した. 新たに, 温度, pH, および, 塩濃度依存性の知見を蓄積し, 普遍性ある起源の理解を進めている. 本年度においては, 特に, 特徴的に昇温過程で体温付近にてゲル化挙動を示すことが知られているポロキサマー407高分子に関して, 濃度14wt%の水溶液について, ゲル化とゾル化の両挙動が観測される25℃から55℃について, 各種の観測を行なった. 小角散乱測定からは, ミセル間の構造因子を算出し, 本研究の推進により開発した新たなペアポテンシャルの計算方法を適用することで, 斥力のみならず引力相互作用など, 全ての相互作用形態を前提なく取り込んだ解析手法により, ゲル化およびゾル化挙動に関連したペアポテンシャルの解明を達成した. その他, ゲル化やゾル化の転移挙動の議論に重要な粘度測定について, 系に大きな動的影響を与えない状態での観測方法を達成したこと, アルダー転移理論に関して密度の観点から構造化挙動を観測することに成功したこと, 大型放射光施設(高エネルギー加速器研究機構 Photon Factory)での高精度なシグナル取得に関わる装置製作を達成したこと, などが研究実績であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題推進の中で最重要課題であった, 不均一凝集系に適用可能であり, ペアポテンシャルの計算過程で近似や関数フィッティングを用いない実験データに顕に基づいた解析理論の構築が, 今年度の研究実施にて達成されたこと, さらに, 系の物性の理解を深めるための測定として, ゲル化やゾル化の転移挙動の議論に重要な粘度測定について, 系に大きな動的影響を与えない状態での振動式粘度観測方法を温度依存においても達成したこと, エントロピー駆動であることが知られるアルダー転移理論に関して, 密度の観点から構造化挙動を観測することに成功したこと, Photon Factoryでの高精度なシグナル取得に関わる装置製作を, 独自の本体設計や, 本体材質とX線窓材の最適化を行うことで達成できたこと, などが挙げられるため.
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今後の研究の推進方策 |
機能化された高分子ナノミセルは, 治療薬の患部への高選択な送達性, 患部近傍での薬剤の放出, 治療薬投与に際する副作用の軽減などの優れた薬物送達作用を持つことが知られている. 優れた薬物送達作用の中で, 体内血中での穏やかな薬物濃度の上昇, および, 薬理効果が認められる閾値濃度が長時間維持される滞留特性を発現する, 優れた「徐放性キャリア」としての性質がある. また, 単独の高分子鎖が自己集合しミセルを形成する際, 薬物がミセル中に包含され, ナノキャリアとしての機能が発現する. 高い薬理効果を示す薬剤の構造が増々複雑化するのに従い, 服用に際する難溶解性の課題が顕著となっているが, 高分子ミセルへの包含により溶解度が大幅に改善される. 以上の特性はミセル化挙動やゲル化挙動, さらには, ミセル間の凝集状態に大きく関係している. ミセル間がどのような相互作用を持つか, この情報が基本的なメカニズムを理解する上で欠かせない知見である. 我々研究グループが独自に開発した解析手法と解析理論に基づき, 高分子ミセル間の相互作用場を初めて明らかとし, さらに, 薬剤を包含した高分子ミセルの相互作用ポテンシャルも初めて解明した. さらに2023年度の本科研費研究において, ゲル化やゾル化挙動に対応するミセル間相互作用場(ペアポテンシャル)を明らかとすることも達成した. 本研究の目的は, 体内環境下での高分子ミセルの相互作用ペアポテンシャルを解明し, 優れた薬物送達特性の起源を理解し, 高機能化への指針を示すことである. 温度やpH, 各種塩濃度を含めた周辺環境を体内条件に設定し, 薬剤を包含した高分子ミセルの相互作用ポテンシャルの解析を今後の研究として行う推進方策である.
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